第31話 「さやりんの白く濁ったお茶と小さな誘惑~ドジっ子メイドの甘いミス~」
「妊娠しています。」衝撃的な死刑宣告にも似た事実を知って呆然とする銀髪の少女。とあるボクシング漫画の主人公のようだった。
すると、医師はミロクに追い打ちかける衝撃的な事実をミロクにつきつける。
「宇佐美様のわんちゃん、ポチちゃんが妊娠していますね。おめでとうございます。」
その言葉に、一瞬の静寂が訪れる。
ララ:
(目を丸くしながら)
「……ポチちゃん?って、犬のポチちゃんの話?」
ミロク:
(硬直して小さく呟く)
「……わん……ちゃん……?」
瑠美は「あっ、こう言えばここは動物病院だった。そう言えば、後日ポチの検査結果を聞く話だったな。」
すぐさま、ミロクの顔は赤く染まり、拳を震わせながら立ち上がる。
ミロク:
「待て待て待てぇぇぇ!!そなたら、なぜ普通と動物病院!?わらわがどれだけ動揺したと思うておるのじゃ!!」
(机を叩き、怒りを爆発させる)
「わらわの母乳や寝小便の話は、すべて無意味だったということかぁぁぁ!!」
瑠美とララの反応
ミロクの怒りの爆発を尻目に、瑠美とララは完全に笑いの渦に飲み込まれていた。
瑠美:
(肩を震わせながら笑いを堪えきれず)
「ぷっ……あーははは!!そ、そういうことだったのね……!ミロクちゃん、ごめんね。でもこれは……笑うしかないでしょ!」
(椅子にもたれかかり、涙を拭う)
「ミロクちゃんがポチちゃんと間違えられるなんて、宇佐美家の新しい伝説だわ!」
ララ:
(手を叩きながら爆笑)
「ミロクちゃん、自分で妊娠してるとか思っちゃってたの!?やばいよ、それ、超大事件だよ!礼子お化けの体、恐るべしだね!」
ミロクの怒りと決意
顔を真っ赤にし、恥ずかしさの極みにあるミロクは、ついに出家を宣言する。
ミロク:
(拳を握りしめ)
「笑うでない!!そなたらも散々、わらわを妊婦扱いしておったではないか!!どれだけ恥ずかしい思いをしたか、わかっておるのか!?も、もうわらわ、宇佐美家の一員をやめて出家するぞ!!」
瑠美:
(冷静に肩を叩きながら)
「ごめんごめん。でも、ポチちゃんの妊娠がわかったんだから結果オーライじゃない?ほら、赤ちゃんが産まれたらみんなでお祝いできるでしょ?」
ララ:
(無邪気に)
「そうだよ!ポチちゃんの赤ちゃん、絶対可愛いよね~!あと、ミロクちゃんも母乳を活用しながら頑張ろうよ!」
ミロク:
(頭を抱えながら)
「やめい!!……もう、二度とこの病院には来ぬ!!そなたらも出て行くぞ!!」
勢いよくドアを開けて出ていくミロク。その後ろで瑠美とララは再び大笑いしながら後に続いた。
帰宅とさやりんの出迎え
宇佐美家に帰り着いたミロクは、怒り狂った表情で玄関のドアを開け放った。
ミロク:
「全くもって、信じられぬ!あのような無礼を受けるなど……!」
その声に驚いて顔を上げたのは、宇佐美家のメイド、さやりんだった。彼女はびくっと肩を震わせるが、すぐに明るい笑顔でミロクを迎える。
さやりん:
「おかえりなさいませ!ミロク様!今日も大変な一日だったみたいですね~!」
(満面の笑顔で軽やかにミロクのコートを受け取ろうとする)
ミロク:
(さやりんを睨みつつも、疲れ切った様子でコートを脱ぎ渡す)
「……お主に話しても信じてもらえぬかもしれぬが……本当に、波乱万丈であった……」
さやりん:
(興味津々に微笑みながら)
「それはそれは!ぜひ詳しくお聞かせくださいませ!」
ミロクは深いため息をつき、肩を落とした。
ミロク:
「……いや、やはり忘れるのが最善じゃな。」
その言葉に瑠美とララは顔を見合わせ、再び笑い出す。
「さやりんのドジ炸裂!ミロクの怒りと笑いの夜」
帰宅の怒声とさやりんの出迎え
玄関のドアが勢いよく開き、ミロクが怒りに震えた表情で入ってきた。
ミロク:
「全くもって信じられぬ!今日はわらわの人生最大の屈辱の日じゃ!」
その声を聞きつけたさやりんが軽快な足取りで駆け寄る。満面の笑顔を浮かべて出迎えた。
さやりん:
「おかえりなさいませ、ミロク様!今日もお疲れ様でした~!」
(手を差し出しながら)
「コート、お預かりしますね!」
ミロク:
(怒りのあまりコートを乱暴に脱ぎ捨て)
「大変どころの騒ぎではないわ!動物病院で妊娠を告げられ、さらにはわらわが母乳体質であることまで知られるという、これ以上ないほどの恥辱を味わったのじゃ!」
さやりん:
(一瞬固まり、困惑の色を浮かべるも、すぐにいつもの笑顔に戻る)
「えっ!?母乳に妊娠!?すごいですミロク様!やっぱり普通の人間じゃないんですね!さすがです!」
ミロク:
(顔を真っ赤にして怒鳴り返す)
「褒めるところではないわ!そなた、わらわを馬鹿にしておるのか!?」
さやりん:
(首を傾げ、真剣な顔で考え込む)
「いえいえ、全然そんなことないですよ~!ドラゴンの私でもそんな経験ないですし、すごいなって思ってるだけです!」
ミロクは怒りの火に油を注がれたような気持ちで拳を震わせるが、さやりんの無邪気な態度に呆れるしかなかった。
ドジっ子炸裂!ミロクの怒りがどこかへ
さやりん:
「でもミロク様って、怒ってるときもなんだか可愛いですよね!ほら、ちょっとお茶でも飲んで、気持ちを落ち着けましょう!」
(にっこりと笑い、台所に向かう)
ミロク:
(深いため息をつきながらソファにどさっと腰を下ろす)
「……わらわがどれだけ怒っておるか、そなたには理解できぬのじゃろうな。だが……もう良い。茶を頼む。」
さやりん:
「はいっ!お任せください!」
そう言うや否や、さやりんは台所に駆け込んだ。しかし、次の瞬間――
ガシャーン!!
何かを盛大に落とす音が響き渡る。
ララ:
(苦笑しながら)
「出た、さやりんの本領発揮。」
瑠美:
(肩をすくめながら小声で)
「まあ、あれがさやりんの癒しパワーの源よ。ミロクちゃんが怒り続けられないのも分かるわ。」
台所から聞こえる物音に、怒りのはずのミロクも思わず肩を落とす。
ミロク:
「……わらわは、どうしてこの家に来てしまったのか……」
やがて、さやりんがお茶を片手に戻ってきた。
さやりん:
(にこにこと笑顔で)
「お待たせしました~!さやりん特製、心が落ち着くお茶です!」
ミロクは無言で湯呑を受け取り、一口飲む。
落ち着きを取り戻すミロク
お茶を飲むうちに、ミロクの怒りは少しずつ収まっていく。湯呑を置き、目を閉じて深呼吸する。
ミロク:
「……確かに悪くない味じゃな。」
さやりん:
(自信満々で)
「でしょ!さやりんの特製ですから!」
その直後――
ガチャン!
台所から再び何かを落とす音が響いた。
ララ:
(手を叩いて笑い出す)
「さやりん、ほんとに大丈夫!?もう、これ以上壊さないでよ!」
瑠美:
(クスクス笑いながら)
「やっぱりさやりんってすごいわね。何やっても怒る気が失せるもの。」
ミロク:
(疲れ切った表情で頭を抱えながら)
「……もう、何でも良いから静かにしてくれぬか……」
ミロクの疲労困憊の顔を横目に、リビングには笑い声が響き続ける。さやりんは台所から顔を出し、申し訳なさそうに手を振った。
さやりん:
「ごめんなさい~!でも、今度は本当に大丈夫ですから!」
ミロクはため息をつきながら、静かにソファに沈み込む。
ミロクがさやりんをじっと見つめると?
ミロク:
「……そなた、何故そんなにも楽しげに生きておるのじゃ?」
さやりんは、照れくさそうに答えます。
さやりん:
「えへへ、だって落ち込んでる時間がもったいないじゃないですか!笑ってたほうが、お茶も美味しくなるし!」
ミロク:
「ふむ……そなたのその前向きさ、少し見習うべきかもしれぬのう。しかし、なぜじゃ?わらわなら…いや、迷える子羊たちは落ち込みそうなのだが?」
さやりん:
「実は、私も昔は結構くよくよしてたんですよ~。ドラゴンの世界でも、どんくさいってよく言われてて、特に飛ぶのが下手で……仲間たちにからかわれることも多かったんです。」
ミロク:
「そなたが、か……?意外じゃな。」
さやりん:
「えへへ、そうなんですよ~。でもね、一度失敗しすぎて岩山に激突しちゃったとき、空を見上げて思ったんです。『これ以上落ちることはないし、だったら上を目指そう!』って!」
ミロク:
「……岩山に激突とは……そなた、ただ者ではないのう。」
さやりん:
「そうなんです!それからは、どんなに失敗しても『これくらいじゃ死なない!』って思えるようになっちゃって。気づいたら、何事も前向きに考えられるようになってました!」
ミロク:
「ふむ、なるほど……そなたのその切り替えの速さ、確かにただ者ではないわ。」
さやりん:
「ありがとうございます!失敗しても笑ってれば何とかなりますし、何より、こうやってミロク様みたいな素敵な人たちに出会えたのも、前向きでいられたからだと思うんです!」
ミロク:
「……そうか。そなたのような者がいるから、わらわも気持ちを新たにできるのじゃな。さやりん、見事な心構えよ。」
さやりん:
「でも、ミロクちゃんなら話してもいいです。実は……私、こんなに前向きに見えるけど、昔は本当にひどい目に遭ってたんです。」
ミロク:
「……そなたが?そのような苦労をしておったとは思えぬが……何があったのじゃ?」
さやりん:
「私、ドラゴンの家族の中では“失敗ばっかりする子”って見られてて、ずっと愛されてない感じだったんです。それでも家族だからって、頑張って認めてもらおうと必死に努力してたんですけど……」
さやりんは少し俯き、握りしめた手が震えているのをミロクは気づく。
さやりん:
「ある日、とうとう両親にこう言われたんです。“役立たずのままなら、お前を消すしかない”って。」
ミロク:
「なっ……!両親が!?信じられぬ!どうしてそんなことが……!」
さやりん:
「そうですよね……でも、本当にそうだったんです。命を狙われて、山を駆け下りて必死に逃げて、何日も食べ物もなくて、ボロボロの状態で倒れちゃって……そのままだったら、たぶん、死んでたと思います。」
ミロク:
「……さやりん……」
さやりん:
「でもね、そのとき瑠美様が通りかかって、助けてくれたんです。優しい笑顔で、“ここで死ぬのはもったいないわ”って言いながら……本当に天使みたいに見えました。」
ミロク:
「瑠美殿が……なるほど、そなたがこの家に仕えておる理由が、今わかった気がする。」
さやりん:
「はい!瑠美様には命の恩人ってだけじゃなくて、生きる希望まで与えてもらいました。だから、どんなに失敗しても瑠美様を笑わせて元気にしたいって、ずっと思ってるんです!」
さやりんは涙を浮かべつつも、笑顔でミロクを見つめる。
さやりん:
「それに、今こうやってミロク様やララ様にも出会えて、すごく幸せです。だから、どんな過去があっても、今を楽しく生きていきたいんです!」
ミロク:
(しばらく黙り込み、やがて真剣な表情で)
「……そなた、わらわがこれまで出会った中でも、とびきりの強者じゃな。過去の悲しみに負けず、こうして笑っておるそなたを、わらわは心から尊敬するぞ。」
さやりん:
「えへへ、ありがとうございます!でも、こうして認めてくれる人たちがいるからこそ、前向きでいられるんですよ!」
ミロクは何かを考えるようにしばらく沈黙してから、静かに微笑む。
ミロク:
「そなたの話、胸に刻むぞ。わらわも、そなたを見習わねばならぬな。」
ミロクはふと、さやりんの明るい笑顔と、自分の中で渦巻いていた悩みの対比に気づく。彼女の話が心に響き、胸の中で何かがほどけるような感覚を覚えた。
ミロク:
「……わらわ、気づいたぞ。」
さやりん:
「えっ、何にですか?」
ミロクは真剣な表情でさやりんを見つめながら、静かに続けた。
ミロク:
「母乳が出たことや、礼子殿の体ゆえの異変など……それらは、ささいなことにすぎぬのじゃ。そなたの話を聞いて、わらわはようやく理解した。過去に何があろうと、前向きに生きることこそが、真の強さなのじゃな。」
さやりんは目を丸くしてミロクを見つめ、次第に柔らかな笑顔を浮かべる。
さやりん:
「ミロク様、そう思えたならきっと、どんなことも乗り越えられますよ!それに、母乳が出るなんて普通の人にはできないことですし、むしろ特技じゃないですか!」
ミロク:
(苦笑しながら)
「そなた、本当に悪気なくそう言うから恐ろしい……だが、感謝するぞ。そなたのおかげで、わらわの悩みなど取るに足らぬものだと思えた。」
ミロクは深く息を吸い込み、肩の力を抜いて静かに微笑む。
ミロク:
「さやりん、これからもその前向きさで、わらわを導いてくれるか?」
さやりん:
「もちろんです!任せてください、ミロク様!」
さやりんの無邪気な笑顔を見て、ミロクはふっと笑みをこぼした。その姿を見守る瑠美とララも、どこか安心したように目を細める。
さやりんが少し照れくさそうに笑いながら、真剣とも冗談ともつかない口調で話し出した。
さやりん:
「ミロクちゃん、大丈夫です!ミロクちゃんが妊娠しようが、悪魔だろうが、ドジっ子だろうが……。私、ミロクちゃんのこと、大好きですよ♡」
ミロクはその言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべる。
ミロク:
「な、なにを言っておるのじゃ!?」
さやりんは、さらに追い打ちをかけるように微笑みながら続けた。
さやりん:
「だって昨日も、一緒にお風呂で背中を流し合った仲じゃないですか♡ミロクちゃんのお肌、ほんっとうにスベスベで、なんだかずるいです!」
ミロクの顔がみるみるうちに赤くなる。
ミロク:
「そ、それは……そなたが突然『一緒に入ろう!』などと言い出すから……!」
さやりんは冗談めかして手を頬に当てながら、わざとらしくため息をついた。
さやりん:
「ミロクちゃんってスタイルもいいし、本当に美人さんですよね。私、男の子だったら絶対お嫁さんにしたいくらいです♡」
ミロク:
「なっ……!?よ、嫁など……そ、そんなことを軽々しく言うでない!!」
さやりんは首をかしげ、ぽつりと呟くように言葉を続けた。
さやりん:
「なんで、私……女の子なんだろう?もし男の子だったら、もっと堂々とミロクちゃんを守ってあげられるのに……。」
ミロクはその言葉に、一瞬だけ目を見開いた。さやりんの無邪気な笑顔の奥に、どこか本気の気持ちを感じ取ったのだ。
ミロク:
「……そ、そなた……!」
ミロクは戸惑いながらも、少しだけ息をついて笑みをこぼした。
ミロク:
「まったく……そなたという者は、いつも突拍子もないことを言いおる。だが……その気持ちだけは受け取っておくぞ。」
さやりんは満面の笑みで頷いた。
さやりん:
「はい!いつでも私、ミロクちゃんの味方ですからね!」
その無邪気な言葉に、ミロクは少しだけ肩の力を抜き、さやりんの強烈な前向きさに救われた気持ちになるのだった。
さやりんは、場の空気が一瞬しんみりしたのを察したのか、パッと表情を明るくして声を上げた。
さやりん:
「あっ、お茶なくなりましたね!ミロクちゃん、ちょっと待っててください!新しいの、今すぐ入れますね!」
そう言うや否や、彼女は急いで台所に向かい、バタバタと音を立て始めた。
ミロク:
「いや、そなた……落ち着いて動かぬか!また何かやらかすのではないか……?」
案の定、奥の台所から「ガチャン!」という音が響いた。
さやりん:
「きゃー!大丈夫です!全然大丈夫ですよ!」
ミロク:
「大丈夫そうには聞こえぬぞ……!」
ミロクは呆れたようにため息をつき、遠くから何やら聞こえる「熱っつ!」だの「コップが逃げました!」だのという謎の声に耳を傾ける。
しばらくして、さやりんが満面の笑みで湯呑を両手に持ちながら戻ってきた。
さやりん:
「お待たせしました~!ミロクちゃん特製、さやりんブレンドお茶です!気合い入れてお作りしましたよ!」
ミロク:
「特製というのが恐ろしいのじゃが……何か変なものを入れておらぬであろうな?」
さやりんは目を丸くし、首を振った。
さやりん:
「そんなことないですよ!ただ、さっきちょっと茶葉を多く入れすぎた気がして、お湯を足してみたんですけど、そしたらなんだか濃くなっちゃって……でも大丈夫です!美味しいはずです!」
ミロク:
「それは……本当に大丈夫なのか?」
恐る恐る湯呑を口に運ぶミロクだったが、意外にも味は悪くなかった。
ミロク:
「……ふむ、思ったほど悪くない。むしろ、落ち着く味ではないか。」
さやりん:
「やったー!ミロクちゃんに褒められちゃった!さやりん、これでまた一歩、お茶マスターに近づきました!」
ミロク:
「そなたのこの前向きさだけは、見習いたいものじゃ……。」
二人のやりとりを少し離れた場所で見ていた瑠美とララは、微笑ましそうに顔を見合わせた。
ララ:
「さやりんってほんと、いつもいいタイミングで場を明るくしてくれるよね。」
瑠美:
「そうね。でも、あのドジっぷりでいろいろ帳消しにしてるところが、また面白いのよ。」
リビングには笑いと安らぎが漂う。実はそこに「母乳事件」の真実が隠されてる?とは知らずに…
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