架空生物

「真斗、聞いたか?」

「聞いたって、何を?」

「ほら、いつものごとく『上位人』の話だよ」


(また、この話か……。コイツもこの手の話が好きだよな)


「はぁ、お前、本当に好きだよな」

「だって気になるだろう? 俺たちよりも、身体能力が高くて、知能も高いって言われているのに、山奥に引きこもって原始人みたいな生活をしているらしいし……」

「確かに」


 そう。コイツが言う通り、『上位人』と呼ばれる人々は通常種よりも知能が高く、身体能力も高いと言われている。そんな人々のことだから、俺たちよりも優れた文明で、発達した機械を日常で使っているのかと思えば、そうではないのだ。


「それに加えて、最近、ある大先生が、『実は我々、通常種が思う文明的な生活は決して文明的とは言えないのだ。我々よりも優れた人種である【彼ら】を見たまえ、我々がとうの昔に捨ててしまった生活を送っているではないか! 我々も彼らを見習うべきだ!』って、言ったものだから、あちこちに火がついて楽しいの、なんのって……」

「お前、本当に悪趣味だな……。でも、『上位人』って、俺たちよりIQは高いけど、EQは低いらしいじゃないか? すべてにおいて『上位人』が優っているなんてこたぁないだろう」

「ちっち! 甘いな、真斗くん。例の大先生は『そもそも、EQの基準になっている社会というもの自体、通常種が作り上げた幻想に過ぎない!』と語っているぜ!」

「あのなぁ〜。たしかに社会的な国家だとか、法ってものは非物質的なものだから、俺たちが作り上げた幻想っていうのも一理あるかもしれない。でも、その幻想のおかげで俺たちはここまで領土を拡大したりできたわけだろう? 幻想を持っていない『上位人』なんて、それこそ山に引きこもっているだけじゃないか」

「それって、幸せなのか?」

「その質問はそれこそ『上位人』の連中にも当てはまる質問だろう? 『山の中に引きこもって幸せなの?』ってね。そもそも、お前は、周りが騒いでいることを楽しんでいるだけだろう?」

「あぁ、色々と煽るのがたのしくて!」

「ほどほどにしとけよ? 遊びのつもりが抜け出せなくなったり、大問題になったり、ガチでハマってしまうなんて例は五万とあるのだからな!」


つづく?

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