第37話

 中に入れてもらうとすぐに、犬の保護エリアへと案内してもらう玉美たち。

 そこには二〇匹ほどの犬がゲージに入れられており、彼女たちを見て大声で吠えたり、まったく無反応だったりと、様々な反応が返ってくる。

 そんな犬たちを、緊張した面持ちの早霧と玉美が、写真を見ながら一匹ずつ念入りに確認していく。

 すると二人はあっけなく、写真とまったく同じ柄をした子犬を発見するのだった。

 早霧は玉美と抱き合って大喜びしたあと、すぐに飼い主に電話し確認しに来るよう伝え、捜索依頼を無事達成了する。そして、案内してくれた男性職員に何度もお礼を言ったあと、次はボス猫の仲間を探すため猫の保護エリアへと案内してもらった。

 そこでは、五〇ほどのゲージが並んでおり、子供から大人まで様々な猫が保護されていた。

 玉美は早速、抱きかかえたボス猫を一匹ずつ面会させ、その反応を確認していく。

 しかしボス猫の反応が無いまま面会が続き、ついに残り数ゲージを残すのみとなった。

 もうここにはいないのかも……と皆が諦めかけたそのとき、突如ボス猫が玉美の腕から飛び降り、あるゲージの前で『にゃあ、にゃあ』と泣き始めた。

そして中にいる子猫と柵越しに顔をすり合わせるのだった。

「も、もしかして、この子かにゃ?!」

 ボスが『そうだにゃ』と答えるの聞いて、再び大喜びする玉美と早霧。

 同時にアレスとテミスも握手をして喜びを分かち合うのだった。


 そして玉美は、センター職員にその子猫の引き取りを願いでる。

「すみません! 探していたのは、この子です」

「そうでしたかぁ。見つかって本当によかったです」

「この子を連れて帰りたいので、手続きをお願いします」

 そう言って、譲渡を受けるための条件が書かれた用紙を確認する二人。

 しかし玉美はすぐに、一点だけ条件が合わないことに気づいた。

「あの、ここに二〇歳以上って書いてあるんですけど、親を連れてこないと駄目ですか?」

「そうですねぇ。未成年だけでは受付はできないので――あれ? 失礼ですが、そちらのお姉さんも未成年ですか?」

 そう言ってテミスに声をかけるセンター職員。

 テミスは険しい表情で五秒ほど沈黙したあと、撮影していたスマホをアレスに渡す。

 そしてカメラ前に笑顔で登場し、職員に応対するのだった。


「そうでしたわね。わたくしは二〇歳を超えておりますので問題ございません。わたくしが譲渡の手続きをいたしますわ」

 すると突然のテミス再登場に、ライブ配信の視聴者は祭り状態となるのだった。


『おおおお! あのときのお姉さんだ!』

『ええ? ずっとあのお姉さんが撮影してたの?!』

『やっぱ、綺麗だわぁ』

『また赤ジャージ着てるし! ギャップ萌え!』

『銀髪お姉さん、きたぁぁぁぁぁぁぁ!』


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 無事に子犬と子猫の捜索を完了し、その日のライブ配信も終了となる。

 最初は多くの視聴者が、くだらないと思いながらも観ていたこのチャンネル。

 しかし、その信憑性のある猫とのやり取りや捜索活動を観るにつれ『もしかして、にゃん玉JKは本当に猫と会話できるのかも』という思いに変わり始める。

 そして彼女たちの噂が一気に全国へと拡散されると同時に、犬や猫の捜索願いメールが、にゃん玉JKチャンネルに殺到するのであった。

 その後アレスたちは、依頼の中から近場のものをピックアップしては捜索企画を数回ライブ配信する。結果その配信は国内で大ヒットとなり、一か月ほど経過したときにはチャンネル登録者数も五〇万人を超え、幸せカウンターも十万を突破していた。


 そんな結果に大喜びするアレスたち。

 しかしその喜びも束の間、彼らの表情が一変する事態が起ってしまう。

 それは、とある週刊誌が一つのニュースをスクープしたことにあった。

 日本中に激震を走らせたその見出し。

 そこにはアレスたちがよく知る少女の名があったのだ。


《夏井青空が行方不明! 失踪それとも誘拐か?! 一か月現場に姿を見せず!》

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