第21話
太陽の暖かな光を受け、すみれ達を振り返った青年の笑顔に促され、すみれはぬいぐるみの後ろに続く形で、壁の外へと出た。
すみれが外へと出ると、そこは待ち合わせをしていた×××ショッピングモールの外だった。
「ここ…」
辺りを見渡すと、ついさっきまで傍を歩いていた青年とぬいぐるみの姿はなく、周囲を行き交うのは買い物客と見られる人々。
設置されていた時計を確認すると、待ち合わせ時間から約40分ほど過ぎたくらいの時刻で、恐らくすみれとシルヴァがカフェで会話をしていた頃ぐらいだろう。
不思議なことに、忘れ物をしたと一度カフェへと戻ってみると、店には確かにすみれのカバンが忘れ物として保管してあったが、シルヴァの姿はなく、他の店員に話を聞くとそもそもそんな派手な見た目の子は居ないと言われてしまった。
すみれは唖然としつつも、荷物を手に帰路についた。
時間的にはまだ昼過ぎをまわったくらいだったが、すみれの体は疲労で既に重かった為、そのままシャトルバスへと乗り込んだ。
そしてバスから降り、電車へと乗り換えたところでふとスマホを確認すると、なんと待ち合わせ相手からの返信がきていた。
『ごめん、今起きた!後日埋め合わせでもいい?』
(なんだ、やっぱり寝坊だったのか)
すみれは口元に薄く微笑みを浮かべながら、メッセージを返し、自宅の最寄り駅で降りた。
駅から自宅までは徒歩で10分程なため、すみれは無意識に鼻歌を歌いながら自宅へと足を進める。
ずっと心に引っかかっていた相手からの返信があり、心がスッキリと解放された気分だった。
通知音に、再びスマホを見ると、相手からは次の予定日と行先の提案をするメッセージが。
『俺、車出すからドライブとかどう?車酔いとかするタイプじゃなければだけど』
相手の提案に、すみれは心が浮き上がるのを感じた。
そして承諾のメッセージを送ろうとしたその時、
「え………?」
すみれの足元が突然、まるで化け物の口のようにグパァと開くと、あっという間にすみれを下からバクりと飲み込んだ。
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