第18話 迫り来る足音
▶時期:天徳四年(960)
賀茂忠行が亡くなってから程なくして、藤原師輔もまた疫病によって命を落とした。村上天皇の寵愛を受けている中宮藤原安子の父の死は朝廷に大きな衝撃を与えた。陰陽寮では天変が鎮まったことを受けて、数々の天象は貴人の喪事を示していたのだと噂された。
都に降り立った炳霊帝君は白雪の居処を捜そうとするが、手がかりが少なく辿り着くことができない。夜更けの暗闇の中、都を彷徨っている炳霊の頭から生えている神龍の角を目撃した貴族の男は彼を鬼だと思い込み、慌ててその場から逃げ去った。
晴明と保憲はいつものように司天台で天文観測を行った後、帰路に着いた。二人の姿を目にした炳霊は彼らが忠行の家族だと気付き、尾行する。やがて晴明たちが帰宅し、炳霊はとうとう白雪の居処を掴んだ。
炳霊の行動は世間の人々を混乱させ、朝廷も鬼が現れたとの報せを受けて菅原道真や平将門の怨霊の報復を恐れる。鬼の噂は陰陽寮にも届いたが、天文観測を中止することはできず、晴明は鬼に遭遇しないよう注意を払わなければならなかった。
晴明と保憲が天文観測で不在の時、梨花の目の前に炳霊が現れた。梨花は、夢の中で白雪の兄として現れた神仙だと気付いて動揺する。炳霊は梨花に白雪であった時の記憶がないと知り、彼女が人間界に流れ着いたときに身につけていたものは白雪のものであったことを説明する。彼の話を聞いて、梨花はようやく自分が何者だったのか悟った。炳霊は梨花に神仙の力を取り戻すことを約束するが、彼女は元の立場に戻ったら晴明に別れを告げなければならないと知り拒絶する。それから梨花は物憂げな様子でいることが多くなり、晴明は不安を覚える。
一方、冥界では泰山府君の許に一人の尼が地獄を彷徨っているとの報せが届く。尼は将門の娘で、兵乱で父を失った後出家して如蔵尼と名乗り寂しく暮らしていたが、息絶えて地獄にたどり着いたのであった。泰山府君は如蔵尼から地獄で苦しんでいる父を救ってほしいと懇願されるが、将門の怨念は冥界に大きな災いをもたらしたので罰を逃れることはできないと告げ、如蔵尼は悲嘆に暮れる。如蔵尼を哀れんだ泰山府君は一心不乱に修行すれば父も救われると励まし、彼女の魂を現世に送り出した。
現世に戻った如蔵尼の許に、弟である平良門が訪ねてきた。彼は近隣の住民から姉が息絶えたと知らされ、急いで来たのであった。良門は彼女が地獄から生還したと知って驚き、経緯を尋ねる。
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