四章
第7話
そうして里中とすみれが扉を探し始めてしばらく経ったが、他の参加者も一向に扉を見つけることが出来ないでいた。
「くっそ!おい、そこの執事!この中に本当にこの鍵で開く扉があるんだろうな!?」
苛立ちで更に大声を出す木村に、反対側で鍵を差し込んでいた山田がチッと舌打ちをしたのを、田村は敏感に感じ取っていた。
『ええ、勿論です。この中に必ず存在します』
「とかなんとか言って、本当は俺達をここへ閉じ込めようとしてんじゃねーのか!?」
尚も食い下がる木村に、シルヴァは顎に手を当てて考えるポーズをとった。
『ふむふむ…私も外で色々勉強してきたつもりではあったのですが…。この条件では難し過ぎるということでしょうか?』
シルヴァは琥珀色の瞳をパチクリとさせ、悪態をつく木村を見た。
「そりゃあ難しいに決まってんだろ!探せっつったって、こんだけ数があったらいくら時間があっても探しきれねーよ!」
『なるほど、問題は扉の数でしたか』
木村の言葉にシルヴァが納得したように頷くと、シルヴァの左耳に揺れる黒い石がチカチカと光った。
『……かしこまりました。それでは皆様、一度扉から離れてください。木村様の提案により、条件を一部変更させて頂きます』
シルヴァは言いながら全員が扉から離れたのを目で確認すると、白い手袋をはめた手を二度打つと、左右にびっしりと配置された扉が一部無造作に消えていった。
「扉が…」
『お待たせいたしました、見ての通り、こちらで扉の数を絞らせて頂きました。木村様、こちらでいかがでしょうか』
改めて木村へと向き直り、胸に手を当てて恭しく一礼した。
「お、おう。まあ、良いんじゃねぇの?」
シルヴァの意外な対応に木村も少し驚きつつ頷くと、シルヴァは『ありがとうございます』とニッコリと微笑んだ。
「これなら里中さんの扉も探しやすくなりましたね!」
「うん、良かったぁ~」
そうしてほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、再び鍵を差し込む作業に戻った参加者の口からすぐに落胆のため息が零れ始めた。
単調な作業とはいえ、長時間に渡る作業と精神的な疲労からとうとう里中が膝をついた。
「もうダメ…疲れた…」
「時間制限は無いですし、一度休憩にしましょう」
「そうだね。ところで、私達ここに来てからどれくらい経ったのかな…?」
里中とすみれの会話は、何も無い広い空間にこだまする。
「あの執事にでも聞いてみたどうですか」
そう声を掛けてきたのは顔をしかめた山田だった。
山田は苛立ちを隠そうともせず、片足をトントンと小刻みに動かし、目だけで執事をさす。
(貧乏ゆすり凄いな…元々神経質そうな人だもんな…)
わざわざこちらへ来てすみれ達に声を掛たのは、恐らく山田自身は直接シルヴァとの会話を避けたいからだろう。
すみれは苛立つ山田を意識的に視界に入れないよう、少し前に出て、シルヴァを見上げた。
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