第24話 ミロクの母乳事件、ミロクの衝撃と混乱
朝、柔らかな日差しが部屋に差し込む中、ミロクはいつもより早く目を覚ました。寝ぼけ眼で体を起こし、ふと胸元の違和感に気付く。ブラが湿っているのだ。
「む……?何事じゃ?」
昨夜の暑さで汗をかいたのか、もしくは何かの涙がついたのか――そんなことを考えながら、ミロクは指で湿り気を確かめた。そして、その指を舐めてみる。
「……甘い?」
その瞬間、頭が一気に冴え渡る。ミロクの顔は真っ赤になり、混乱のあまり声を上げた。
「ま、まさか……これが母乳というやつなのか!?」
胸元を両手で押さえ、ミロクはベッドから跳ね起きた。そして、早足で部屋を飛び出し、リビングへと向かう。
ララとのやり取り
リビングでは、ララがヨガマットの上でストレッチをしていた。伸びやかな動きをしている彼女の元に、ミロクは乱入するように現れる。
「ララよ、そなた……何かしたであろう!?」
驚いたララが振り向くと、ミロクの顔は怒りと混乱で引きつっている。
「えっ、何のこと?」
「昨夜のことじゃ! わらわの胸が……その、何かおかしいのじゃ!」
ララは首を傾げながら思い出すように目を細めた。
「ああ、ミロクちゃんが私の枕になってくれたおかげで、ぐっすり眠れたよ! ありがとう!」
その無邪気な言葉に、ミロクは顔をさらに赤くする。
「いや、そなた……その後に何かしたのではないか!? 胸を揉むとか、奇妙なことを!」
「えっ?」
ララは一瞬動きを止めた。そして、思い出したように言った。
「あっ、そういえば寝言で『ママのお胸柔らかい』って言ってたかも!」
「なっ……!」
ミロクは両手で頭を抱え、信じられないという表情を浮かべた。
「そ、それが何かではない! わらわの胸から母乳が出ておるのじゃ! そなたのせいでな!」
ララの目が輝く。
「すごいじゃん! それって赤ちゃんを産めるお母さんだけが持つ秘密だよね? 尊い……!」
「尊くないわ!」
ミロクの叫び声がリビングに響き渡るが、ララの無邪気なリアクションに、彼女は頭を抱えるしかなかった。
瑠美とのやり取り
混乱したミロクは、頼れる存在である瑠美の部屋へと向かう。ララの姉である彼女なら、この奇妙な状況をどうにかしてくれるかもしれない――そう考えたのだ。
「瑠美よ! 非常事態じゃ!」
瑠美は机に向かい、静かにお茶を啜っていた。その声に振り向くと、ミロクの必死な顔に気付き、カップを置く。
「何があったの?」
「わらわの胸から……母乳が出ておる! これをどうにかしてくれ!」
一瞬、瑠美の眉がピクリと動く。そして、軽く咳払いをしながら言った。
「それ、普通じゃないわね。もしかして、妖怪の体質とか関係してるんじゃない?」
ミロクは目を見開いた。
「そ、そうなのか? わらわも妖怪の末裔ゆえ、人間とは異なるところがあるかもしれぬが……」
瑠美は考え込むように顎に手を当てた。
「まあ、医者に診てもらうのが一番じゃない?」
その提案に、ミロクは顔を真っ赤にして首を振る。
「そんなことできるわけなかろう! 医者に話すなど恥ずかしすぎる!」
瑠美は肩をすくめながら、さらりと言った。
「じゃあ、ララにもう一回揉んでもらって原因を探るしかないわね」
「冗談を言うでない!」
ララのパニック反応
そのやり取りの途中、ララがリビングから顔を出した。
「えっ!? ミロクちゃん、男の子なの!? 妊娠!? 何それ!?」
ララは椅子に座るなり、ミロクの肩を掴む。
「本当なの!? 誰の子なの!?」
「落ち着け!」
ミロクは両手を振り回しながら必死に否定する。
瑠美はその光景を静かに見つめ、冷静な声で一言。
「ミロクちゃん、魂が男でも体が女性なら、妊娠してもおかしくないんじゃない?」
「そういう問題ではない!」
昨日の出来事を振り返る
昨日のお風呂の時間が、ミロクの脳裏に蘇る。
湯船でリラックスしていたミロクに、ララが水をはねかけて遊んでいた。
「ミロクちゃん、なんでそんなに肌キレイなの?」
「放っておけ! わらわはこの風呂を神聖に保ちたいのじゃ!」
そのやり取りを思い出しながら、ミロクはさらに顔を赤らめた。
結論と提案
再び混乱が渦巻く中、瑠美が締めくくるように言った。
「まあ、いろいろ言ったけど、結局病院が一番よね」
ミロクは再び首を振る。
「それは嫌じゃ!」
ララが手を挙げた。
「じゃあ、私がミロクちゃんの謎を解明する!」
「やめろ! これ以上騒ぎを大きくするでない!」
ラスト
その騒ぎの中、家政婦の赤城彩華が静かにリビングへ入ってきた。彼女はお茶を置きながら微笑む。
「皆さん、朝からお元気ですね」
彩華の穏やかな声に、一瞬リビングは静寂に包まれる。
最後にミロクはため息をつきながら言った。
「まったく、そなたらには敵わぬ……」
だが、その表情には不思議な安堵感が漂っていた――。
宇佐美家の一日は、今日も騒々しく始まる。
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