第19話 虹の羽衣
▶時期:天徳四年(960)
如蔵尼は地獄で目にした凄惨な光景と泰山府君の神託を良門に話し、出家を促す。だが、良門は今まで自分の出生の秘密を隠されていたことに憤慨し、父の仇を討つと心に誓い都に向かって出発した。
一方、炳霊帝君は泰山府君に白雪の生存を報告し、彼女の仙力を取り戻す方法を尋ねる。泰山府君が言うには、天界にある霓裳羽衣を着せれば神仙に戻れるが、人間界で過ごした一切の記憶を失ってしまう。炳霊は人間として第二の生を送っていた梨花の心情を慮り、彼女が天寿を全うする直前に羽衣を着せようと考えていた。しかし、人間の生命の脆さをよく理解していた泰山府君は悠長に構えている炳霊を叱責し、一刻も早く羽衣を得て白雪を取り戻すよう命じる。
梨花の目の前に炳霊が姿を現すことはなくなったが、彼女はいつ自分が自分でなくなってしまうのか不安を感じていた。梨花は晴明に正体を明かそうか思い悩んだが、二人の関係が白雪の存在に上書きされることを嫌い、真実を明かさないと決めた。梨花は晴明に自分が姿を消したら冥界を訪れるよう手紙を書こうとしたが、彼に大きな誤解を与えてしまいそうだと感じて別の方法を考える。
ある日、晴明は梨花から耳飾りの片方を渡され、肌身離さず持ち歩くように頼まれる。その耳飾りは、晴明が初めて彼女に出逢ったときに着けていたものであった。梨花は、たとえ自分の意識が白雪のものになったとしても、耳飾りが片方しかないことに気付けば自ずと探し求めるだろうと考えていた。また、彼女が晴明の目の前から姿を消した時に、彼が行方を捜す手がかりにもなった。
梨花は赤山禅院に泰山府君が祀られていることを思い出し、久しぶりに参詣した。彼女は、かつて陰陽道の神の娘であった自分が晴明と出逢ったことに運命を感じながらも、懸命に生きてきた自分の人生は白雪にとって試練の一つでしかないことを痛感する。梨花が帰ろうとしたその時、炳霊が彼女の目の前に現れた。炳霊は動揺する梨花に構わず、霓裳羽衣を彼女の身体に吸い込ませる。梨花は自分の身に何が起こったのか悟り、意識が遠のいていくなか晴明と子供達の幸せを願った。
晴明が司天台で天文観測をしていると、一つの小さな星が落ちていくのが見えた。彼は誰かに喪事が起こる兆しだろうと考えたが、その天象が妻を失ったことを示しているとは思いもしなかった。
一方、良門はとうとう都に到着し、父を滅ぼした朝廷に復讐を果たす好機を伺っていた。
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