三章
第5話
『それではこれより、早速皆様にそれぞれ鍵をお渡し致します。皆様は手渡されたその鍵で、たった一つの扉を探し当ててください』
そう言ってシルヴァがパチンと指を鳴らすと、突如として虚空から執事服を纏ったカラスの頭をした数人の執事が現れ、参加者にそれぞれ黄金の鍵を手渡した。
手渡された鍵は一見、全員全く同じ鍵を渡されたように見える。
「これが…」
『今お渡しいたしました鍵こそが、皆様を元の場所へと返してくれる唯一のアイテムになります。その鍵が壊れることはございませんが、万が一紛失したり、奪われたりしたとしても、その場合は皆様の管理不足ということで、再度お渡しすることは致しません』
「え、それじゃあ…この鍵を無くしたら…」
『もちろん、皆様はこのお屋敷から出ることは叶わなくなります。後に旦那様による面接を受けた後、ここに居る私共と同じ様に旦那様にお仕えする使用人となって頂きます。……まぁ…それも面接をクリアすればの話ですが……』
シルヴァが最後に小声で呟き、不敵な笑みを浮かべたのを目撃したのは、5人の中ですみれただ一人だった。
すみれはシルヴァのその顔を見てハッと思い出した。
「あの!旦那様のご機嫌を損ねてしまった場合、私達はどうなってしまうのでしょうか?また、旦那様は私達のどんな行動でお怒りになるのか教えて頂きたいのですが!」
すみれの細い声にシルヴァは満足気に微笑むと、とても上品な動作で自身の人差し指を唇に押し当てた。
『そうでした、皆様に一番重要なことをお話するのを忘れていました、申し訳ありません』
悪びれもなく微笑むシルヴァに、参加者が一斉にどよめく。
『旦那様は"嘘"を何よりもお嫌いでございます。ですので参加者の皆様にはくれぐれもこのお屋敷にいる間は、いかなる"嘘"も慎み頂ければと思います。また、旦那様のご機嫌を損ねられた方の処遇に関しましては、その都度旦那様がご判断されることですので、私からこの場でご説明することは出来ません。さて、他にご質問など無いようでしたら早速ゲームを始めさせて頂こうと思いますが、他の参加者様は…よろしいでしょうか?」
シルヴァの琥珀色の瞳がすみれを含めた参加者一人一人の顔を順番に確かめるように見つめる。
そして誰も口を開かない様子を見ると、シルヴァは最後にニッコリと微笑んだ。
『それでは開始のベルを鳴らしますので、ベルがなり終わり次第、皆様は自由に扉をお探しください。もちろん、見つけられた方からその扉からお帰り頂いて結構です。それでは…どうぞ』
シルヴァの掛け声と共に、カラス頭の執事の一人が大きなシンバルを鳴らした。
突然鳴り響いたシンバルの音に、参加者は反射的に耳を塞ぎ、里中は小さく悲鳴を上げた。
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