第3話謎の死の推理

仙岩寺はひなの屋の温泉に浸かり、考えていた。

何故、袖山弁護士が死ななくてはならないのか?

これは、捜査の結果を聴くまでは謎だ。

どこで、誰があのタバコに毒物を仕込んだのか、さっぱり分からない。

だが、宮部創一郎の遺言書は持っていた。遺言書に秘密があるのだろうか?

調べなくてはいけない事が山ほどある。

仙岩寺は、上がり湯を掛けて本館に戻ると、中居の里美が先生、今夜面白い話しを聞かせて下さいね。と、言いながら料理を運んだ。

サワラの西京焼きが殊の外上手くて、酒が進んだ。

食事が終ると、里美に言って、障子紙を分けてもらった。

里美は、何か絵でも書くのか?と、仙岩寺に尋ねたが、似たようなものと言って、万年筆で関係性の略図を書いていった。

すると、突然ふすまの向こうから、

「先生、宜しいでしょうか?」

「いいよ」

と、障子紙を片付けて返事すると、そこには宮部美加が顔を見せた。例の彼氏の宗健太郎も一緒だった。


「先生、昨夜はどうもありがとうございました。楽しいお話しを」

「いやいや、あ、君は美加ちゃんの彼氏だね」

「はい。宗と申します。美加の付き添いです」

「そうか。それで、私に何のご用ですかな」

「先生、死んだ父の死の真相を暴いてもらいたいのです」

「警察は事故死だと言っていたよ」 

「でも、あのつり橋、柵を上らないと下には落ちないのです。明日、確認して見て下さい。小学生の子供の背丈くらいの柵を乗り越えるのは無理かと」

「……私はただ働きはしません」

「もちろん、お金も用意します。お願いします。父の死の真相を暴いて下さい」

「僕からもお願い致します」

と、2人は頭を下げた。


「結構、お高いですよ」

「ダメだ、先生はやはり上流階級の事件しか担当されないようだ」

「宗君、それは誤解だ。私はお金の為だけに働いた事はありません」

「じ、じゃあ調査して頂けるのですね」

「この、仙岩寺にお任せあれ」


すると、宗は新聞紙で包んだ一升瓶を開いた。

「先生、これ良かったら」

「……めちゃくちゃ高い酒ではないか?」

「はい。僕が選び、美加がお金出してくれました」

「これは、ありがたい。ちょうどいい、3人で飲もう」

「い、いえ、僕も美加もお酒飲めないんです」

「何だよ。いい歳こいて。まあ、これは私が1人で頂きます」


2人は手付金に1万円、仙岩寺に渡した。

仙岩寺は、丁重に預かり引き出しに入れて施錠した。

そして、関係図を再び描き始めた。

何故、1カ月前に宮部創一郎が死んだのに、まだ遺言書は開かれないのだろうか?と。

遺言書は今、桜島警部が保管している。

怪しいのは、名光寺の住職の藤谷と、使用人の立松夫妻だ。

この3人を調べる事が第一優先だった。


翌日、駐在所に向かった。

折田巡査は宮部創一郎の第一発見者だ。

死体の具合と、事故死の判断を下したのは何故か?と、質問責めしようかと思ったのだ。

そして、藤谷住職の事、立松夫妻の話しを聴いた。

宮部純子と藤谷孝樹は不倫関係らしい。それを知る村人達は、あの家族の事を避けているらしい。

立松夫妻は、どこのどの繋がりで働き出したのかも不明だった。

折田巡査と事故の起きた、つり橋に向かった。

「先生、こちらです」

「何、立派な柵があるじゃない。こっから転落するのは、難しいよ」

「実は……」

「何だよ」

「ここの柵は外れていました。接続部分が腐食して、ね。ここだけ新しいでしょう?」

「別に変わらんが」

「ボルトを見て下さい」

「……確かに。これが外れて事故が起きたのか?他に連れは?」

「奥様がいらっしゃいました。本官がたまたま奥様の悲鳴を聴いて駆け付て、確認した時は、創一郎さんは即死の状態でした」

「そうか……」

仙岩寺は、納得して旅館に帰り、桜島警部の話しを聴いていた。

その頃、ちょうど昼食になったので、桜島警部の分の昼メシも出してもらった。

親子丼だった。2人は夢中で親子丼を口に流しこんだ。

そして、再び話しを聴いた。

桜島警部は、ゆっくりと説明を続けた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る