第3話 襲撃者
「開幕じゃぁぁぁ――ッ!!」
彼の声を聞いて全員が一斉に動き出す。
先陣を切ってレモネードが飛び膝蹴りを繰り出し、数人の男達を巻き込んで倒す。その後ろからオオキャミーと
オオキャミーは
ゆうは軽快な動きで人間の弱点を的確に狙い、倒していく。彼の動きは流れるように滑らかで隙を見せない。
別の男達がアサルトライフルを乱射され、銃弾は
銃弾の嵐が止むと玄花は透かさず両手に握られた無数の手裏剣を投げた。しかし、手裏剣は敵達の間をすり抜け、空高く飛んでいく。
「おい、アイツ下手糞だぞ!! 殺っちまえ!!」
「汝は何故、苦手な
「そこに
ニヤけた男達が再びライフルを構えようとするが、玄花が小さく呟いた。
「A剣、
彼の言葉と共に手裏剣が空中で分裂し、様々な形に変化して戻ってくる。急加速した手裏剣は軌道を変え、まるで荒れ狂う雨のように男達に降り注いでその肉体を貫通した。
血が飛び散るが玄花と双葉は気にせず次々と襲い掛かる敵達を容赦なく倒し続ける。一方で、敵を吹っ飛ばしながら猛進してきたのは
彼は勢いを保ったままレモネードの肩を踏み台にして前方へと飛び出し、肩幅の広い白スーツを着た男に木刀で一撃を叩き込む。
「随分やんちゃなクソ餓鬼が居たことだな」
「いちゃ悪りぃかよ、オッサン!!」
星七の一撃は男に軽々とガードされたが、空中で身を捩り宙返りするとその
「何やってんだ
隣で腕を組んでいた顔に傷のある豹柄のスーツを着た強面の男が怒鳴りながら牛頭と呼ばれた白スーツ男の横腹を殴る。
「まぁ良い、テメェらなんざコレでも食らっとけ!!」
豹柄の男がスーツの懐から取り出した
「クソッ!」
「終わりだな」
いきなりの攻撃に体勢を崩してしまった星七に白スーツの男が拳を振り
「助かったぜ、レモネード!」
「オメェは前に出すぎなんだよ」
無計画に突っ込む星七の頭をガツンと殴るレモネード。
「無茶すんな、バカ!」
「悪かったって……」
呆れた声を上げるがあの二人組を倒せば戦力に大きな支障が出ると見込んでいた。レモネードは星七に白スーツの男を任せる決意を固める。
「俺達、やっぱ
「誰が好敵手だよ、ぜってぇヤダわ」
レモネードはそんな嫌味を言い合いながらも二人の間には自然な笑みが零れる。すると星七が突き出した拳に彼も拳を合わせ、互いに力強く走り出す。
星七は再び白スーツの男に猛ラッシュで木刀を振り回す。しかし、男はすべての攻撃を手刀で弾き返し、最後には力強い一撃で星七を弾き飛ばす。がら空きとなった星七に男は即座に拳を突き出してくる。
星七は防御の体勢を取り、木刀で男の拳の衝撃を受け止めるがその衝撃で木刀は粉々に砕け散ってしまう。
「これでお前の武器は無い。 いい加減に死――」
だが、白スーツの男が言い切る前に突如全身に電撃のような痛みが走った。驚いて下を向くと腹部に何かが刺さっているのが見えた。それは星七自身が持つガラスのような刃物だった。
星七の木刀に忍ばされていたのは特殊防弾ガラスを何枚も重ねて作られた隠し武器だった。
「ゴプッ……! クソ餓鬼如きが……」
白スーツの男は苦しそうに吐き捨てたが星七は冷静な笑みを浮かべたままだった。
「わりぃなオッサン、俺にはもう目標にしてる奴がいんだよ。 だから――!」
星七が両足を踏みしめ、透明な刃を天高く振り上げると同時に男の腹部から肩までを一気に切断した。そのまま男は倒れ込んで過呼吸のように荒い息をついていたが、星七は彼を殺していないことに安堵し胸を撫で下ろした。
あぶねー、学生で人殺しなんてとんでもねぇかんな……
ふと横目でレモネードの方を見ると、豹柄スーツの男が焦りながら回転式拳銃を連続で放っていた。しかし、音速の弾丸を軽々と避けたレモネードは瞬く間に男の目の前に現れると強烈なアッパーを炸裂させた。その瞬間、男の顎が砕ける音が響き渡り、その場の全員が一瞬にして凍りついた。
地面に倒れ込む音が校庭に響き渡り、ボスが倒されたことを悟った男達は慌てて車へ撤退しようとする。しかし、緋炎組のメンバー達はその動きを見逃すことなく、全員を数分で全滅させてしまった。
「今回はウチの方が多く倒したな」
「いいえ、私の方が僅かに上です」
オオキャミーが得意げに言えば、姫百合が反論する。二人は口喧嘩を始め、やがてお互いの頬をつねり合う事態にゆうが慌てて二人を止めに入った。
一方、玄花と双葉は疲れ切った表情でボロボロの服装のまま校舎へと戻って行った。レモネードもその後を追おうとしたが、近くでまだ敵が生き残っていないか確認していた星七に話しかけた。
「なぁオメェってさ、剣術かなんか出来たりすんのか?」
「いや、全く出来ねぇ。 ただカッコいいと思って使ってただけだから」
星七は笑いながら答え、手に持っていた透明な刃を自ら破壊してその破片を男達の近くにばら撒いた。
「それで良いのか?」
「今度は本当の刀を握りたいからな」
レモネードが問いかけると星七は自信満々に答えた。
二人は何気ない会話を楽しんだ後、緋炎組のオオキャミー達に別れを告げて校舎へと戻って行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
狂歌は薄暗い地下駐車場で足音を響かせながらゆっくりと歩いていた。片手にはスマホを握りしめ、着信音が静寂を破ると狂歌はそのまま耳に当てて通話を始める。
「もしもし、僕です」
淡々とした声で言うと、スマホからは穏やかで透き通った男の声が応じた。
『やぁ狂歌君、君の計画は順調かい?』
狂歌はわずかに目を細めながら、点滅する電灯の下で立ち止まり、言葉を続けた。
「そうですね、順調です。 それもこれも貴方のお陰ですよ」
狂歌は軽く前髪をかき上げながら呟く。すると、電話越しの男の声が急に低くなった。
『で、最初に消すのは誰なんだい?』
狂歌は一瞬の間を置き、冷静に答えた。
「レモネードですかね。 彼は戦闘経験が無い割には成長速度が異常ですから。 このことはしゃしゃけにも伝えるつもりです」
『期待してるよ、君達には』
男の声は短く締めくくり、通話は静かに切れた。狂歌はスマホを見つめ、淡々とした表情のまま再び歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
別の場所では列車が東京駅に停車すると、プラットフォームに立っていたあばにらが隣でinゼリーを飲んでいる
「芽乃さん、今回の任務内容覚えてる?」
あばにらは目元の髪を分けながらじっと赤井を見つめた。
赤井は黒髪のポニーテールを軽く揺らしながら背中の黒いダブルガンケースをちらりと見て、自信満々に答えた。
「勿論! それに、もし忘れても柊さんがこれを使って指示してくれるからね」
そう言いながら片耳に付けた小型通信機をトントンと軽く触った。
あばにらも軽く頷くと二人は列車内に乗り込み、空いている席へと座った。その瞬間、小型通信機から
『いいかい二人共、今回の任務は神奈川県まで向かってそこにある
狛の冷静な声が通信機越しに響いた。その声に軽く微笑みながら赤井は返した。
『あばにらっちと芽乃っちは強いから心配無いと思うけど、気は抜かないで』
「流石だね柊さん、仕事が早い」
その会話の最中列車が動き出し、最初の踏切を通過した瞬間だった。突然、赤井が瞬時に反応し、あばにらの頭を引き下げた。
次の瞬間、轟音と共に天井からチェンソーの刃が突き出てきた。乗客達は悲鳴を上げながら前後の車両へと逃げ出していく。
赤井とあばにらはすぐにその場から後退し、警戒を強めた。天井が八つ裂きに斬られると二人の人物が姿を現し、車両内に降り立った。
「お前らが懸賞額200億以上の首か?」
義肢の片腕からチェンソーを生やした男が挑発するように言い放った。その隣に立つニット帽を深く被った男は視線から強烈な殺気を放っていた。
「もういいよ千さん、さっさと殺っちゃお……」
ニット帽の男が静かに呟くと袖から鎖に繋がれたクナイを取り出し、瞬時にあばにらへと投げ放つ。赤井が反応しようとするもあばにらは冷静にそのクナイを裏拳で払った。
「それがユー達の挨拶か?」
あばにらはダルそうに構えを取りながらも軽い笑みを浮かべて挑発し返すのだった。
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