1.その人と私

1-1

 人生の分岐点は、どこにあるのだろう。


 ふとした疑問が、身体に絡みついて離れない。進学、受験、あるいは出会い? 最初に思い浮かぶのは、そんな大きな出来事だ。


 たぶん、それも正解だろう。でも、それだけではないとも思う。一日一日の些細な選択が、その積み重ねが、すべてが分岐点ではないだろうか?


 ああすればよかった。こうすればよかった。小さな後悔が残った分岐点。


 あれのおかげで。これのおかげで。小さな幸せをもたらした分岐点。


 一つ一つは微かかもしれない。でも、確かに今の私を作っているのは、そんな日々の中に潜む分岐点だと思う。


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 中学時代、まだ平野がいない頃、私は親友ができた。まさに「親友」と呼ぶに相応しい人物。人生で二度とないような、特別な出会いだった。


 仲良くなったきっかけは些細なことだった。当時流行っていたある作品が共通の話題となり、そこから会話が広がり、やがてつながりが生まれたのである。


 その人との会話は、何となく波長が合う感じがした。同じ内容でも何度も何度も楽しめ、共有する時間や空間が心地よいものであった。


 そして私は、その人を"私と似た人間"だと感じた。思考が似ているとか、これまでの境遇が似ているとか、好みが似ているとか、そういった具体的な基準で判断したわけではない。もっと抽象的で、直感的に、何となくそう感じたのだ。


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 月日が流れ、高校生になった。その人は私よりもずっと頭が良く、努力家であったため、県内トップクラスの高校へ進学した。一方、私は自分の能力に合った、普通の高校に進学した。


 私はその人に対して、理想の像を重ねていた気がする。私より優秀で、でもどこか似ていると感じるその人に。


 その人は医学の道を目指していた。私は、彼はきっと医者になるんだろうなと、漠然と思っていた。それは彼が私より頭が良かったからというよりも、私と違って未来への地図をしっかりと描いている人だと感じていたからである。


 当時、私は将来をどう描くかが定まっていなかった。もちろん何も考えていなかったわけではない。物理が好きだった私は、理系に進むことだけは決めていた。しかしその先は曖昧だった。自身が完治しない病気を抱えていたことから薬学の道を検討した時期もあったし、モノづくりが好きだったことから工学の道を考えたこともあった。


 高校生の段階で人生の設計図をしっかり持っている人間は少ないだろう。私から見て、その人は、まさにそんな設計図を持っている側の人間だった。

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