第13話 終局の光

 光と闇が迷宮の中で激しくぶつかり合い、アランとシャスカーの戦いは頂点に達していた。眩い光が遺跡の壁を照らし、影がうごめく中で、アランは全身の力を振り絞り、シャスカーの放つ闇に立ち向かっていた。


 巨大な影がアランに向かって襲いかかるが、アランは守護の力で闇を防ぎながら前進する。シャスカーの目には狂気と怒りが宿り、彼もまた全力でアランを打ち倒そうとしていた。


「お前の力では、闇の真理には届かない!」


 シャスカーはそう叫ぶと、さらに強力な魔力を呼び寄せ、闇の波動がアランに迫ってきた。闇は空間を歪め、まるで全てを飲み込もうとするように広がる。


「俺が負けると思うな!」

 

 アランは叫び、守護の力をさらに強める。彼の中に燃え上がる決意が、光の力を増幅させ、シャスカーの放つ闇の波動をかき消していく。アランの力が、少しずつだが確実にシャスカーを追い詰めていった。


 その時、マルティナが後方から叫び声を上げた。


「アラン、私も戦うわ!」

 

 彼女は傷を負いながらも、勇敢に立ち上がり、アランの背中に力を注ぎ込むように祈りの魔法を唱えた。その力がアランの守護と融合し、さらに強力な光のオーラが彼を包んだ。


「ありがとう、マルティナ…!」

 

アランは力強くうなずき、シャスカーに向かって突き進む。二人の力が一体となり、アランの魔法の輝きはこれまで以上に眩いものとなった。


 シャスカーは不気味に笑いながらも、その目にはわずかな焦りが浮かんでいた。彼の放つ闇も、もはやアランの光には抗えなくなりつつあった。


「これで終わりだ!」


 アランはシャスカーに向かって最後の一撃を放ち、その光がシャスカーを包み込んでいった。シャスカーの姿が光に飲まれ、そして完全に消え去った。


 静寂が訪れ、アランとマルティナはその場に立ち尽くした。長い戦いが終わり、二人はようやく安堵の息を漏らす。


「終わった…のかな?」


 マルティナが不安そうに尋ねると、アランは小さく微笑みながら頷いた。


「ああ、終わったよ。お前がいてくれたおかげだ、マルティナ」


 アランは優しく彼女に感謝を伝え、迷宮の出口へと向かって歩き出した。


 迷宮の出口へ向かう道のりは、これまで以上に静まり返っていた。アランとマルティナはお互いに無言のまま歩を進めていたが、その胸の中には達成感と同時に、どこか満たされない感情が渦巻いていた。


 迷宮から外へ出た瞬間、二人は初めて青空の下に出たような錯覚を覚えた。降り注ぐ日差しが眩しく、戦いで擦り切れた心と体を優しく包み込んでいるかのようだった。


「終わったんだね、アラン」


 マルティナは深く息を吸い込み、穏やかな微笑みを浮かべた。その顔には、少しの疲れと共に、達成感がにじんでいた。


「ああ…けど、この戦いで感じたものがある。闇の力を持つ者がまた現れない保証はどこにもない」


 アランは真剣な眼差しを遠くの地平線に向けた。シャスカーとの戦いを通して、彼は己の力の限界を感じ、まだ果たさねばならない使命があることを悟っていた。


「それでも、あなたなら乗り越えられるわ。だって、あなたには『光』があるもの」


 マルティナが静かにそう告げると、アランは少し驚いた表情を浮かべ、彼女に視線を向けた。


「…光、か。今まであまり気にしたことがなかったけど、確かに俺にはこの力がある。守るべきもののために使うべきだよな」


 アランは少しだけ照れくさそうに笑い、マルティナに感謝の気持ちを伝えた。


 二人はそのまま教団の本部へと帰還した。教団の仲間たちが出迎え、無事に任務を終えたことを喜び、歓迎してくれた。アランもマルティナも、多くの声援と祝福を受け、その温かさに心が満たされていった。


 しかし、アランの中には決意が固まりつつあった。シャスカーとの戦いを経て、彼は自分がもっと強くなる必要があると感じていた。教団の守護者として、そしてこの世界の安定のために、さらなる力を手に入れなければならない。


「アラン、少し休んでもいいんだよ? 無理しすぎないで」


 マルティナが心配そうに声をかけたが、アランは少しだけ首を振った。


「ありがとう、マルティナ。でも、俺にはやらなければならないことがある。守るべきものがある限り、俺は進み続けるさ」


 その言葉に、マルティナも微笑みながら頷いた。彼女もまた、アランと共に戦い続ける覚悟を決めていた。

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