5. 変わったのは君の方
*5-1
――そしたらさ、私たち、付き合っちゃおうか
優しいけど気が弱くて、本当はかわいいけど目立つ方じゃなくて、何より私が傷付けたはずの幼なじみの言葉に、私は戸惑っている。
*
高校生は、良くも悪くも中学生から少しだけ大人に近づいた人たちなんだってことを、私は身をもって知った。
夏休みまでは「仲良し3人」だった、
芙美香の好きな人と私が、夏祭りで一緒に歩いてたコトで(これは偶然で、やましいことはホントに何もない!)、友情関係はばらばらに砕け散って。
芙美香に一方的に責められて、それからクラスの中で私が孤立して。
いじめ寸前の空気に、数週間はさらされて。
その空気が、あっさり元に戻った。
きっかけは、幼なじみの
基本的に、優等生気質で加害者にはなりたくない「田舎の進学校」の子たち。大人に叱られないギリギリのラインで、ゲーム感覚で私をハブることを楽しんでた彼ら。
未玲がはっきりと、担任の目の前で「悪いことだ」と告げたことで、このまま続けたらヤバイと気付いたらしい。
さすが優等生くんたち。私は皮肉交じりに心の中でつぶやく。中学生みたいに、闇雲に突っ込むことはしないってわけか。
とにかく、少しずつではあったけれど、私の周りにも友達が戻ってきた。
さすがに紗菜と芙美香とは、元どおりには戻れないだろう。それは仕方ないって思ってる。恋愛って、どうしようもなく人の心をかき乱すものだし。なんてね。
私が孤立してた時、まずいんじゃないかって感じてた子たち。はっきりモノを言う性質の芙美香から、責められたコトのある子たち。
そんな子たちが、多少の後ろめたさはあったにしても、私に親切に接してくれるようになった。あからさまな気づかいでも、無視されるよりはずっとマシ。私は彼女たちの好意を、言葉通りに受け取ることにした。
それから――未玲だ。
未玲ははっきりと、みんなにも分かるように、私に話しかけるようになっていた。
文芸部の部室。未玲に連れ出されて、二人だけになって、私が大泣きした放課後の時間。あの日から何となく、私も文芸部に出入りするようになった。
ゆるい部活だし、掛け持ちでも何でもいいよって部長さんも言ってくれてるし。さすがに自分で何か書くトコまでは行ってないけど、未玲の書いた小説を読んだりして。
塾がない日には、そんな風にして過ごす時間が増えた。部活の帰りは自然に、未玲と一緒になることが多くなって――。
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