第11話

二人の間に流れた沈黙を、女はどうやら気まずく思ったらしく、少し焦ったように違う話題をふってきた。



「あ!でも仕事の方はただのデータ入力程度ですし、終わらない作業ではないですよ!逆に私はこれしかやっていないので!ははは!」



「そっか、でも牡丹は君のことを気に入ってるみたいだし、その内仕事増えそうだよね」



「え、なんですって…?」



驚いて顔を引き攣らせる女に、僕は思わず声を出して笑った。




大体の女は僕の前でこんな間抜けな顔はしないから、純粋に面白かった。



「え、なんですか急に…怖いんですけど…」



一人で笑いだした僕に、女は眉を寄せる。



「ごめんごめん、君の顔が面白くて」



「失礼ですね、それでもホストですか」



じっとりとした女の視線に僕は誤魔化すようにカップに口をつけた。



「ごめんて。牡丹みたいなこと言わないでよ、ふふっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る