11話 ダブルブッキング
昼になった。
午前の授業はあまり得意ではない科目が続いたので、普段より疲れが溜まっているのを感じている。
朝食は適当に栄養ドリンク1本で済ませてきたので、空腹度合いもそろそろ限界だ。
思いっきり伸びをして体のコリをほぐしてからリュックに手を突っ込み、買ってきたおにぎりを手に取って机に置いた。
ふと隣を見ると、相変わらず瑠璃を昼食に誘う人がちらほらいたが、どうやら断りを入れている様子がうかがえた。
今日は一人で食べたい気分なのだろうかと、さりげなく様子を眺めていると、周りに人がいなくなった瞬間、急に瑠璃がこちらを向いた。
「朝人くん、お昼、空いてるかしら」
「えっ? ま、まあ特に予定はないけれど」
「そ、それじゃあ、私と一緒にどう?」
「い、いいの?」
「よくなかったら誘わないでしょう。その、朝人くんが嫌じゃなければ、だけど」
「もちろん、俺でよければ!」
自分でも気持ちが悪いくらいテンションが上がっているのを感じながら、当然オッケーと返事をする。
まさか瑠璃のほうからお昼に誘われるとは思っていなかったので、不意を打たれた気分だ。
他の仲がいいであろう人たちの誘いを断ってまで自分と一緒に食べようというのだ。
単なる気まぐれかもしれないけれども、男としては特別な想像をしてしまうのは仕方がないだろう。
「なら少し場所を変えましょ。屋上……は人が多いし、中庭も論外。となるとやっぱりあそこかしら」
「えっと、どこに行くの?」
「案内するから、ついてきて」
立ち上がり、歩き出した瑠璃についていく。
その様子を見ていたクラスメートから突き刺すような視線が襲い掛かってくるが、気づかないふりをしたまま扉を開けた。
そしてしばらく歩いていると、見知った顔の美少女がこちらに気づいて小走りで近づいてきた。
「赤嶺くん! ちょうどよかった! 今から行こうと思ってたんだけど……って、あれ? もしかしてお昼天堂さんと一緒?」
「野々咲さん、もしかしてまた誘ってくれるつもりだったの?」
「うん! さっきメッセージ送ったんだけど、まだ見てなかった?」
「えっ、メッセージって……あぁ、ごめん! 気づかなかった……」
慌ててスマホを開いて通知をチェックすると、確かに希海からお誘いのメッセージが来ていた。
彼女の手には前回よりもさらに大きな弁当箱がある。どう考えても一人用には見えなかった。
「そうだったの。ごめんなさい、野々咲さん。そうとは知らず朝人くんのこと、誘っちゃったみたい」
「ううん! 全然大丈夫! というか、赤嶺くんって天堂さんと凄く仲良かったんだね。知らなかった!」
「べ、別にすごくってほどじゃないけど……まだ」
「そうなの? 下の名前で呼んでたからてっきりもうそういう関係なのかと思っちゃった! でもさすがに転校して数日でそこまではいかないかー」
どこか少しほっとした様子でそんなことをいう希海だが、瑠璃は何かを想像しているのか若干頬が赤い。
「うーん、でもちょっと困ったなぁ。朝人くん用にちょっと多めに作ってきちゃったんだけど、この量を一人で食べちゃうと午後眠くなっちゃいそうだなぁ……」
「食べられはするんだね……」
困った顔をしながら弁当箱を軽くなでる希海だが、心配するところがその後眠くなるかどうかなあたり、彼女の胃袋の容量に驚かされるばかりだ。
瑠璃も少し驚いている様子で、彼女のおなかと胸に交互に視線を動かしている。
よくよく考えてみれば、大食いの割に彼女の体はだいぶ細い。
その栄養はやはり上のほうへ行っているのだろうかと邪な思考を走らせていると、
「あっ、そうだ! 良ければ赤嶺くんと天堂さんも一緒に食べない?」
「えっと、うーん……俺はいいけど、瑠璃さんはどう?」
「野々咲さんが誘おうとしていたのは朝人くんだけでしょう? そこに私がお邪魔しちゃうのは悪いわ」
「えーっ、そんなの全然気にしなくていいのに! それとも、二人っきりのほうがよかった? それなら私は退散するけど」
「か、
「やった! ありがとう! 実は私、天堂さんともお話してみたかったんだー!」
「そ、そう。それなら良かったわ」
正直なところ瑠璃と二人きりになりたかったと言う思いもあるけれど、同時に希海による質の高い食事を堪能できると言う期待も隠しきれない朝人。
誘ってくれるのは今回限りということはおそらくないと思うので、この先二人きりでお昼を食べる機会は訪れるだろう。
そのような淡い期待を抱きつつ、今は美少女二人との食事を楽しみにすることにした。
疎遠になっていた地味過ぎる親友が、イメチェンして超絶美少女になっていた あかね @akanenovel1
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