第13話
「知っていたとは…どういうことですか…?」
巨大な影が姿を消した後も、里中と木村は恐怖で蹲っており、辛うじてシルヴァと会話が出来ているのは田村とすみれの二人だけだった。
震えた声ですみれを振り返る田村から、すみれはあまりにもいたたまれなくて視線を逸らした。
「結論から申しますと、山田様はルールを破ったと同時に"嘘"をついてしまったのです』
シルヴァが喋り出したことによって、田村の意識は再びシルヴァへと移り、すみれはホッと息をついた。
「ルールを?」
『ええ、このゲームのルールは最初に申し上げました通り、"最初にお渡しした鍵で、正しい扉を見つける"ことでございます。そしてお渡しした鍵に合う扉は"たった一つ"ということもお話いたしました』
「そのルールを破る…となると…、山田さんは"最初に配られた鍵ではない鍵"を使ったということですか?」
『その通りでございます、山田様は山田様の鍵ではない、本来は他者の物である鍵をお使いになり、扉の先へとお進みになりました。その行為自体がルール違反であり、且つこの屋敷内では許されない"嘘"だったのです』
「そんな…もしかしたらどこかで取り違ってしまった事故の可能性だってあるじゃないですか…」
田村の震える声に、シルヴァは首を傾げた。
『取り違える?皆様の鍵を取り違える可能性がある場面など、どこにあったでしょうか?』
「え?」
『田村様、単なる憶測ではなく、現実としてお考えください。まず最初に鍵はこちらから"直接"皆様へと手渡したはずです。私共はその時点でその黄金の鍵と、皆様を紐付けさせて頂いております』
「ひっ紐付け…」
『はい、もちろんそんな事をしなくても、私達は"誰に"、"どの鍵を"渡したのかくらい把握しておりますが、この様な場合は、皆様に対しての説明責任がございますので皆様にも分かりやすいよう、配慮した形になります』
そう言ってシルヴァはパンッと一度強く手を打つと、光溢れる真っ白な空間が一瞬で真っ暗になった。
そしてその闇の中で唯一浮き上がって見えたのは、淡く赤く光る糸のようなものだった。
「これは…」
田村が自分の右手首に括られている糸の先を確かめようと、スラックスのポケットへと手を突っ込むと、そこには手首に括られている赤い糸が同じく括られている黄金の鍵があった。
田村と同様、木村や里中の手首にも同じく糸が括られており、各自が握りしめている鍵へと繋がっていた。
そしてすみれの糸はというと、かなり長く伸びており、しかも空中へとの続いている。
『これでお分かり頂けたでしょうか』
声と共にふんわりとシルヴァが浮き上がり、なんとその手には二つの鍵が握られており、そのうちの一つがすみれへと続く糸が括られていた。
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