第39話
『夏井さん! 犯人からはどのような手段で、いつ連絡がありましたか?!』
「昨日、電話がありました……。娘を誘拐したと……」
『青空さんが行方不明になったのは、もっと前からだとお聞きしましたが!』
「はい……。一か月ほど前の放課後、学校に迎えにいったマネージャーから『青空が学校から出てこない。電話してもつながらない』と連絡がありまして、そのときからです」
『それで、警察に連絡されたのはいつでしょうか』
「行方不明になって一週間ほど経ってからです。最初は家出かと思っていたので関係者だけで探していたのですが……。もっと早く捜索願いを出していれば……。うっ……っ……」
青空の母であり事務所の社長でもあるその女性は、一つずつ丁寧に質問に答えていく。
そして、声を詰まらせるたびに、多くのフラッシュを浴びせられるのだった。
『犯人からは身代金など、なにか具体的な要求はありましたか?!』
「それは……現在捜査中ですので、詳しくは申し上げられません。申し訳ございません」
『青空さんの声は聞けたのでしょうか?』
「はい……。『お母さん』と……。うっ……。その一言だけ……」
『犯人からの電話に対応されたのはお母様ですね。他のご家族の状況を教えてください』
「夫は海外出張中でしたので私が犯人と話しをしました。当然ですが夫もかなり心配しておりまして、明日には帰国する予定です。弟も一人おりまして今は塞ぎこんでいる状態ですが、私も息子も娘の声を聞けて、そのときは少しだけ安心いたしました」
『犯人の声から、性別とか年齢とか、なにかわかることはありましたでしょうか』
「申し訳ございませんが、それも詳しいことは申し上げられません。ただ、ボイスチェンジャーかなにかで声を変えてるようには感じました」
『この会見をすることで、娘さんに危険が及ぶ可能性もあると思いますが』
「それが……この会見は、犯人からの要求にあったんです」
『……犯人からですか?! それはなぜでしょう』
「わかりません。なぜ会見を開く必要があるのか聞いたのですが答えてくれませんでした。ただ『すぐに会見を開き、誘拐されたことを全国に発表しろ』とだけ……。一日でも早く無事に帰ってきて欲しいです! ううっ……。青空……!」
ここで司会者が会見を止める。そして心神耗弱状態であることから青空の母親は退室し、別の男性が質問に答え始めるのだった――。
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