第9話

「今日はラスソンじゃないんですか?」



適当に事務室に入ると、地味な女がパソコンの画面からこちらへと顔を向ける。



「横山嬢怒らせちゃった、邪魔しないからちょっとかくまって」



「私は良いですけど、牡丹さんは怒るでしょうね」



「いいよ、牡丹が怒ってるのはいつものことだし」



「そうですか」



女は僕の言葉に短く答えると、すぐに視線をパソコンへと戻した。



僕は女のタイピングのカチャカチャという音を聞きながら、スマホに続々と届く"お姫様達"からのメッセージに返信をしていた。



そして半分ほど終わったタイミングで、女が僕の前にマグカップを寄せてきた。



「あ、ありがとう」


「いえ、恋さん体冷えてるみたいなので、温かいの飲んだ方が良いですよ。ただのティーパックの紅茶ですが」

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