動画配信と母子家庭親子

第33話 さやりんとのコラボ配信

メイド服を着たドラゴン娘と神々しい銀髪の美少女は厳かに、しかしポップでライトな感じも忘れずにスマホの録画ボタンをタップした。


特別配信:「般若心経×癒し音楽ライブ」の夜


1. 配信開始前:試練と準備のひととき


配信の数時間前、宇佐美家のリビングは静寂と混沌が交錯していた。ミロクは背筋を正し、落ち着いた表情で瞑想にふける。般若心経を心の中で唱え、心を整えていた。しかし、その横ではさやりんが三味線の音合わせに奮闘中。


「ポン…ギギギ…」と、妙な音が響くたび、さやりんは泣きそうな顔で叫ぶ。「ごめんなさいですぅ~!」


ミロクは一度深呼吸し、自らに言い聞かせるように呟く。「わらわも試練の最中なのじゃ。そなたの自然体こそ、この配信の要…。すべて受け入れる覚悟で臨むまで。」


その言葉が空間に静かに溶け込む頃、さやりんの調弦はやっと安定し始めた。


2. 配信開始:癒しと笑いの予感


夜8時、特別配信が始まった。画面に映るのは、正座して静かに一礼するミロクと、その後ろで控えめに座るさやりん。

ミロクが穏やかに口を開く。


「今宵は特別な夜。そなたたちと癒しのひとときを共にできること、わらわは心より感謝しておる。音楽は心を清め、言葉は魂を潤す。この調和をどうか楽しんでくれ。」


コメント欄が瞬く間に賑わう。

• 「さやりん三味線!期待してます!」

• 「ミロク様~!今日も美しい!」

• 「ドラゴン乳は出ますか?」


最後のコメントにミロクの表情が一瞬凍る。「冗談はほどほどに」と冷静に返しつつ、優雅な微笑みを浮かべる。後ろのさやりんが「えへへ~」と照れ笑いを浮かべながら、三味線を奏で始めたが…。

再び、弦が奇妙な音を奏でる。


3. インタラクティブな展開:視聴者参加型の般若心経解説


配信中盤、ミロクは視聴者に問いかける。「そなたたちが心に響く般若心経の一節を教えてくれ。それをわらわが唱え、その意味を語ろう。」


コメント欄は次々に投稿で埋め尽くされる。

• 「摩訶般若波羅蜜多!」

• 「羯諦羯諦、波羅羯諦!」

• 「無苦集滅道!」


ミロクはそれぞれの一節を丁寧に唱え、解説していく。その柔らかな声に合わせてさやりんが三味線で伴奏する…はずが、突然「ポンッ!」と弦が切れる音が響く。


「ごめんなさいですぅ!」と慌てふためくさやりんを、ミロクは軽く目を閉じて制する。「落ち着け、それもまた自然体じゃ。」


その場を温かく収めるミロクの一言に、コメント欄は大盛り上がり。

• 「ミロク様、心が広すぎる!」

• 「さやりんの天然ぷり、最高!」


さやりんは弦の代わりに急ごしらえの拍子木を取り出し、リズムを刻み始める。この意外な工夫に「それでいいの?」と驚く視聴者も多かったが、音楽と般若心経の調和は不思議と崩れなかった。


4. クライマックス:笑いの嵐と深まる一体感


終盤、さやりんが思いついたように「ドラゴン乳は般若心経に効きますか?」とコメント欄に書き込む。視聴者たちの笑いの渦が一瞬で画面を埋め尽くす。


ミロクは目を丸くし、低い声で叫ぶ。「そなた、本当に止めなさい!」

しかしその真剣な姿が逆にツボにはまった視聴者たちは、次々に「草」を投稿。配信は笑いと癒しの絶妙な空気で包まれた。


5. 異世界の記憶:謎めいた過去の告白


配信の締めくくりに、ミロクが静かに語り始める。「そなたたちに一つだけ告白しよう。わらわの記憶には、異世界のものが多くある。そこでは、言葉が力を持ち、祈りが現実を変えるほどの力を持っておった。」


視聴者は一気に盛り上がる。

• 「もっと聞きたい!」

• 「異世界トーク配信をぜひ!」

• 「ドラゴン乳も異世界アイテムですか?」


ミロクは微笑みながら、「それはまた、次の機会にな」と含みを持たせて締めくくる。


6. 配信終了後:癒しと充実の余韻


配信を終え、ミロクは穏やかな表情で深呼吸する。「今宵の配信、わらわも癒されたのう。」

さやりんが片付けをしながら、不安げに尋ねる。「視聴者の皆さん、楽しんでくれたでしょうか…?」


ミロクは優しくさやりんの頭を撫で、「そなたの自然体が癒しそのものじゃから、心配することはない。」と語りかける。その言葉に、さやりんは涙を浮かべながら微笑む。



ミロクがさやりんと共演すると決めたのは、数日前のことだった。


さやりんの鼻歌事件と新たな展開


1. 宇佐美家の和室とミロクの日常


畳の香りが漂う宇佐美家の和室。12畳の広々とした空間は、6畳の狭い住処に慣れていたミロクには少々広すぎる。それでも、ここが今の居場所であり、視聴者たちにはミロクの配信拠点としてすっかり馴染み深い場所だった。


その日も、ミロクは「迷える子羊たち」に向けた説法配信を行っていた。般若心経を唱える彼女の落ち着いた声が視聴者の心を清め、コメント欄はいつものように賑わっている。


裏方に徹している助手の「さやりん」こと赤城彩華も、相変わらずドジっ子ぶりを発揮。さやりんの天然な振る舞いが、意図せず配信にユーモアを添えていた。


2. 鼻歌事件と配信中の大騒ぎ


説法が佳境に差し掛かった頃、和室の襖が音もなく開き、さやりんがひょっこり顔を出した。

「ミロクちゃーん、失礼しまーすぅ♪ふんふん~♪」


何を勘違いしたのか、彼女は鼻歌を歌いながら和室に入ってきた。配信中とは知らず、無邪気な声で部屋を横切るその姿に、視聴者たちは大興奮。

• 「えっ、今の声なに?」

• 「誰だ、この緑の女の子!」

• 「可愛すぎて死ぬ」


コメント欄が一気に加速する中、さやりんはようやく配信中であることに気づいた。顔を真っ赤にして叫ぶ。

「あっ、ごめんなさいですぅ~!」


さらに慌てて襖に向かおうとした瞬間、つまずいて尻もちをつく。これにより、コメント欄は大爆発。

• 「パンツ見えそうだった…いや見えた?」

• 「たまらん!さやりんもっと出して!」


ミロクは思わず額を押さえ、「そなた、本当に無意識の破壊力が恐ろしいな…」と溜息をつく。とはいえ、視聴者の熱狂ぶりを見て、ミロクは複雑な気持ちを抱え始める。


3. トレンド入りとミロクの悩み


配信が終わると、「緑の女の子」が話題となり、動画配信プラットフォーム「My Tube」だけでなく掲示板「y」でもトレンド入りを果たす。「天然ドジっ子キャラ・さやりん」に注目が集まる中、ミロクは悩ましげな顔で和室に座り込んでいた。


片付けをしながら鼻歌を再開するさやりんに向かって、意を決したように口を開く。

「さやりんよ、そなたのことをもっと配信に出そうかと思ってな。」


突然の提案に、さやりんの目が輝く。

「本当に!? 私、がんばりますぅ!」


しかし、ミロクは厳しい口調で続ける。

「だがな、またパンツでも見せたら、わらわのチャンネルが垢BANになる。今回で五度目じゃぞ!」


無邪気に「えへへ~」と笑うさやりんを見て、ミロクは深い溜息をついた。


4. 部屋間違い事件と急接近


その夜、さやりんはすっかり浮かれた様子で、自分の部屋に戻ろうとしていた。しかし、間違えてミロクの部屋に入ってしまう。


「あれ?ここって…あっ!ミロクちゃんのお部屋だ!」


ミロクは慌てて振り返る。「そなた、ここはわらわの部屋だぞ!出ていけ!」


しかし、さやりんは気づかずどんどん近づいてくる。「ミロクちゃん、そんなに怖い顔しないでください~」と無邪気に笑いながら、ミロクのそばにしゃがみ込む。その距離がどんどん近づき、ミロクの心臓が跳ね上がる。


「近い近い!わらわの魂は男なのだぞ!」と心の中で叫ぶミロクだが、さやりんの上目遣いに抗えない。


5. シュンとするさやりんと新たな企画


「もしかして…まだドラゴン乳の件、怒ってますか?」とシュンとするさやりん。その様子が可愛らしく、ミロクは思わず笑ってしまう。

「いや、わらわももう気にしておらぬ。お主が補正ブラを持ってきてくれたおかげで、今では問題ないからな。」


この一言で、さやりんの顔が明るくなる。「本当に?よかったですぅ!」


ミロクは本題に入った。

「さやりんよ、お主、うたがうまいよの」


ミロクは、真剣な顔でさやりんを見つめながら続けた。


「しかも、この可愛らしさ。わらわの『ミロクの説法部屋』に出演してはくれんか?」


突然の依頼に、さやりんは目を丸くする。

「えっ、ミロクちゃん……」

「なんじゃ、さやりん。質問ならなんでも受け付けるぞ」


しかし、さやりんは微妙な顔をして言った。

「ミロクの説法部屋って……なんかおしおき部屋っぽくて嫌!」


「な、なんじゃと!?」


「説法部屋」の問題点


ミロクは言葉を失いながら、コメント欄に目を向ける。案の定、不穏なコメントがちらほら混じっていた。

• 「ミロク様、なんで網タイツとか履かないんですか?」

• 「ミロク様なら僕の○○を○○するまで……」


ミロクは深いため息をついた。

「確かに……最近コメント欄が妙な方向に盛り上がることが増えてきたのう。」


すると、さやりんが呆れ顔で言う。

「ミロクちゃん、それはヤバいやつです。名前からして拷問部屋と勘違いされてるんですよ!」


「そうかの?」


さやりんの快諾と危険な予感


ミロクが眉をひそめて考え込んでいると、さやりんが明るい声で言った。

「まぁ、でも!ミロクちゃんのライブ配信、出てもいいですよ❤︎」


「本当か、さやりんよ⁉」


「もちろんです。ただし、さやりんドジっ子なので、その辺は了承済みでお願いします!」


「自覚はあるのじゃな。」


「そりゃあ、ありますよ~!だから、ライブ配信の時だけジャージ履きますね。いつものメイド服だと、また転んでパンツ見えたら即垢BANですから!」


「そ、それは確かに重大じゃな……」ミロクは一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔に戻る。「垢BANだけはもう勘弁じゃ。5回目ともなれば、次は永久追放もありえるからの。」


「そうなんですよ!さやりん、そこだけはちゃんと考えてます!」


胸を張るさやりんを見て、ミロクは少し不安げに彼女を見つめた。


冗談の裏に見えた影


「ところで、さやりんよ。親に捨てられた、とは少々重い発言ではないか?」


さやりんは一瞬固まったが、すぐに笑い飛ばした。

「あ、それは冗談ですから!気にしないでください!」


彼女の声は明るかったが、その目に一瞬影がよぎったのを、ミロクは見逃さなかった。


「さやりんよ、お主、本当に大丈夫なのか?」


静かな問いかけに、さやりんは一瞬戸惑ったが、すぐに微笑む。

「大丈夫です!さやりん、ミロクちゃんの助手になってから毎日楽しいですから!」


彼女の笑顔は明るかったが、ミロクはその裏に隠された何かを感じ取った。それでも深く追及はせず、そっと彼女の頭を撫でる。


「ならばよい。わらわにはお主の助けが必要じゃ。そして、お主にもわらわが必要なのだろう?」


さやりんは照れくさそうに笑いながらも、どこか安心した表情を浮かべた。


新たな挑戦


「さて、それでは次回のライブは『般若心経と癒しの歌スペシャル』とするかの!」


「いいですね!さやりん、張り切っちゃいます!」と目を輝かせるさやりん。


「ただし……転んで垢BANされるのだけは勘弁じゃぞ?」ミロクが念を押すと、さやりんは「気をつけます!」と元気よく答えた。その直後、足元がもつれそうになり、ミロクがすかさずツッコむ。


「そなた、早速危ういではないか!」


さやりんは「えへへ~」と笑って誤魔化す。その無邪気さに、ミロクは思わず肩の力を抜き、ほっと微笑んだ。



こうして、ミロクとさやりんは新たな配信企画に挑むことになった。さやりんの無邪気な天然ぶりとミロクの冷静さが織りなす掛け合いは、視聴者に笑いと癒しを届ける最高のエンターテイメントとなるだろう。


ミロクは確信していた。

「これで視聴者も癒される。そして、わらわたちもまた癒されるであろう。これが真の調和じゃな。」


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