第15話 ワクワク! 仲間探し!

 惑星クジラはまさしく死体の星だった。

 地球クラスの巨大なモモモ生命体の亡骸が、自重によって潰れ、球をなしている。


 骨が剥き出しになった腐肉の地表。眼帯を外すと淡い虹色モモモが情景を彩っていた。不気味な景色だ。


 船はつつがなく着陸に成功した。なぜかUFOを自分の手足のように操作することができるのだ。

 おそらく船に内包されたタコワサモモモの影響だろう。

 彼の残滓を感じてセンチになる。


 僕の生存に呼吸が必要ないことは検証済みだ。よって宇宙服を着ることなく船外に出る。


 重力は体感、地球の三分の一ほど軽い。腐肉から発生したガスの類で薄い大気こそあるが、気候は安定している。


 太陽の役割をなす恒星は遥か彼方にあって、惑星クジラは常に黄昏時のようなうす暗さだが、モモモが発光して見えるので問題ない。


 地球外惑星。しかも太陽系の外にある場所へやってきたと言うのに、これといった感動はなかった。


 宇宙人、ブラックホール、ミトコンドリア・アダム。驚愕の連続で感覚が麻痺してしまったのかも。


 僕が宇宙飛行士なら現地調査に乗り出すところだが、今はなによりも『仲間探し』が優先だ。


「とはいえ、そう簡単にはいかんよな」


 クジラ星人の人口密度はかなり低いことが予想される。

 絶滅が危惧されるほどの個体数かつ、自殺行為の最中である者たちは他者との関わりを絶っているだろうからだ。集団を形成している割合は少ない。


 地理の判断も難しいところだ。本来人が行くような場所でない渓谷や骨山の頂上。そんなところにこそ、自殺者は赴いているかもしれない。


 例えば夜だ。

 この星は恒星の公転周期と、惑星の自転周期が同じため、常に昼の場所と夜の場所がある。地球と月のような関係性なわけだが、いくらクジラ星人が食や呼吸の必要がない生態とはいえ、真っ暗闇に生息しているとは考えずらい。


 逆にいえば、そんな場所にこそ自殺者がいるのかもしれない。判断の難しいところだ。


 捜索は難航することが予想された。


「そもそも、自殺するようなやつが仲間になってくれるとは思えないな」


 単純に断られそうだ。

 

 そんなことをちんたら考えているまに、一週間がすぎた。

 これは嬉しい誤算だが、捜索活動はスムーズに進行できた。

 

 船を拠点になだらかな地形を見つけては、地表におりて想像した自転車や車で悠々と星を探索した。

 まずは簡単なところから攻めるのが実に僕らしい。


 この作戦が功を奏した。

 平野の緩やかな丘上。


 僕はタコワサ以来初めての、クジラ星人に接触した——。

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