第7話 雨乞いの儀式
▶時期:天慶六年(943)
賀茂保憲の主人になる藤原師尹は、藤原忠平の息子たちのなかでも特に冷たく厳しい性格だと知られていた。晴明と保憲は気を引き締めて彼に仕えなければならなかった。保憲は師尹から料紙を渡され、翌年の暦本を造るよう命じられた。暦の吉凶を示す日は数え切れないほど多く、晴明はとても覚えきれないと感じる。だが、保憲はこれらの吉凶日をすべて暗記していた。
干ばつの季節になり、保憲は雨を祈るために五龍祭を奉仕することになった。晴明は、いつか陰陽師になったときのために保憲の祈祷を真似てみた。すると、空が晴れているにもかかわらず小雨が降ってきた。雨はすぐに止んでしまったので、晴明にはそれがただの偶然なのか、一瞬でも天に祈りが届いたのかわからなかった。この祈祷は他の陰陽師も行い、僧侶たちも加持祈祷を行ったので、程なくして恵みの雨が降った。
保憲は師尹に完成した暦を渡した。誤りがあったときに訂正するため、晴明と保憲は師尹が暦を確認している間ずっとその場に留まっていた。ほんの少しの誤りもなかったので、安堵した。保憲は控えめな性格で能力をひけらかすようなことはしなかったが、彼の実力は自ずと世間に知られることとなった。
ある日、保憲は働きすぎて体調を崩してしまう。梨花の強い願いで、晴明は彼女と一緒に保憲の病を治すために奔走した。その過程で梨花は医学に興味を持ち、密かに学び始めた。彼女には権力者の愛人になって一族を繁栄させるよりも、保憲の健康を保って仕事を支える方が性に合っていた。晴明は自身の健康について考えた結果、菊の花が最も身体に適しているという結論にたどり着いた。そこで、家中の菊を集めて管理することにした。
偉大な師匠がどれほど名声を得ても、晴明の生活は以前と変わらなかった。普通の弟子であればこの状況に不満を抱いてもおかしくなかったが、陰陽寮の生徒たちと比べてもそれほど勉強ができないことを自覚していた彼は、陰陽師になる素質がなかったのではないかと思い悩みながらも、何とかして保憲に実力を認められようと考えていた。
師尹が立春の方違のために賀茂家に泊まりに来た。賀茂忠行は藤原氏との結びつきを強めるために梨花を利用する計画を用意していた。梨花は本来の願いではない生き方を強いられることになり、晴明への想いは断たなければならないのだろうと感じた。そして、晴明は偶然にも師尹が梨花の部屋に入っていくのを目撃する。
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