第38話

「それで早霧ちゃん、青空さんと最後に連絡とったのはいつです?」

「一か月以上前だよ。うちらの教室来て紹介したの覚えてる?」

 青空の行方不明を告げるニュースが出たその翌日から、高校は夏休みに入る。

そして一週間が経過したが、未だ彼女は見つかっていない。

 日ごとに不安が大きくなる早霧と玉美は、なにかできることがないか話し合うため、アレスの家へと集まっていたのだった。


「昼休みに挨拶した、あのときからですか……」

「そう。あの日までは毎日スマホにメッセージが来てたけど、突然途切れたからおかしいなとは思ってたんだ。それであたしからも何度か送ったんだけど、ずっと未読のままだよ……」

「なにがあったんでしょう……。あ、そうだ。アレスくんは探索魔法とか使えないんですか?」

 しかし、心配する玉美と違いアレスはあまり関心がない様子で回答する。

「探索魔法? そんな便利な魔法はないぞ。それがあったら、犬猫の捜索もあんな回りくどいことせずに簡単に見つけてるさ」

 すると、呑気なアレスを見てカチンときた早霧が、少し苛立った様子で確認する。

「それじゃあさ。他になんかいい魔法ないの? 人探しに役立ちそうなさ」

「ないぞ」

「ちょっとは考えてよ!」

「まあまあ、早霧ちゃん。ちょっと落ち着くです」

「ご、ごめん。ちょっとね……」

 大きなため息をつく早霧を見て、玉美は優しく声をかける。

「青空さんのこと心配ですよね。大丈夫です?」

「ごめん。ちょっと自分にもイラついてんだ。青空はいつもなにか悩んでた様子だったんだけど、ちゃんと相談に乗れてなかったんじゃないかって。そんな自分に腹が立ってさ……」

「私は二人のやり取りのことはわからないですけど、あのとき教室に来た青空さんはとてもいい顔してました。あの笑顔を見たとき、早霧ちゃんのことが本当に好きで信頼してるんだなって思ったから……。早霧ちゃんが責任を感じることはないと思います」

「あんがと、玉ちゃん……」

 机に伏せて顔を隠す早霧。玉美はそんな彼女の背中を優しくさすり続ける。

 そのとき――スマホでニュースサイトをチェックしていたアレスがなにかに気づく。

 そして、すぐにテレビをつけザッピングした後、画面を指差した。

「おい。記者会見をやってるようだぞ」


 その画面の中央に映る女性――それは青空の母親であり、何度もハンカチで涙を拭きながら質問に答えている。

 その両脇には関係者や弁護士と見られる数名の男性が横一列に並び、百を超える記者やカメラマンがその手前に陣取っていた。

 目を反らしたくなるほどの激しいフラッシュ。そして画面の右上には《緊急会見。夏井青空さん誘拐か》のテロップが見えるのだった――。

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