武器
『バトルロワイアル』という作品はご存知だろうか? 簡単に言ってしまえば、生徒たちがランダムで支給された武器を使って殺しあう話だ。で、なんでこんな話をしているのかと言うと……。
「あっちに敵チームがいるぞ! 撃て!」
俺がその作品と似たような状況に巻き込まれているからだ。
何気ない日常を送っていたら、突然拉致されて、気づいたらチームを組まされて殺し合いをさせられているわけだ。「バトルロワイアル」と同様、武器はランダムで支給される。俺に支給されたものは……。
「なんで、よりによって短剣……」
これだったら、木材の方がマシだったと本気で思っている。如何せんコイツはリーチが短すぎる……。
状況も状況だ。こっちは仲間とはぐれて、孤立中。向こうは三人組。しかも、全員、軽機関銃を携行している。なんとか、森林エリアににげこんできたが……。まさに絶望的だと言えるだろう。
「ちっ、どこに行きやがった? おい」
「はい?」
「お前、向こうに行ってくれるか?」
「は、はい。わかりました」
三人組のうち、リーダー格らしき男が、一人にこちら側へ探りを入れてくるように指示をだしていた。どうする、俺? ここから、さらに逃げるか? いや、動きで場所がわかってしまうかもしれない。と、なるとこのまま息を潜めてジッとしているか?
「あれ~。ここらへんにいると思ったのになぁ~」
そう考えていると、偵察に来た一人がすぐそばに迫っていた。これは覚悟を決めるしかないな……。
「うわぁっ」
俺は無我夢中でソイツに襲いかかった。剣術に詳しい仲間から教えてもらった「短剣は基本的に逆手で何度も突き刺す」という言葉を頭の中に反復させながら……。
気づくと顔面が原型を留めないほどグチャグチャになった死体が目の前にあった。それをボーッと眺めていたが、「どうした!」という声によって再び現実に引き戻される。とはいえ、この時の俺は正気じゃなかった。そのため、真正面から二人組を襲った。
向こうも予想外だったのか、対応がおくれ、一人は短剣の餌食となる。もう一方は俺に対してストックを使って襲い掛かったが、その攻撃による痛みは感じなかった。ストックによる打撃を受けつつ、ひとすら顔を滅多刺しにする。
必要以上に刺して満足した俺は、先ほどから必死に殴りつけてくる奴を、仕留めた奴と同様に滅多刺しにする。
あれから意識を失っていたのか、一部の記憶が飛んでいる。あたりを見渡すと、血だらけの、顔の原型を留めていない死体が三体ほどある。
(そういえば、俺はコイツらとたたかっていたか?)
ハイになっていたせいか、ハッキリとは思い出せないが、そんな気がする。
(こいつら、全員弾切れか、どうりで……)
俺がアドレナリン出まくりの、一種の無敵状態になっていたとしても、勝てるわけだ。銃というよりは、鈍器を持っている連中と戦っていたようなものだからな。
(それよりも、早く移動しないと……)
どれだけ、時間が経ったかわからないが、急いで移動しなければならない。いまだに俺は一人だ。だから、仲間を早く見つけなければ……。
俺は朦朧とする意識と、頭の痛みを堪えて、歩き出した……。
つづく
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