朧げな夕焼
白雪れもん
第1話 沖縄の恋
俺の名前は「朧龍之介」あだ名はおぼちゃん。
高校2年生で、これから友達と4人で遊びに行くところだ。
「さーて!みんな!乗るよー!」
目の前にあるリーダーシップ抜群のメガネをかけた男は「白雪裕次郎」この四人組の中でいちばんの陽キャだ。
「急げ!!あはは!」
あからさまに楽しんでいるこの子は「笹島有紗」クラスの中でもかなり人気のある美少女で隠れ陽キャと呼ばれている。
「足元気をつけなよ!危ないよ!」
みんなのことを心配しているのは「井形琴美」お母さん的なポジションの丸メガネの女の子だ
「おーい海斗!早く来いよ!」
みんなが手を振って俺を呼んでいる。
「何時だと思ってんだ。動けねぇよ」
今の時刻は朝の6時。夏休みということもありみんなで2泊3日の沖縄旅行に行こうとしているところだ。
空港に向かうまでのモノレール。6時だとはいえ人は少なく大きな声を出してもあまり迷惑にならない。
「行こうよ!ほら!」
手を引っ張って無理やり連れ込んでくるのは琴美。やはりお母さん的ポジションだ。
「ふぅー!ラブラブ!」
有紗と裕次郎が俺たちのことを煽ってくる。
「その煽りは中学生までだろ、そろそろ腹立たなくなってきたぞ」
「意味わかんないところで慣れてんじゃないの、ほら!行くよ!」
ツッコミを入れた俺にさらにツッコミを入れる琴美は顔は眠そうだが声が明らかに楽しみにしている声だ。
彼女の声を聞くと、こっちも楽しくなってくる。
俺は少し口角を上げた。
そういえば俺のことを紹介していなかったな。
首の根元まで後ろの髪が伸びて顔を覆って耳が見えなくなるような髪型をしている。
丸メガネをかけて明らかに好かれる見た目ではないがこの様にリア充生活を満喫中だ。
頭はいいわけじゃないが、悪くもない。中の上位の学歴と言えばいいだろう。
「空港につき何事もなく沖縄に行こう!」
フラグにしか聞こえなくて怖すぎる。まぁ国内線だし、ハイジャックとかはありえないだろう。
「本当に何事もなくてよかったわ」
なんとか沖縄についた俺たちはとりあえずホテルに向かい荷物をまとめて観光地に向かうために地図を広げていた。
「ここ行こうよ!」「ここもいいね!」「ここ海じゃねぇかよ!」
あはは!!
笑い声が飛び交う。自然と俺は微笑む。俺はこいつらのことが好きだ。でも、俺が沖縄に来た理由は他にある。
「俺は少し寄りたいところがあるんだ。できれば1人で。」
「そうか?気になるけど全然大丈夫だよ!」「じゃあ終わったら連絡してもらう感じでよろ!場所伝えるわ!」
「サンキュー。じゃな」
俺は海に向かう。俺の目的は海岸にある砂浜にポツンとあるブランコだ。
そこには俺が小学校に来たことがあり、白く緑色の瞳をした美しい女の子が1人座っているのだ
その女の子はこちらに気づくと微笑んで歩み寄ってくれるのだ。
俺があったのは小学生だが、今は高校生だ。いるわけない。
でもいる。何故か確信できるのだ。あの子は必ずいる。あの、
「朧海岸のブランコに。」
俺は歩いて海に近づいていく。
見える。白い長い美しい髪が。わかる。ふわふわしたこっちも幸せになる雰囲気に。
「あ、やっと来たね。待ったよ。海斗くん」
俺は亡霊を見たみたいだった
俺が小学生に見た子が成長して目の前に現れた。
まるで女神の様な、天使の様な真っ白な服。沖縄に住んでるとは思えない真っ白な肌。
撫でさせて欲しくなる艶々とした綺麗な髪。
この世にいるものとは思えない天使が目の前にいる。
「天使だ、、、」
「失礼な!生きてるよ!」
気づいたら彼女は俺の目の前にいて、こちらに歩み寄ってきた。今にも触れそうな、今にも抱きつきそうな。こちらから抱きつきたくなる様な。
俺は膝から崩れ落ちた。
やっと会えたのだ。小学生に会って、ずっと好きだった。
初恋だった。
「名前を教えてくれ、それが俺の願いなんだ。」
彼女はニヤリと笑い頬を赤く染めた。
「私の名前は「ユウカ」ユウカよ。」
「ユウカ、俺は」
ユウカは俺の唇に人差し指を当てた。
「言いたいことは、遊んでからにしない?したいことが沢山あるの!」
俺は微笑みかけた。いいだろうと、こっちから願いたいくらいだと。
「いいよ。何して遊ぶかい?」
彼女との時間は夢の様だった。たった3時間。あいつらのことは忘れて。俺が愛した人に人生を捧げていた。
もしこの恋が、叶わないものだとしても。
「言いたいことはそっちからどうぞ!こっちも言いたいことが一つだけあるよ。」
心臓が飛び出そうだった。この夢の時間も無くなった。無くなるんだ。だって、絶対この恋は実らないのだから
確信はできない、これだけは何故か確信が持てないのだ。
「俺は、、、ユウカ、君のことが、小学生の頃から」
突然ユウカが割り込んできた。いいところなのにって思ったのも束の間、これはいいところなんて非じゃない幸せの言葉だった。
「好きです。海斗くんのことが好きです。」
俺は再び膝から崩れ落ちた。
俺は近くにより抱きしめそうになった。
いや、ダメだ、先に気持ちを伝えなければ
そんなことを思っている暇もなくユウカは俺を抱きしめた。
身長差により膝立ちの俺を抱きしめると頭を抱えられる感じになっていた。
俺は気づかない間に涙を流していた。
悲しみじゃない、嬉し涙だ。
「俺も、、好きだよ!!ユウカ!!」
泣きながらしわくちゃな顔になんとか力を入れて精一杯力を入れて気持ちを伝えた。
「ありがとう!!私も大好き!」
ユウカも涙を流していた。
「これから一緒にいてくれる?」「もちろんだよ!」
そうすると俺の背中に当てていたユウカの手が光り輝いた。
「契約成立ね!愛してるよ!」
俺は契約成立より愛してるよに気を取られ唇を近づけた。
ユウカは俺の顔を引き寄せてキスをした。
人生初のキスだった。
目を閉じてキスをした。
そして目を開けると。
彼女の天使の微笑みと共に。夕焼けが涙で滲んで綺麗に光っていた。
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