第2話

「あの……。失礼を承知で申し上げますが。あなたはバカなのですか?」

「い、いや、面目ない……」

 そこは天界。

正座するアレスの目の前には、パジャマのような服を着て腕組みしたテミスが鬼の形相で仁王立ちしている。

「わたくし、お伝えしておりませんでしたか? いいや、確かにお伝えしましたわ! 死んだら駄目ですよって! 死亡したらリセットですよって!」

「そ、そうだったかなぁ? 言っていなかったような気もするが……」

「申しました! それにしても戻るのが早すぎるでしょう! 転移してからまだ一時間も経っておりませんよ。あの世界に転移して、こんなに早く死んだ神はおりませんわ!」

「し、しかし、あれは不可抗力というか……。それに、車というものがあれほど強いとは知らなかったし……」

「わたくし、アレス様を送り出して、やっと今日の予定が全て終わって今から気持ちよく寝るところだったのです。まさかこんなに早く戻られるとは思ってませんでしたし!」

「し、しかしだな。あの子を助けたらカウンターが上がるかと思ってだな――」

「カウンター上げても、死んだらゼロやがな!」

「はい、そうでした……」


「承知しました! とりあえず、今回の失態は恐ろしすぎてゼウス様にもご報告できませんので見なかったことにいたしましょう」

「そ、それは助かるよ。優しいな」

「こ、今回だけですわ! 今回に限り特別サービスです! もう一度、同じ場所に転移していただきますから。ただぁし! 予知魔法は一切使用禁止です。同じ失敗をされないよう、くれぐれもお願いいたします!」

「わ、わかった。気をつけるよ。次は任せてくれ!」

「それじゃあ、ほい!」

 テミスは、呆れた様子で片手間に転移魔法を発動する。

 そしてアレスを再び日本へ送るのだった。

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