第6話
(開始のベルって言ってたけどアレ、完全にシンバルだよね……?)
すみれはカラス頭の執事が持つシンバルと、ニコニコと微笑むシルヴァを見上げた。
しかしそうしている間にも他の参加者は早々に手近な扉へと駆け出し、次々と手に持った鍵を扉の鍵穴に差し込んでいく。
(そうだ私も探さなくちゃ)
参加者達が鍵の合わない扉に苦言を漏らす中、なんとすみれは一発目で扉を開いてしまった。
「あ、れ……?」
(開いちゃった?)
ガチャンという内側でロックが外れる音が響き、その他4人の視線が一気にすみれへと集まる。
「え…マジかよ…」
「ほんとに?早過ぎない?」
驚きの声を漏らしたのは木村と里中で、ほかの2人は驚きよりも焦りで顔を青くしていた。
『おめでとうございます、すみれ様。貴方は確かに扉を見つけました。このままその扉の向こう側へと進み、ゲームからいち早く抜けることも可能ですが、如何なさいますか?』
シルヴァが白い手袋をはめた手でパチパチと手を打つと、同じ様にカラス頭の執事達も続いて拍手をすみれに送る。
すみれによって開け放たれた扉の向こう側は漆黒の闇。
何処に繋がっているのかも、何が潜んでいるのかも分からない。
「………この扉から元の場所へと戻れるんですよね?」
念を押すようなすみれの言葉に、シルヴァがニッコリと微笑む。
『なにかご心配な点でも?』
「あ…いえ…、その…あまりにも暗くて…とても安全に通れるのかと…」
『なるほど、そうでしたか。しかしその様なご心配は全くもって不要でございます。それぞれの鍵で開かれた正しい扉であれば、安全性においてもなんら問題なくお通り頂けます』
シルヴァの柔らかく響く声に、すみれは小さく頷いた。
『制限時間などはございません、扉の先へとお進みになるタイミングはすみれ様の自由でございます』
シルヴァの言葉をきっかけにすみれの元へと駆け寄って来たのは里中だった。
里中は縋るような瞳ですみれを見つめ、ギュッとすみれの手を握った。
「すみれさん、お願い!私が扉を見つけるまで居なくならないで!私…こんな所で最後の一人になったら……うぅ…私……」
取り残される不安に震える里中を見て、すみれは酷く気の毒に思ってしまった。
里中の申し出に、すみれは「分かりました、私も里中さんの扉を探します」と言って頷いた。
と言っても鍵は一人一つ。
一緒に探すと言っても、すみれは里中の傍に居ることしか出来ない。
しかし里中にとってはそれだけで十分だった。
"自分は一人ではない"という事実が何よりも里中の心の支えとなっていた。
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