第2話 ご都合

俺は2人涙を拭き、手を繋いでホテルに戻った。

流石に怒られそうだが、このことを話せば許されるだろう。流石にそう思っている。

俺が信頼する友達だ。



「ちょっと遅いよ!海斗!」「何時間待ったと思ってるの!」

「おいなんだよ!その女の子は?」

「俺の目的の一つだよ。俺の初恋。ユウカに告白してきたんだ」

思い切って言ってしまった方がいいと思った。

ユウカにも許可は得ている。

「まじか、めっちゃロマンティックやん。」

「そんなことなら仕方ないね!よろしく!ユウカちゃん!」

「よろしく!」

ユウカは俺の後ろに隠れて様子を伺っている様子だった。

他の人と話したことがなさそうなユウカはもしかしたら人見知りなのかもしれない。

「よ、、、よろしくお願いします。」

「まって、その子「唯白裕香」ちゃん?」

「え、そうなの?」「うん。フルネームは「唯白裕香」」

「いやぁ!!」

琴美は急に耳を塞ぎ叫んだ。

荷物をゴソゴソとしてリュックから何かを取り出そうとしている。

琴美が取り出したのは拳銃だった。

「死んでぇぇぇぇ!!」

琴美は容赦なんてしなかった。まるで人が変わった様に。

俺は撃たれた。左側の胸を打たれ。思いっきり心臓直撃だ。

俺はもう直ぐ死ぬだろう。

「海斗ぉぉぉぉぉ!!!!いやぁぁぁぁぁ!!!!!」

裕香は自分でこめかみを打った。自ら絶命するために。

俺と裕香は死んだ。同時に。何か神が味方してくれれば、同じ世界に生まれ変わらせて欲しいもんだ。

「私はやってない!!私は!!」

琴美は頭を抱えて叫び、自ら命を絶った。



「あーあ。予想通りにはいかないもんだな。」

裕次郎が残念そうに俺たちの死体を見下す。

「そうね、期待はずれだわ。残念。」


「さようなら。海斗、琴美。良い俺たちの駒だったよ」



目が覚めるとそこは東京都の都心、だが俺は周りにいる人のことが全員わかった。

会ったこともないのに名前も性格もわかる。

まるで長い付き合いかの様に。

「海斗さん!!」

「えっ?!」 

ぼーっとしてた俺の肩を叩きこの世界に気持ちを入れ替えた。

魂が体に戻ってきたかのように。

「早く行きますよ!!」

「えっっ!?!どこにだよ!」

「はぁ?!あんた記憶喪失でもしたんか!?いくぞ!俺たちのアジトに!」

アジトという言葉を聞いた瞬間、頭には存在しないはずの記憶が流れ込んできた。

おかしいぞ、こんな記憶を経験した記憶はないのに記憶がある。

並べると意味のわからない日本語の並び方だ。

「なぁ、俺、なんで名前だっけ?」

「あんたの名前は、「斎藤雄二」だよ!どうした?!」

乗っていた車が爆発した。

目の前が黒く染まった。


目が覚めると。

涙を流してユウカを抱きしめながら砂浜に倒れ込んでいた。

「海斗大丈夫?急に抱きしめられたと思ったら倒れちゃってさ、でも幸せだったよ。好きな人に抱きしめられながら寝るなんて」


「ユウカ、、俺の名前はなんだ?」

「え?どうしちゃったのw「早川海斗」だよ!」


苗字が違う。


さっきの謎の世界「斎藤」も、今の夢の様な世界「早川」も、

俺の本当の名前はなんなんだ?

「俺の名前は、、、」


だめだよ。


「は?」

心臓が握りしめられる様に痛くなる。

足と手が動かなく顔が青くなる。電気が走ったかの様になり目が血で滲んでいく。

「海斗!海斗!ねぇ!!」



だめだよ、

本当のことを彼女に伝えるなんて、

それが君の幸せなんだ。



彼女の幸せを奪うのなら、

君はこの世にいてはいけない。



朧月夜の空を見よ

それ神が神を導く

本当の道だ。



俺は、命を引き取った

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朧げな夕焼 白雪れもん @tokiwa7799yanwenri

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