第8話 合流ッ!環状族──ッ!
MOMO太郎のグランドは湊町JCTを目指してゆっくりと進行していきます。
しかし、このMOMO太郎の進路を遮る作戦には、弱点がありました。湊町JCTを越えると、三車線、そしてすぐ四車線となる区間があるのです。そうなれば、鬼ヶ島連中を先頭で抑え続ける事は困難になります。
ふと、MOMO太郎や鬼ヶ島連中とは違う音が、かすかに聞こえてきました。
何事かと思う間もなく、湊町JCTを通過してしまいました。このまま何もできなければ、彼らは長い直線が続く池田方面、若しくは出入橋への逃走を許してしまいます。
ここまで来て万事休すか――そう思った時、左斜線から一気に追い上げてくる車の影が見えました。
「左からは私たちが抑えます!貴方は先頭を維持してください!」
なんと、やってきたのはお巡りさんでした。
一般車が優先的に道を譲ってくれた事に加え、途中にある左コーナーのインを、壁を擦るギリギリのラインで駆け抜けた事で、なんとか前へとやって来ることができたのです。
お巡りさんの必死の声掛けは、MOMO太郎の胸を打ちました。自分の行動の意図を読み取ってくれた事もそうですが、お巡りさんから見ればMOMO太郎も危険な存在のはず。そんな自分を信用して協力してくれる事に対して、心の底から感謝し、目頭が熱くなるのがわかりました。
しかし、これだけではまだ足りません。左への逃亡を阻止できたとしても、右方向からの合流があるからです。
どうするかの作戦を練る間もなく、そのポイントへとやって来ました。
背後のヘッドライトは、獲物を捉えるために様子を伺う獣の目のよう──いや、あれはまさしく“鬼の目”でした。
MOMO太郎の必死の制限も、もはや限界が近づいています。どうしようもない状況に半ば諦めかけたその時、再び自分たちとは違う音が耳に入ってきました。
右の合流に目をやると、黄色い光が複数、こちらへと猛スピードで向かってきているのが見えました。
「あっ、あれは──ッ!」
合流地点ではっきりと姿を表したのは、なんとグランドでした。ですが、MOMO太郎のそれとはまた違った雰囲気です。
さらにその背後には、ワンダーやスポーツ、タイプRまでいるではありませんか。先ほど聞こえてきた音の正体は、彼らのものだったのです。
先ほどまでは、VTECサウンドをMOMO太郎一人で奏でていましたが、今では5台です。あまりの爆音に、近くを走る一般車の全てが窓を閉めてしまいました。
彼らにとってチーム鬼ヶ島は、目の敵でした。
環状を荒らすどころか、自分たちのチームメンバーを傷つけられた過去があった為、いつか焼きを入れてやると決意していたのです。
そこへ、MOMO太郎達の起こした今夜の大騒ぎ。これが野生の環状族を刺激し、この場へと誘い込む事に繋がったのです。
その肝心の鬼ヶ島はどうでしょうか。見た事はないが聞いた事のあるグランドに抑えつけられている状況ではありませんか。これに協力しない理由などあろうはずもありません。
右からの逃亡を阻止するため、環状族は車列を縦に揃え、完璧なチームワークによって鬼ヶ島連中の動きを封じ込めました。夜な夜な走り込んでいる車同士の連携力は凄まじいもので、調律を乱す動きは一切ありません。瞬く間に、鬼ヶ島連中を完全に封じ込めてしまいました。
あまりにも見事な連携ぶりに対し、鬼ヶ島連中が抵抗できる筈もありませんでした。
MOMO太郎は突然の出来事に、しばらく思考が停止してしまいましたが、このチャンスを逃す訳にはいきません。
鬼ヶ島連中をある方向へと誘導するため、MOMO太郎は少しずつ右に寄っていきます。
それを見たお巡りさん、環状族も同じように右へと寄ります。
MOMO太郎は、西船場JCTを右に向かい、奈良方面へと誘導していたのです。こちらに誘導できれば、ずっと二車線の道を走る事になるため、鬼ヶ島連中をより抑えつける事ができると考えたのです。
ですがこの奈良方面への誘導というのは、MOMO太郎の思惑に反し、鬼ヶ島連中にとってはむしろ好都合だったのです。
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