第14話 隠れ陰陽師
▶時期:天暦四年(950)― 天暦五年(951)
晴明たちは害虫駆除の祭祀を修するために播磨国へ赴き、この国で評判名高い智徳法師に迎え入れられた。智徳に案内されている途中で、晴明は河原で紙冠を被った法師が祓えをしている光景を目にして驚く。陰陽寮出身の官人陰陽師を雇えない身分の人々のために陰陽師としての役割を担う法師がいて、そのような法師は隠れ陰陽師と呼ばれていた。智徳は独自に陰陽道を学び、播磨国の法師たちを隠れ陰陽師として養成していたのであった。
智徳は陰陽道だけではなく、呪詛のやり方も教えていた。陰陽寮では私的に呪詛を行うことが禁じられているため、私的に法師陰陽師を雇って呪詛を行わせる貴族もいた。保憲は人を害して報酬を得る法師陰陽師を非難するが、智徳は生きていくためには仕方ないのだと反論する。
祭祀を終えて、晴明たちは智徳の屋敷に泊めてもらった。皆が寝静まった後で、晴明は密かに智徳の許を訪れた。晴明は智徳が陰陽寮の教科書にない様々な呪術を知っていると聞いて、己の身に流れる狐の血を生かせないか思案を巡らせていた。智徳もまた、晴明がまもなく三十歳を迎えようとしているにもかかわらず、未だ陰陽寮の生徒に過ぎない現状に焦りを感じていることを察していた。晴明は智徳から呪術だけではなく呪詛も教わり、普通の官人陰陽師にはできない術を会得した。彼は、私利私欲のためではなく朝廷を守るために学んだのだと自分に言い聞かせた。
智徳は晴明の非凡な才能を目にして、彼の実力を確かめようとする。晴明は智徳に仕えている童子の道満と術比べをして、彼を負かした。その過程で智徳は晴明が普通の人間ではないと察する。負けず嫌いな道満はいつか必ず晴明に勝つと宣言したが、晴明は童子の約束事は当てにならないと本気にしなかった。
都に帰ってから、晴明は人知れず呪術の修練に励んでいた。梨花が晴明の様子を確かめようとしたところ、彼の霊気に包まれて気分が悪くなり、その場に倒れ込んでしまう。意識がはっきりしない中、梨花は龍宮で仙女が童子に鎮宅霊符の使い方について説明している夢を見た。その霊符は、賀茂の家にあるものとまったく同じであった。晴明は梨花が不思議な夢を見ていることを知り、彼女を不安な気持ちにさせないと約束する。
再び造暦の季節が巡ってきたが、前年に保憲が暦の論争を収めていたおかげで争いが起こることはなかった。朝廷は保憲のこれまでの功績を讃えて位階を授けることにした。
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