星に願いを

星に願いを

僕たちはいつから星に願いをかけることをやめてしまったのだろう。

かつてはあんなにも願うことがたくさんあり、汲めども尽きぬ泉のように、僕たちの願望には底が見えなかったというのに。

それは、僕たちが年を取ってしまったからなのか、それとも、単に目に見える星の数が減ってしまったからなのか。

おそらく、その両方なのだろう。

僕たちは皆年を取り、星たちもその役目を終えていった。

そういうことだ。

すべてのものは、終わりに向けて時を刻んでゆく。

それに抗ってみたところで、ほんの一時、足踏みできたように錯覚するだけのことだ。

時の流れは、僕たちを、そして星たちも、容赦なくさらってしまう。

僕たちはこのままどこまで流されていってしまうのだろうと、怖くなることだってあるけれど、きっと、生の先の世界は、あの星空のように静かで昏く、すべてに見放されたようでいて、満ち足りたものなのだろう。

そうであってほしい。

せめて、生の先を越えるその時には、その瞬間が穏やかなものであってほしいと、昏い星空に僕たちは願う。

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星に願いを @chocolat_neige

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