第15話

「ということは、山田さんは"招待客"ではなかったということですか…」



『はい、その通りでございます』



キッパリと頷くシルヴァに、すみれの体にゾクリと寒気が走った。



『しかし御安心ください、たとえお客様でなくとも、ルールと御屋敷での"マナー"を守って頂ければ、本来このような事態にはなっていません』



「あの…一つ良いでしょうか…」



すみれとシルヴァの会話を、しばらく静観していた田村がヨロヨロと手を上げる。



『もちろんでございます』



シルヴァは田村へと向き直ると、胸に当てていた手を後ろに組んで微笑んだ。



「その…旦那様が招待されたという方は一体誰なんですか…?山田さんではないとすると、ここに残った私達の中の誰かな訳ですよね…?」



田村の直球な質問に、すみれは密かに目を見開いた。



この質問はすみれがしたくてもなかなか口に出来ないでいた質問だったからだ。



すみれがシルヴァの回答に注目する中、シルヴァは田村の質問に一瞬動きを止めると、左耳に揺れる石がチカチカと黒く輝いた後に口を開いた。



『大変申し訳ありません、田村様のその質問には、私からお答えすることが出来ません』



「それは…何故ですか?」



口調は控えめながらも、食い下がる田村に、シルヴァも意外そうに琥珀色の瞳を一瞬だけ見開き、興味深げに田村を見つめた。



『"旦那様のご意向"と言えばお分かり頂けるでしょうか。私達も旦那様にお仕えしている身でございますので、どうかご容赦を』



恭しく一礼するシルヴァに、田村はふぅっとため息をついたが、これ以上追求は出来ないと思ったようで、再び口を閉ざしてしまった。



誰も喋らなくなってしまったところで、シルヴァはよく通る声でこう切り出した。



『さて、皆様。ご覧の通り砂時計は進み続けています、次のブレイクタイムまで引き続き扉をお探しください』




シルヴァのその言葉に、すみれはハッとし、蹲る里中の方を見た。



蹲った里中は未だに身を震わせ、立ち上がれそうにもない。



「シルヴァさん、あの!」



『いかがなさいましたか?』



「えっと、他の方の鍵を借りて、代わりに扉を探す…というのはルール違反に当たるでしょうか?」



シルヴァはすみれの傍で蹲る里中に一瞬冷ややかな視線を注ぐと、すぐにすみれへと視線を戻した。



『鍵の持ち主に許可を得た場合でしたら可能です。また、見つけ出した扉の先へと進むことをしなければ問題はありません』



シルヴァの言葉に、すみれは即座にしゃがみこみ、里中に声をかける。



「里中さん、鍵を貸してください」



里中はすみれの声にただガタガタと震えたまま、すみれの手に黄金の鍵を手渡した。

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