第13話 勉強会
週が開けたら校長直談判本番。
……なのだが。
「月曜日がテストぉ?」
八木の情けない声と、皆の頭の上に浮かんだハテナマーク。
って感じで、まさかの僕以外の部員全員がテストのことを忘れていたという緊急事態。
こういう時って、八木みたいな盛り上げが大事だと思うんだよね。
「テスト勉強出来てるか〜!?」
「「「「「…………」」」」」
全員沈黙。
ダメでした。
「玲桜、勉強とかするタイプなんだ」
「テストのこと忘れてたかと思った」
「ちょっと意外かも」
「玲桜くん、てっきり頭悪いタイプなのかと……」
「狭霧くんがビミョーな感じだしね……」
失礼だな。
みんながみんな揃ってそんな驚かなくても良くないか?
普通に頭良いほうだと思うんだが。
小学校のテスト、ほぼほぼ百点しか獲ってないぞ?
計算ドリルだって誰よりも早く三回通り終わらせてたし。
「もしかして皆さん、全員勉強ダメ?」
恐る恐る訊いてみたが、回答はすぐに返ってきた。
「「「「「もちろん」」」」」
馬鹿が集まって校長と向かおうもんなら、僕らのイメージが落ちるかもしれない。
これは取るべき行動は一つのようだな。
「勉強……しましょうか」
◇
場所は変わって図書館。
大勢でカフェの席を占領するのはどうかと思ったので、勉強会が許可されているここが一番いいのでは?と菜花が提案したので、一旦解散してここに集合になった。
今度は間違いなく一番。
誰も居ない。ここから一番家が遠いから最後になるかもしれないと思っていたが、またさっきと同じようにならなくて済んだ。
二度も同じ手を食らってたまるka……
「「「「「わーっ!」」」」」
「ひょわっ!」
振り返った先に居る五人の『みゅーじっくあそーと!』のメンバー。
驚いて飛び上がってしまったものの、冷静になれるまでに時間は掛からなかった。
こいつら……。
「二度も同じ手を食らったことがよっぽど悔しかったようですねぇ?」
ニヤついている椿とその周りの部員。
「さっき解散する前に、またやろうって狭霧くんが言ってからね〜」
「ちょっ、純礼さん!?」
確信犯だな?
「椿、後でじっくり話そうじゃないか……」
「ひぃっ!」
しっかり注意しないといけなさそうだ。
「そ、そんなことより早く机の方に行こうや? な?」
焦ってるのがバレバレだぞ?
「この前配られた対策プリントで良いんだよね?」
如月さんがテスト対策として配られたプリントをヒラヒラしながら言った。
週明けのテストは小学校の振り返りのテストなので、ワークを解けばいいという訳では無いとのこと。
そこで配られたのが、如月さんがヒラヒラさせている対策プリント。
これがまたかなりの量があって、冬休みの宿題くらいの量がある。
提出では無いので、学年の
だが、ここでテストを投げ出してしまってはいけない。
少しでも好印象を残さなければ。
と、思ったのだが……。
「ナニコレェ?」
「ここに書いてあるだろ!?」
文章問題の読解ごときで突っかかってどうする?と思ったが、椿の目が点になってしまっているので、優しく教えてあげることに……しようとしたが、椿の理解速度が遅すぎる。
「主人公の気持ちって何だよ? 作者しか知らないだろ?」
「文をちゃんと読んだら分かるから!」
「決めつけって良くないと思うんだよね。大体、文字は嫌いだから」
この前、本が好きだから作詞やるって言ったよな、椿?
「……ねぇこれ分かる、すみれん?」
「……いや、分からん」
小声で話している如月さんと長谷川。
分からなそうなのを放っておくと面倒くさい事になりそうなので、こっちも対応しますか……。
「みはじ! 道のり、速さ、時間! テントウムシの図を頭に入れておくこと!」
速さの計算の基本が入っていないらしい。
「速さの計算って算数のラスボスだよね……」
「なんで歩いてるお兄ちゃんの忘れ物を自転車で追いかけるのさ? 電話して戻ってきてもらえばいいのに……」
「それな。帰ってきてもらえば計算も単純になるのに……」
屁理屈ばっかりだな。
「ねぇねぇ、勉強なんてしないで私とデートしない?」
如月さんが肘をついて誘惑してくるが、そんなことで流されるような
「今は勉強!」
「……けちぃ」
ちょまてよ。
八木と菜花、寝てるぞ?
「おーい、起きろー」
反応なし。
まだ勉強会始まったばっかりなんですけど?
「んみゃんみゃ……」
「…………」
八木はなにかボソボソ。菜花は相変わらず反応なし。
「起きろってばー」
肩を揺すってみても、起きない。
こいつら、真っ昼間のこんな明るいところでよくこんな眠れるな。
最早尊敬の域に達しそうだ。
「ごーちゃ〜ん、菜花〜。おっきて〜」
長谷川が懸命に起こそうとしてくれるが、やっぱり反応なし。
このあともずっと八木と菜花は起きなかった。
この勉強会を成り立たせるのが、今年一番大変だったかもしれない。
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