第3話 部屋の外
朝になり目が覚めると、あかりがいつものツインテールに髪を結んでいた。
「…ん、あかり、何やってるんだ、」
寝ぼけ眼をこすりながらハム助が聞いている。
「何って、学校の準備だよ!ていうかあたし、もう行くから。いい?絶対に部屋からでたり、部屋で変なことしちゃだめだからね!いってきまーす!」
あかりが慌ただしく部屋を飛び出していった。
ドタドタと階段を降りる音が小さくり、部屋が静まり返る。
ハム助はブランケットから這い出て部屋を見渡した。ハム助にとってあかりの部屋は大きすぎる。天井もとても高いし、広さだってハムスターをいっぱい呼べば野球ができるくらいだ。
「さてと、ゴメンなあかり、僕の修行のために部屋を探索させてもらうよ…と思ったけど、昨日見たなぁ…あ!」
ハム助はあかりの机を覗くようにして引き出しに手をかけた
「う、ぐぅ…お゙お゙お゙おお!」
ハムスターから出る声とは思えないほどの野太い声で、重たい引き出しを少し開けた。
「ハァ、ハァ、よし…!これで、…て、お?」
ハム助は引き出しの隙間からピンクのノートを見つけた。
そこでハム助はビビッと来た。
「こ、これはもしや!人間観察日記!?よ、よし、これを…ぅ゙ゔゔゔゔお゙、お゙、」
顔のパーツが真ん中に集まったままになるのではないかというくらい気持ちの悪い顔をして、やっとの思いでノートを引き出せた。
それと同時に床に転げ落ちた。
「よし!あ…。イッテテテ……よし!見るぞ!僕は未来の王様なんだ!」
そう自分を自信付けノートを開いた。
「おー…お?何だこれ?絵か?」
ハム助が開いたノートの中には目の大きく描かれた男女が隣ならびに描いてあった。
そう、これはあかりの落書き帳。
しかし、ハム助は“人間”しか知らないため、この目の大きく描かれた生物を宇宙人だと思っている。
「これ、あかりが描いたのか?もしかして、あかりって宇宙人が好き!?いや…あかりって宇宙人!?!?!?」
興味がわいたハム助は夢中でページをペラペラめくっている。
中には戦隊少女のようなイラストや、普通の女学生のようなイラストが描かれていた。
「…ほう、こんな宇宙人が…って!僕は何やってるんだ!修行修行!他には…」
そう思い机を見上げると、とても高くて登れそうにない。
「んー…いいや!ダルいし。よし!人間観察だ!人間観察!」
そう言って扉の下まで走っていった。
「ぜぇ、ハァ、なんでこんなに…遠いんだ……」
扉の下についたハム助は、普通にドアノブを下げて開けようと試みた。
「高いなぁ…いや、これも修行だ!そうでしょ?お父様。…よし!ハム助、いっきまーす!」
そう言ってハム助はジャンプしながらドアノブを下げようと頑張っている。
しかし、ドアに対してハム助の脚力が短すぎる。とてもドアノブに届く気がしない。
「ハァ、ハァ、もういいや。…ヒギィィィお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙」
ハム助はドアノブを下げることを諦め、ドアの隙間から部屋の外に出ることにした。
意外にも簡単に頭が入った。
「ゔ、ふ…ギギギギギ…」
お腹で突っかかっている。
ハム助はとてもと言っていいほど、不細工な顔をしている。
それはまるでハムスターのように見える怪物だ。
奇妙なうめき声を上げ、顔はシワがたくさん刻まれている。
そんな化け物は、ハムスターである事を思い出したかのように顔が戻り、それと同時に扉から抜け出せたようだ。
「ええええい!…ふぅ。僕、こんなに太かったかな?」
扉を振り返りながらハム助が言う。
そして右に見える階段を見下ろした。
とても高く、降りたら戻ってこられる気がしなかった。
「…まぁ、ずっとここにいるわけにはいかないんだ。悪いけど、ここでお別れだぜ、あかり。」
そう言ってハム助は勢いをつけて階段に向かって走っていった。
「あ」
踏み外してそのまま転がるようにして落ちていった。階段はくの字になっていたので、角でぶつかってその衝撃で浮いた体は、そのまま叩きつけられるように床に落とされた。
「…んもう!僕は地球に来て何回怪我してるんだよ!」
痛みが続く体を起こしてハム助が叫ぶ。
痛くて今にも泣き出しそうだったが、ハム助は「大丈夫、未来の王様なんだから!」と自分を慰めて、なんとか持ちこたえた。
そしてすぐ目の前に扉を見つけた。
スライド式の扉だったため、ハム助でも少し力を入れれば開けられた。
「ふぅ、これで修行に専念でき…」
そういった途端。茶髪ロングの女性と目が合った。
チビが天下をとる話! ざくざくたぬき @gal27
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