冷たいカフェラテ
もるりんご
冷たいカフェラテ
秋の風が冷たく肌に触れ、街の街灯がひとつひとつ、寂しそうに輝く。カフェの窓から外を眺めると、夕暮れが街を包んでいる。私は一人、カフェラテを前に座っていた。温かいカップを両手で包み込み、冷えた指先を少しだけ温める。でも、心はどこか冷たくて、落ち着かない。
スマホが震えた。画面を確認すると、彼からのメッセージ。
「元気?」
たったそれだけの一言。それだけで、胸がざわつく。どうして、こんなにも心臓が急に跳ねるんだろう? それが嬉しいはずなのに、胸の奥で何かが引っかかる。何度もそのメッセージを読み返しては、指が震えて、返事を打つ手が止まる。
どうしてこんなにも彼の一言が、私を動かすんだろう? 私がこんなに思っているのに、彼は私のことをどう思っているのだろう。どうして、彼は私の心の中でこんなにも大きな存在になってしまったのだろう。
「元気?」—それは優しさなのか、ただの気まぐれなのか。私は、どうしてもそれが分からない。
でも、私は彼に何をして欲しいんだろう。もっと私を見てほしい? それとも、彼にとって私はただの「元気?」な人でしかないのだろうか? 彼の一言が、まるで私の全てを試すようで、怖い。
「元気?」
私が返事をしなければ、彼はどう思うだろう。心配してくれるだろうか? それとも、もう面倒くさくなって、二度と連絡をくれないのだろうか。ああ、考えただけで心が痛む。
私はスマホを持ち直し、指を震わせながら返信を打つ。
「うん、大丈夫。」
たったそれだけ。それでも、私はその言葉を選ぶ。だって、彼に迷惑をかけたくないから。彼が心配してくれるのが嬉しい反面、もし心配させてしまったら、もう二度と連絡をくれなくなるのが怖いから。だから、「大丈夫」と答える。それで彼が安心してくれるなら、私はそれでいい。
でも、心の中では「大丈夫じゃない」ことが次々と浮かんでくる。彼を必要としている自分が怖い。彼に依存している自分が、もっと怖い。もし彼が私から離れていったら、私はどうなるんだろう? そんなことを考えると、涙がこぼれそうになる。
でも、彼にその涙を見せるわけにはいかない。
カフェラテを少しだけ飲んで、私はまたスマホを手に取る。彼の名前が表示されているのを見て、指が震えながらも、画面をスクロールする。彼がどうしているか、少しでも分かりたいと思う。それが、彼に対する執着なのか、愛情なのか、もう分からなくなる。
メッセージはもう来ない。返事を待っている自分が、ますます怖くなってきた。
その時、再びスマホが震えた。画面を見た瞬間、私の胸は一気に高鳴った。彼からの返信。
「よかった。」
たったそれだけ。ほんの一言。それだけで、私は安心してしまう自分がいる。こんなにも、たった一言で心が軽くなるなんて。
でも、同時に不安も増す。彼は本当に「よかった」と思ってくれたのだろうか? それとも、ただ面倒くさくなって、早く返信しただけなんじゃないか?
心の中で、いろんな声が渦巻く。彼が私に冷たくなるのが怖い。もし彼が心を閉ざしたら、私はどうなるのだろう。彼が離れていったら、私は…どうしてこんなにも依存してしまうのだろう?
「元気?」という言葉に、こんなに揺れる自分が嫌だ。でも、それが止められない。私は、彼を…彼の一挙手一投足を、すべて気にしてしまう。
心が不安定で、どうしようもない。そんな自分が、ただひたすら怖い。
エピローグ
外の空気が冷たく、私はカフェを出る。夜風が顔を撫で、街の灯りがぼんやりと光っている。手をポケットに突っ込み、私は歩きながら考える。
もし、彼がいなくなったら。もし、彼がもう私のことを気にしなくなったら。
その恐怖が、胸を締めつける。でも、私はそれを感じるたびに、さらに彼にすがりたくなる。こんなにも、彼に執着してしまう自分を止められない。
あの一言が、私のすべてだと思ってしまう自分が、どうしようもなく怖い。
でも、今日も私は歩き続ける。彼のために、また笑顔を作りながら。
冷たいカフェラテ もるりんご @moruringo__
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