3. 炭酸水
*3-1
折り重なる様な高い山々に囲まれ、夏は涼しく冬はその分やたらと寒い。
私の生まれた小さな町、結田。
小学生まで、私はこの町が別に嫌いじゃなかった。
ていうか、世界は自分が住んでるこの町の中の、家と小学校までの間くらいがほぼ全部で、その外側と自分のいるこの町とを、比べたりすることがなかった。
町の小さな小学校を卒業し、中学校に入ってから。
あれは……、悪夢と呼んでいいと思う。たった3クラスしかない私たちの学年は、2年になってから荒れに荒れた。
犯罪との区別がつかないくらいの、いじめや暴力、それに隠れた足の引っ張り合い。日常的なトラブル。毎日、誰かが誰かの敵になって傷つけ合う。
反抗期だとか、大人が憎いとか、そういう空気にどっぷりと浸かることができた子たちはいい。勝手にやってればいいんだから。
私たちみたいな普通の子が、一番に割を食った。本当にあれはひどい2年間だった。
今いる場所から抜け出したい――。それは中学生の私にとって、切実な思いだった。
どのクラスも荒れまくったけど、私のいた1組が一番ひどかった。担任がそういう状態を直そうとしないばかりか、声が大きいやっかいな連中の方ばっかり向いてて、結果的にいじめに荷担する様なタイプだったから。
私は、いじめとか、トラブルとかのターゲットになったことはない。息を詰めるようにして、綱渡りの毎日を過ごしていた。
幼なじみで、中学でも一緒のクラスになった古萩未玲。
最初は一緒になれて嬉しいなんて言い合ってたけど、暴風が吹き荒れる毎日に私たちは引きちぎられる様に――。
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