第3話 実践練習
「じゃあ、訓練場に行くから着いてこい」
「イ、イエッサー」
後をついていくと、
「よし、準備はできたな。じゃあ始めるか」
「イエッサー、あれ?木剣とかじゃなくて真剣でいいんですか?」
「お前は殺しても生き返るし、私はこれでもA級なのだぞ。お前みたいなひよっこに攻撃が通じるわけがないだろう」
あれっ、A級冒険者って街に1人2人いるかどうかぐらいだったよな?レーラさんってもしかしてめちゃくちゃ強い?
「さ〜て、始めるぞ構えろ」
「イエッサー」
「初手は譲ってやる。どこからでもかかってこい」
「後悔しても知らないですからね」
「ハッハッハ、戦闘が終わったら態度がどうなっているか気になるな」
さて、そろそろ集中して軽く敵を観察する。武器は大剣、なめているのだろうか?下に剣先を向け、無防備な状態になっている。装備はビキニアーマーといったらいいのだろうか必要最低限の防具だけを身につけ、惜しげもなく鍛え上げられた筋肉を晒している。なら、狙うならここかな?
………オッケー、そろそろ始めるか。
武器を腰の後ろにある鞘にしまって『疾走』を発動できるようにしながら、前に飛び出す。相手の間合いに入ると切り上げをしてきたので、それに合わせて居合い切りの要領で剣の腹を殴るようにして攻撃を逸らし、さらに踏み込む。上に打ち上げられた剣を今度は両手持ちで、力を入れた切り下ろしをしてくる。弾けないため、ギリギリまで無駄を省いた回避をし、すぐにゼロ距離まで近づくと、躱されると思ってなかったのか一瞬だけ驚いた表情を変えたが、すぐに勝利を確信したような笑みを浮かべる。その瞬間背筋が冷たくなり、咄嗟にバク転して後ろに引く。すると、
「《
振り回した大剣が体の近くを通り、暴風のような風が発生し、少しバランスを崩しながらもすぐにバックステップをして引く。
「まじか、
「まぁ、これを使う予定はなかったし、使ったら躱せずこちらが勝ちになると思ったんだが、確かに実力があると自称するほどの力はある。……次は最初から
大剣を上に掲げ、数メートルの距離を一気に駆け抜け、振り下ろしてくる。それをギリギリまで引き寄せて躱し、ゼロ距離まで踏み込む。
「《旋風》」
「っ、《旋風》」
「《プロテクト》」
存在を忘れかけていた《初級結界魔法》の、物理攻撃を防ぐ《プロテクト》を使い攻撃を止めるが、ステータスの差もありすぐに破壊されてしまう。しかし、
「《スラッシュ》!」
私の早さに特化したステータスがあればその一瞬は勝負に決着をつけるには十分だ。鍛えられた腹筋に向かって《初級短剣術》の
「あっ」
右側から飛んできた大剣を咄嗟に短剣で受け止める……が、元々の重量さに加え、STRの差、勢いの有無などが合わさり、受け止めた短剣が折れ、そのまま吹き飛ばされる。
——ダン!ダッ!ダッ!ドゴーン!…ドサ、ガラガラガラ
「イッッタ〜、そりゃそうじゃん!
「お〜い、大丈夫か〜、すまなかったな。
「こっちのみの安全より勝敗のほう気にすんの?まぁ、とりあえずこっちの勝ちだろ。ルール的には初撃決着だからこっちの勝ちでしょ」
「ルール?最初にどうなったら勝ちなんか決めたか?」
「あっ……普通に考えて初撃決着でしょ、流石に危ないよ!」
「最初に私は言っただろ?お前から攻撃を喰らうつもりはないと、まぁ結果的には喰らってしまったんだが。お前は、街の中だと女神様の加護に守られて攻撃が喰らわないし、私は喰らうつもりがなかった。しかも、これは戦闘訓練なんだ。じゃあ、総ダメージでも危なくない、というかその危険性を考慮してなかったし、そっちの方が合理的だろ?というか、初撃決着でも流石に傷が浅すぎて判定されないだろ」
「えぇ……仕方ない、そっちの勝ちでいいよもう、その代わりと言っては何だけど、さっき攻撃を防いだ時に武器が折れちゃったんだよねちょっとさ、だから武器が欲しいな〜なんて」
「は〜……まぁいいぞ、嵌められた気がしなくもないが、まぁ武器を折ってしまったのは事実だからな。短剣ぐらいなら奢ってやる。武器屋に行くぞ。ついてこい」
「おぉ〜、マジで奢ってくれるとは、ありがとうございます……まぁ、本当は謎の力で治るんだけどな」
「ん?何か言ったか?」
「いやなにも言ってないよ」
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