第22話 「腹黒、宇佐美瑠美の企み」JKプロジェクトの真実!?

朝日が差し込むリビングで、ミロクはコタツに座っていた。


「ミロクちゃん、よく眠れた?」

ミロクは軽く頷くも、寝る前に見た元気はない。


「ミロクちゃん、まだ眠たいのかな?」

「もう少し寝てもまだ大丈夫なんだけど…」

とミロクににどねをうながそうとすると、顔を洗い、身なりを整え始めた。


銀髪の髪をポニーテールにまとめると、端正な顔をほんの少し曇らせている。隣にいる宇佐美ララはミロクの手を握り、心配そうに声をかけた。


「ミロクちゃん、大丈夫?なんだか元気がないみたいだけど……」


ミロクは少しの間黙っていたが、ため息とともに口を開いた。

「わらわは元気でないわけではない。ただ、瑠美殿がわらわとそなたの秘密を知っていたことに、いささか困惑しておるのじゃ。」


ララは首を傾げた。

「え?別に秘密なんか話してないけど……あ、もしかして昨夜の“作曲”の話?」


その言葉を聞いたミロクの眉がピクリと動いた。

「そうじゃ!昨夜のわらわの“音楽を作りたい”という決意、そなたとわらわしか知らぬはずではなかったのか……」


ララは困惑しながら笑顔を見せた。

「でも、瑠美姉はなんでも知ってるからなぁ。もしかしたら、私たちの会話を偶然聞いちゃったとか?」


ミロクは椅子に深く座り直し、両手を膝に置いて考え込んだ。

「しかし、そなたの家は壁が厚く、防音性能も優れておるはず。まるで忍者のように、そっと忍び寄らねば聞き取れぬものではないか?」


ララが「忍者」という言葉に苦笑すると、ちょうどタイミングよく、瑠美がリビングに現れた。


瑠美の突然の参戦


「おはよう、ミロクちゃん、ララ。」


瑠美は朝から余裕のある笑顔を浮かべ、紅茶のカップを手に持っていた。彼女の優雅な雰囲気とは裏腹に、ミロクの目には何かしら「得体の知れない策謀」が隠れているように映った。


ミロクは瑠美を真っ直ぐ見据えると、言葉を選びながら尋ねた。

「瑠美殿、そなたに尋ねたいことがある。昨夜のわらわの作曲の話、どこで知ったのじゃ?」


瑠美は紅茶を飲みながら、まるで何でもないことのように答えた。

「ああ、その話?ミロクちゃんとララが話してたの、偶然聞こえちゃったの。」


ミロクは思わず前のめりになり、真剣な顔で詰め寄った。

「偶然……?だが、この家の壁は厚いとララ殿も言っておったぞ?」


ララが「あっ」と小さく声を漏らしたが、瑠美は特に動じる様子もなく微笑を浮かべたままだ。

「うーん、耳が良いのよ、私。聞こうと思えば何でも聞こえちゃうの。」


ミロクはその言葉に目を丸くした。

「そんなことが可能なのか……?まるで忍びの者ではないか。」


瑠美は少しだけ眉を上げ、口元に悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「それは秘密。さて、そろそろ本題に入らない?」


ミロクは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに体を引き、姿勢を正した。

「本題……というのは?」


瑠美はカップをテーブルに置き、まっすぐにミロクを見つめた。

「『JKプロジェクト』のことよ。」


瑠美の野望とミロクの戸惑い


「JKプロジェクト?」


再び話題に上ったこの言葉に、ミロクは思わず首を傾げた。ララが横でニヤリと笑う。


「ねえ、ミロクちゃん。結局その話、どうするの?瑠美姉が言うには、ミロクちゃんには完璧な企画らしいけど。」


「うむ……。わらわは仏としての品格を損ねぬか、そればかりが懸念されるのじゃ。」


ミロクが眉をひそめると、瑠美は紅茶を飲みながら悠然と答えた。

「品格を守ることは大切よ。でもね、今の時代、フォロワーを増やすには“親しみやすさ”が欠かせないの。」


「親しみやすさ、か……」


ミロクが考え込むと、瑠美はさらに説得を続けた。

「ミロクちゃん、あなたは“リアルで身近な仏様”を目指すべきなのよ。ファンの間ではすでに“JK仏”なんて愛称がついてるんだから。」


「JK仏……む、確かに親しみやすさはあるかもしれぬ。しかし、真の仏としての使命を忘れてはならぬのではないか?」


ミロクが真剣に悩む横で、ララが笑いをこらえきれずに言った。

「もう、ミロクちゃん。普段から制服着てるし、その路線はすでに完成してるよ?」


「むぅ……」


さらに悩むミロクを見て、瑠美は最後の一押しを加える。

「こうしましょう。ミロクちゃんが得意な作曲を使って、“仏様が歌う音楽”ってテーマで発信するの。これなら品格を損ねることもないし、新しい魅力が伝わると思うわ。」


その言葉にミロクの目が大きく見開かれた。

「作曲を……?」


ララが横から嬉しそうに言う。

「いいじゃん、ミロクちゃん!私、めっちゃ応援するから!」


ミロクの決意


しばらくの沈黙の後、ミロクは立ち上がり、両手を腰に当てた。そして、胸を張って大きな声で宣言した。


「よし、わらわは決めたぞ!『JKプロジェクト』に乗り出し、音楽で新たなフォロワーと絆を結ぶ旅に出るのじゃ!」


その言葉に、瑠美とララは大きな拍手を送る。


「さすがミロクちゃん!それじゃあ、さっそく準備を始めよう!」


こうして、ミロクの「JKプロジェクト」は新たな一歩を踏み出した。だが、彼女の知らないところで瑠美の「腹黒企み」はさらに続いている――。

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