第9話 朝食のメニューは、トーストとベーコンエッグ
昨夜、寝ようと思ったら電話がかかってきた。見たことのない番号だが、海外発信というわけでもない。とってみる。
「あ、巧くん? 元気してた?」未来母だ。
未来、あいつ俺の電話番号を教えてやがったのか。
「ぼちぼちです」
「なら上々ね」
「えーとどうしたんですか?」
未来に聞こえないようにボソボソと話す。
「いま、みーちゃんそこにいるんでしょ?」
一瞬の判断をする。だが嘘はより疑念を生むと考えて素直に応えた。
「います」
「だよね〜あの子、お泊まりするお友だちなんていないのに、飛び出していって心配してたの。でも巧くんのところなら安心だわ」
「かってくれるのは嬉しいっすけど、俺も男なんで」
「あ、そういうこと? それは心配してないわ。ゴムだけつけてくれれば」
あっさり許可が出てしまった。
微妙な沈黙。
「私、変かな? 好きな男の子のところにお泊まりしに行ったら発生するイベントじゃないかしら?」
「そうすっか。わかりました」
「みーちゃん初めてだからリードしてあげてね!」
そう言って電話は切れた。やれやれ。
◆
巧が7時に起きると未来も起きた。
「大丈夫か? 天気痛だっけ?」
「はい。巧様と寝たので治りました」
それはよく分からないがそんなものなのだろう。
「俺はこれからランニングするが、お前はどうする?」
「下着も乾いたと思うので、ご一緒します。軽くでお願いしますね」
「じゃー3キロくらいで」
2人は呼吸正しくあっという間に3キロ完走した。2人にとっては本当に大したことないのだ。朝飯前。
それから2人は順番にシャワーを浴びたが、未来の下着がチラチラ見える。
「なあシャワー浴びたら下着どうにかしてくれ。てかまたノーブラでランニングしたのか?」
「いえ、代わりの下着も持ってきてますので」
なんでだよ? と思ったが、納得する。本気だったのだ。
未来と巧はゆったりと朝食をとっていた。
「はちみつ、とっていただけますか?」
「おお」
朝食のメニューは、トーストとベーコンエッグ、ヨーグルトだ。巧が作ったが未来は文句一つ言わなかった。実家ではもっとしっかりしたものが出るだろうに……。パンだってスーパーで安売りしていたものだ。
「とっても美味しいですね」
「そうか? ごくごく普通だと思うが……」
「言いにくいのですが……」
「そうだな気配がする」
「とっとと片付けてまた続きが食べたいです」
「いくか」
◆
未来と巧が到着すると、悠は既にいた。雨が降っている。
「大丈夫。なんでこんな朝っぱらから一緒なのかなんて無粋なこと言わないから」悠が続ける。
「こいつかなり厄介だよ」
見てみるとビー玉を巨大にしたような敵だ。割れそうなものだが……。
「動きが遅いから矢の的にしたんだけど、貫通しない。未来や巧の最大出力でも難しいんじゃないかな。
未来がイヤーマフとメガネを置いた。
「なぁ、それ前から思ってたんだが、外すとよけい眩しかったりうるさかったりしないのか?」
「確かにそうですが、外した方が感覚が研ぎ澄まされます」
「「領域侵犯」」
「全力で行くぜ〜、おら!!」
殴りかかる。が、微動だにしない。ゆっくりでも動くということは圧死されかねない。
未来もブレードで切りつけると、ヒールの踵が折れた。力に耐え切れなかったのだろう。とっさにヒールを脱ぎ捨てた。
「未来どうだ? こっちは傷すらつけられねえ」
「同じくです」
「どうしましょう……」
と言ったそばから近くのコンビニに玉がぶつかりガラス窓が散乱する。裸足の未来にはきつい状態だ。
「靴、あの靴でも履いた方がいいんじゃないか?」
未来が歩いた跡に血がこびりついている。さぞ痛いだろう。動くたびに血がつく。
「おい!」
「うるさい! 私の覚悟を舐めないでください!」
「悪かった。代わりに俺がお前の支えになる。最大級のやつを打ち込め」
「私たちならできます。なんと言っても寝食を共にしましたから!」
巨大な玉を前に、未来とそれを支えるように巧が支えた
ゆっくりとこちらに転がってくる。
「行きます。スコタディクシフォス ティス フロヤス」
未来の背中を支えていたが、すごい反動だった。
敵はパカリと二つに割れて消滅した。
「今回の技には「暗黒」の意味を入れてみました。かっこいいでしょう?」
「それ前から思ってたんだが、名前は適当なのか?」
「そうですね〜ノリで決めてます」
「ならもうちょっと言いやすいのにしろよ」
「考えてます……ところで、さっきは強がり言ってすみません。足、痛くて」
「こんな早朝だからな、あいつのところ行くか」
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