聞き耳
最近吉乃おじさんは、頻繁に家にやってくるようになった。
そして…どうやらコソコソと、父とお金の話をしているみたいだ。
ドアの向こうからそっと聞き耳をたてた。
静かにバレないようにドアにお耳をピトリ。
うん、いい感じにドアにフィットいたしました。
すると、すぐさま母さんに見つかり強制退去…。
せっかくフィットしたのに…
どうすりゃいいんだ…。
このせっかくのフィット感…じゃなくて…さ…
…
今までこんなに幸せ家族でやってきたというのに…。
吉乃おじさんのために家族がバラバラになって崩れていってしまうじゃないか‼︎
どうしようもできず、オレは母に促されるまま、テンのいるおもちゃ部屋へと入った。
するとどこからともなく父とおじさんの声が聞こえてきたじゃないか。
?
うちの壁って、そんなに薄かったかな?
不思議に思っていると、なぜか話し声がテンの耳から聞こえてくる。
…
(え?テンって…スピーカー機能とかついてます?)
と、まさかと疑いつつ聞いてみた。
すると…
(はいですの。高性能ですのよ)
って、ニッコリした。
ドキッ
たまにテンは、大人びた表情をしてくるからびっくりする。
(あー…すごー)
スピーカーよりもテンの笑顔に驚きつつも、スピーカーに耳を傾けた。
(なにか…父さんをとめる、いい方法ってないのかなー…)
(ペンをひたすら奪えばサインできませぬよ?)
ヒヒヒと、悪顔するテン。
…
(それじゃ怒られるだけじゃん)
(怒られないように魔法で奪うのです)
…
(うーん…)
それじゃ解決してないんだよなー。
やっぱり…ここは、きちんと話さないとダメなんじゃないかな。
オレは、家族を守りたい‼︎
だから、直接サインしないように父に本音で話してみようって決めたんだ。
吉乃おじさんが帰るなり、オレは父さんに保証人になるの?
と、それとなく聞いた。
すると父は、子どもがおやの会話に口出しするものじゃないよ。と、いい残して席を立ってしまった。
…
母さんは、どう思っているのだろう。
父さんがお風呂に入っているあいだに、そっと聞いてみた。
そしたら母さんは、大丈夫よ。吉乃さんは信用できるから、って賛成のようだった。
…母さん
オレの前世は、散々だったって見せてやりたいくらいだ。
二人の飲んだくれたところをさ…。
あー、どうしよう…。
テンがいうには、契約は一週間後だというじゃないか…。
…
時間がない。
そして…
日に日にテンの様子がおかしいような気がするんだけど…?
なんか、やたらオレにべったり…なんよね?
寝るのも必ず一緒だし…
できるだけそばにいたいって…
(テン、大丈夫。オレがなんとかするからね、安心して。)
(作戦は、ありますの?)
(それは…)
(いい方法がありますのよ?試してみるます?)
…なんか、みるますって…一文字多い気もしないでもないけど…いまは、そんなことを気にしている場合ではない。
オレはもう一度父さんに話をした。
テンの力も借りて。
話だけじゃ納得してもらえないのは、承知なのだ。
だから、テンの出番だ。
一番手っ取り早いのは、飲んだくれた自分たちの姿を映し出すことなんだけど…
それじゃあ、テンの能力を怪しまれてしまう。
なので、夢で現実味を味わっていただくことにしたのだ。
が、うっかり両親が眠りにつく前にテンが寝落ちしてしまった。
…
テンよ…しっかりしておくれよ。
というわけで、次の日はたっぷりと昼寝してもらった。
土曜日だったから、オレが添い寝してやった。
テンの寝顔は、とにかくかわいくて愛おしい。
そんなかわいいテンが寝ながらしょっちゅうオレに抱きついてくるもんだから、オレはめっちゃ罪悪感に見舞われた。
テンって…このまま大きくなったら、かなりモテるだろうなー。
やだなぁ。
テンに彼氏とかマジでありえないわ…。
テン〜‼︎
(なら、兄上様が彼氏になれば良いのです)
⁉︎
(えっ、テン起きてだんだ⁉︎てか、かってに人の心読まないでください)
(はいですの…でも、強い念力みたいなのが伝わってしまって起きてしまいましたの。ちゃんとお昼寝されせてくださいの。)
って怒られてしまった。
されせて?って思ったけど、そこはスルーして、素直に謝って寝かせてあげた。
(ごめん。おやすみ)
テンの頭をナデナデすると、スッと一瞬で寝落ちしたテン。
子どもなんだか、大人なんだかわからないけど、とにかくオレにとって最高にかわいい妹なのでございます。
続く。
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