第2話 ハム助の目的

「し、し、喋ったぁ!?!?!」


あかりはあまりの驚きから大声になってしまった。


「あかりー、大丈夫なの?」


したからお母さんが聞いている。


「なんでもないよー!」


あかりは届くように返した。


「あなた…喋れるの?」


部屋をジロジロ見つめているハムスターに話しかける。


「ようよう人間…僕は未来に王様になるちょーーーー偉大なハムスターだぞ!口の利き方には気をつけるんだな!」


喋るハムスターはその小さな体から出るとは思えない大声で、「なーっはっはっはっは!」と高笑いしている。


「あなた名前は何ていうの?」


あかりは興味津々にハムスターを見つめている。


「お…おい。そんなに見つめるなよ。じゃないと…」


「じゃないと?」

 

ハムスターは少し間が空いたあとに言った。


「照れちゃうだろぉ」


えへへと言いながら頭を掻いている。

なんだコイツとあかりは思ったが、とりあえずハムスターの情報を探ることにした。


「コホン!僕はハム助!さっきも言ったように、未来の王様となるハムスターだぞ!」


「王様?ハムスターが?」


「そうだ!王様だ。」


…王様?こんなにちっぽけなハムスターが?

なに言ってるのこの変なハムスター。急に窓に飛んでくるし、喋るし。

だいぶ態度のでかいハムスターに戸惑うあかり。

沈黙を断ち切るようにハム助が喋った。


「お、おい人間!貴様!名前は何ていうんだ!」


「あたしは月野あかりだよ。よろしく…っじゃなくて!あなた何しに来たの?勝手に女の子の部屋に入り込むなんて!失礼だよ!」


ハム助が慌てて答えた。


「なっ!変態エロエロスケベハムスターだと?!確かに急にあかりの部屋に来たが、これはたまたまだ!変態しようとしてきたわけではない!」


「そこまで言ってないけどね」


改まってハム助が言った。


「とーにーかーく!僕がここにいるのは理由があるんだ!あかり!黙って聞くんだ。」


そうしてハム助はここに来るまでの経緯を話し始めた。


「僕はお兄ちゃんたちより劣ってるから、修行するためにってお父様に追い出されてこの星に来たんだ。だからあかり!僕に協力してくれ!」


ハム助はあかりに向かって大福みたいに頭をつぶして土下座している。

流石にここまで頼まれたら、と思ったあかりは協力することにした。


「わかったけど、あたし何したらいいの?」


ハム助が目をキラキラさせて喜んでいる。


「本当か!?よっしゃああああああ!それじゃああかり!まずはお前の部屋を調べさせてもらう!」


そう言ってハム助はどこから持ってきたかわからない探偵帽と虫眼鏡を取り出して、部屋中をくまなく調べている。


「えぇ?!あたしの部屋?!なんかちょっと恥ずかしいかも…ていうか、そんなことして意味あるの?」


あかりはベッドに座り込み、ハム助を訝しんでいる。


「意味あるの!僕は最終的に人間に姿を変えられればいいからな!そうすればお父様に認めてもらえるんだ。認めてもらえれば、きっとママだって喜んでくれるはず!」


ハム助が食い気味に答えた。

あかりはハム助の両親の呼び方に違和感を抱いたが、どうせ部屋を調べ終えたら出ていくだろうと考え、あまり気にしてはいなかった。


「うん?これは…」 


ハム助があかりの読んでる恋愛漫画を広げて読んでいる。


「あー!ややややややめてよー!」


あかりは焦った様子でハム助から漫画を奪い取って本棚に戻した。

安堵して、ふぅとため息をついた。


「もうハム助!人間になるにはこういうのは見なくていいの!」


「え?そうなの?だってこれ、人間の生活が…」


「もううるさーい!あたし寝るから!どっか行ってよね!」


そう言ってあかりはハム助をつまんで、窓から外へ放り出そうとした。

が、ハム助がジタバタ暴れている。


「わー!待て待てあかり!謝る!謝るから許してぇーー!」


ふんッと言い、あかりはハム助を床に落とした。

ハム助は「あでででっ」と言って起き上がり、おでこを押さえている。


「ごめんよあかりぃ。僕、この星にいる間宿がないんだ。しばらく泊めてくれよぉ…」


あかりはハム助の前に座って言った。


「…わかった。でも、今から言う事ちゃんと守ってね?」


ハム助はコクンと頷いた。


「あたし以外の人間に見つかっちゃだめ!ママ達は絶対ね!あと、部屋を荒らさないこと!最後に!修行とか調査もいいけど、あたしが帰るまで大人しくしてるんだよ?わかった?」


するとハム助は胸を張って言った。


「守れるに決まってる!なんせ僕は未来の王様になるんだからな!」


あかりはフフッと笑ったあと、ベッドにかかっていたブランケットをたたんで机に置いた。


「今日からここで寝てね。今はあれだけど…今後ちゃんとしたのを作るから」


「えーあかりぃ。僕そっちのでっかいお布団がいいよぅ…しかもなんかこの布、ちょっと汚い…」


ハム助がブランケットをひらひらつまみながらぶつぶつ言っている。


「…もう泊めてあげないよ」


「ああああ!ごめんよあかりぃ!これちょー最高!もうすっごい寝心地いいんだから!あー!0コンマで寝れそー!!!」


意外と扱いやすいハムスターだなぁ…


「じゃあ電気消すよ?おやすみー」


「おやすみー」

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