第4話 奮起
アランの目の前に広がる闇の王の圧倒的な力は、すでにその存在そのものが恐怖を呼び起こしていた。だが、彼は目を閉じ、一度深呼吸をする。魔法の盾「レイ・アストラ」が発する光が周囲を照らし、闇の王の波動をいくらか和らげるものの、その力は依然として強大だった。
「アラン、無理だ!」
マルティナが声を震わせながら叫んだが、アランはそれに耳を貸さず、ただひたすら前に進み続ける。その目には、これまでのどんな時よりも強い決意が宿っていた。
「マルティナ、黙って見てろ。」
彼は冷徹に答えると、杖を力強く握り締め、次の一手を放つ準備を始めた。闇の王の魔力が再び高まるのを感じると、アランはその動きに合わせるように魔法を調整する。守護としての力が彼を包み込み、今まさにその封印が解かれようとしていた。
「レイ・アストラ、拡大!」
アランの声とともに、魔法陣が彼の周囲で再び輝き、強力な光の盾がその場を取り囲んだ。その光は闇の王の闇を打ち破ろうとするかのように広がり、圧倒的な力で闇を押し戻した。
「愚かな…」
闇の王は、目を細めてアランを見つめながら言った。その声は、深い洞窟の中から響いてくるように、低く、冷徹であった。しかし、アランはその言葉に動じることなく、再び魔法を放った。
「これで終わらせる。」
アランが力を込めて放った魔法の光は、まるで彗星のように闇の王に向かって突き進む。しかし、闇の王はその攻撃を軽々と受け流し、手を一振りで光を粉砕した。
「それが全てか?」
闇の王はにやりと笑い、空間を歪めるような一撃をアランに向けて放った。その闇の波動は、まるで時空そのものを引き裂くような威力を持っており、アランの前に立ちはだかる。
「アラン!」
マルティナが叫んだが、彼女の声は闇の波動にかき消されていった。アランは防御する間もなく、波動に押しつぶされ、背後にある壁に激しく叩きつけられた。痛みが全身を走り、視界が歪むが、彼の目はそれでも決して閉じることなく、闇の王を見据えていた。
「…無駄だ。」
闇の王の声が再び響く。だが、その言葉に対し、アランは何も言わなかった。代わりに、彼は自らの力を呼び起こすように集中し、心の奥底から湧き上がる力を感じた。それは、守護としての本能的な力、そして教団の一員として背負った使命そのものだった。
「来い…!」
アランの中で何かが覚醒した瞬間、彼の体から溢れ出す光が部屋を包み込み、闇の王の圧倒的な力と激しくぶつかり合った。その瞬間、アランは初めて自分が持っている本当の力を感じた。
「レイ・アストラ…極光!」
アランが発した魔法は、かつてないほどの光の柱となり、闇の王の闇を貫くように空間を貫通した。その光は、ただの魔法ではなかった。それは守護の力そのものであり、アランの存在が完全に目覚めた証だった。
闇の王はその攻撃を迎撃しようとするが、その光はあまりにも強力で、闇の王の力を押し戻していく。ついには、闇の王の体が震え、ひと時の隙間が生まれた。
「この力…!」
アランの目が鋭く光り、再び杖を握りしめる。その目には、今までに見せたことのない確信が宿っていた。
「これで…終わらせる。」
アランは最後の一撃を放った。極光の魔法が闇の王を貫き、その身を貫通する。闇の王は絶叫を上げ、力を振り絞って抵抗しようとするが、もはやその力はアランの守護の力に太刀打ちできるものではなかった。
闇の王が崩れ落ち、魔法陣が静かに消えていく中、アランは深く息を吐いた。体はボロボロになっていたが、心の中には確かな満足感が広がっていた。
「終わったか…」
マルティナが恐る恐る近づいてきたが、アランはゆっくりと振り返った。
「まだだ。」
アランは静かに答える。闇の王は倒れたが、この事件が終わったわけではない。教団の陰謀はまだ解決していない。その先に待ち受ける未知の闇に、アランの戦いは続いていく
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