六章
第12話
「えぇ…?同じ姿って…なにが…」
里中は動揺しつつも、シルヴァの指さす先を見ようと一歩足を踏み出した時、顔面蒼白の田村が振り返った。
「死んでるんだ…山田さんが…血だらけで…」
「しっ!?」
「里中さん、落ち着いてください!見ちゃダメです!」
困惑しながらも山田の姿を確かめようとヨロヨロと前へ進もうとする里中の腕を掴んだ。
「シルヴァさん!お願いです、山田さんを私達の目の届かない場所に移してください!このままゲームの再開は不可能です!」
すみれの叫びにシルヴァは『かしこまりました』と微笑むと、手を鳴らし、虚空に向かって『片付けなさい』と声を掛けた。
すると次の瞬間、すみれ達の前に巨大な黒い影のようなものが現れ、一度呆然とする参加者を見渡し、暫くキョロキョロと何かを探すような仕草をすると、
自分の後ろにシルヴァが浮いていることに気が付き、スルリとシルヴァの側まで寄ると、大きな図体で甘えたような鳴き声を出した。
その形容し難い響の"雑音"に、参加者は一斉に耳を塞ぐ。
『お客様の前でいけませんよ、さぁ、お仕事です』
シルヴァは擦り寄ってくる巨大な影をそっと撫でると、足元に転がる山田を指さした。
するとのっぺらぼうの影は突然大きく裂けた口をグパァと開き、ギザギザと不揃いな牙を見せて"笑った"。
少なからずすみれには、その様に見えた。
黒い影は無造作に山田の体を持ち上げ、まるで組み立て人形の体を分解するかのようにプチプチと手足をもいで、その大きな口に運んだ。
「○✕△□♡☆※@#&¥$*」
黒い影はパキパキねちゃねちゃと音を立てながら雑音を発しつつ、ウキウキと体を揺らした。
「な、なに…してる、の……」
ガタガタと震える里中の目には、黒い巨大な影と、無惨に体を千切られて血を滴らせている山田の姿がハッキリと映っていた。
「いや…いや…いやぁあああ!!」
余りにも凄惨な現実を目の当たりにした里中は、その場で頭を抱えて叫んだ。
すると巨大な影は里中の声に反応し、頭を抱えて蹲る里中を見下ろすと、その凶悪な口をニィッと歪め、楽しそうに体を揺らした。
「なっ…なんでこんなことに…」
恐怖に顔を青白くした田村が、呆然と巨大な影を見上げながら呟いた。
「もしかして俺達もこのままコイツに食われちまうのかよ!?うあぁああ!!」
木村の叫び声に、里中もつられて叫び出す。
ヒステリックに陥った里中と木村はお互いの叫び声と、巨大な影の出す咀嚼音と雑音しか聞こえなくなり、いくらすみれが寄り添って声を掛けても全く効果はなかった。
「シルヴァさん教えてください」
『はい、なんなりと』
巨大な影が山田の処理を終え、やっと参加者の前から姿を消したところですみれは改めてシルヴァを見上げた。
「山田さんは何故、ああなってしまったんですか」
すみれの真っ直ぐな瞳に、シルヴァは微かにその口の中にある鋭い牙をチラつかせながらも、変わらぬ穏やかな微笑みで返しす。
『すみれ様は気付いて居られたのではないですか?』
(!?)
シルヴァのその言葉に、すみれはまるで自分の心臓を掴まれたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます