第2話 過去の記憶

「突然だけど、潤くん。君に少し聞きたいことがあるの。」

「は、はい」


どんな質問を投げられるのかと、少し身構えてしまう。


「君は、小学生の頃の記憶はある?」

「小学生の頃...」


僕は実は、小学四年生から前の記憶が殆ど無い。何かの病気とかでは無いらしく、親はその理由を知っていそうだが、全く教えてくれない。


「僕は小学四年生から前の記憶が無いんですけど、それを知っているんですか?どうして...?」


僕自身この話をするのは口外しないだろうと確信できる程信頼できる人にしかしない。例えば雄志とか。あいつは意外と口の硬いやつで、俺が誰にも言うなと言えば誰にも言わない。そんな良い奴なのだ。


「...やっぱり、覚えてないのね...。ごめんね!突然変な事聞いちゃって。今の話は忘れて!」


そう告げると、石川さんはそそくさと教室を出て行ってしまった。


「......本当になんで知っているんだ...?」


僕は不思議に思いながらも、教室を出て職員室に向かい、先生を呼んだのだが、僕の普段の真面目さのおかげか、特に怒られることなく解放された。




「...あ〜なんだったんだろまじで」


授業が終わり家に帰った後も、僕はあの昼休みの事を考えていた。なぜ、僕の秘密を知っているのか。もしかしたら、小学生の頃、僕と石川さんは仲が良かったのかもしれない。そうだ、きっとそうだ。

と僕は自分の中で勝手に結論付け、考えるのをやめた。




僕の記憶はなぜ無くなったのか。ただ、全ての記憶が無くなったわけではない。部分的に残っており、自分の名前や、学習した内容などはしっかりと頭に残っていた。だが、過去の思い出などは本当に思い出せない。無理矢理思い出そうとすると、なぜか頭が痛くなる。そこら辺のことは、なるべく考えない方が良いのだろう。きっと親もいつかは話してくれるだろう。



「ただいまぁ〜...づがれだ〜〜」


帰ってきて早々ふにゃふにゃな歩き方でソファーに倒れたこいつは俺の妹の河村愛衣(かわむらあい)。まぁこいつは僕と違って部活に所属しているから、疲れていてもしょうがない。


「お〜お疲れ様、今日の晩飯何食べたい?」

「別になんでもいいけど、オムライス食べたい〜」


一体どこがなんでもいいのか。


それより、実は僕と妹は家に2人で暮らしている。親はいないのかと思うだろうが、母親は既に亡くなっていて、父親は仕事で今年の春から遠くに行っている。そのため、まだ学生の2人で暮らさないといけないのだ。まぁ、毎月お父さんが割と余裕のある額を送ってくれるから、生活には困っていない。


「いいけど卵ないから買いに行ってくる」

「わたしもいくー」

「来てもどうせお菓子だとか余計な物買うんだろ?」

「あたりまえじゃん!!」


いつもの事なので僕は諦めて妹とスーパーに向かった





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