第19話 新たな道とミロクの旅立ち
文化祭翌日:暴風の朝
文化祭翌日、樹奈はいつものようにサバイバルゲーム場のバイトに向かった。
だが、その施設には予想外の光景が広がっていた。
駐車場は車で埋まり、入り口には長蛇の列。迷彩服の常連客ではなく、若者やカメラを持った中年男性、さらには家族連れまでいる。
「え、何これ……?」
施設内に入ると、受付付近には興奮気味の人々がひしめいていた。ざわめきの中から「黒猫さん、来てるかな?」という声が聞こえる。
「まさか……」
そんな不安が的中するのは時間の問題だった。
予想外の反響
樹奈が姿を見せた瞬間、誰かが声を上げた。
「あっ!黒猫さんだ!」
その声で全員が振り向き、一斉に彼女に注目する。
「写真撮ってください!」
「ポスターのモデルですよね!」
「SNSで見ました!カッコよかったです!」
押し寄せる人波と熱狂に、樹奈は瞬時に青ざめた。
「無理、無理無理無理!!」
耐え切れず、受付奥の店長室に駆け込むと、ドアを閉めたままその場にへたり込む。
店長の悪行発覚
「辞めます!いますぐ辞めさせてください!」
店長室のドアを勢いよく開け放ち、樹奈はストレートに辞職を宣言した。
机に座る店長は、突然の申し出に驚き、顔を歪めた。
「おいおい、なんだよ急に!?」
「もう限界です!文化祭のポスターが拡散されて、知らない人たちに囲まれてるんですよ!こんな注目されるの、耐えられません!」
店長は「まあまあ」と手をひらひらさせながら、適当な笑みを浮かべる。
「でもさぁ……お前みたいな可愛い子がいると、客が来るじゃん?ありがたい存在だよ~」
その言葉に、樹奈はピクリと反応し、目を細める。
「……さっきから視線が下なんですけど、何見てるんですか?」
「いや、胸が……いやいや!お前が店にとって大事な存在だって言ってるんだよ!」
店長の視線は明らかに不躾で、言い訳も薄っぺらい。それに加え、机の上に置かれた一枚の写真が決定的な一撃を加えた。
「これ……私が更衣室で着替えてる時の写真じゃん!!」
さらなる悪行の証拠
店長は手を振りながら慌てて弁解を始める。
「いやいや、これ違うって!偶然だよ!たまたま写っちゃっただけで――」
「偶然でこんなの撮れるわけないでしょ!!」
怒りで拳を握る樹奈。その瞬間、机の引き出しが開き、中から複数の封筒が飛び出した。その封筒を目にした樹奈は、何かを確信する。
「これ、店の売上から抜いた金じゃん……しかも、風俗の領収書付き!?」
店長はさらに顔を青ざめさせる。
「い、いや、それは接待で……!」
「接待で風俗行くかよ!」
封筒の中には、他にも驚くべき証拠が詰まっていた。店の女性スタッフが訴える形で残した手書きのメモには、店長のセクハラの詳細が綴られている。
「女性部下の弱みにつけこんで……こんなことしてたの!?しかも、孕まされた主婦が離婚したって書いてあるじゃん!!」
樹奈は耐えられず、机を思いっきり叩きつけた。
「もう限界!あんたなんか店長の資格ない!」
部長の登場:爽快な逆転劇
その時、ドアが静かにノックされる音が響いた。現れたのは、スーツ姿の女性部長だった。冷静な表情のまま、店長と樹奈を交互に見た後、乱れた部屋の様子を一瞥する。
「やっぱり……問題があるとは思ってたけど、ここまでひどいとはね」
部長は机の上の証拠を手に取り、風俗の領収書やセクハラ被害のメモを一枚ずつ確認する。
「これは明らかな規約違反。店長、あなたは今日をもって解雇です」
「え、いや、待ってください!それは――」
「文句があるなら弁護士にどうぞ。それから、本社に来て経緯をすべて説明してもらいます」
部長の冷静な一言に、店長は声も出せなくなり、その場を後にした。
新たな提案
店長が去った後、部長は微笑みを浮かべて樹奈に向き直った。
「ごめんなさいね、あんな人と一緒に働かせて。本当に大変だったでしょう?」
「もう、本当に最悪でした!こんなところ、辞めさせてください!」
「でも……これがあれば、もう少しやってみようと思うんじゃない?」
部長が取り出したのは、非売品のアニメTシャツだった。そのデザインを見た樹奈の目が輝く。
「それ……魔法少女シリーズの限定版!?」
「ええ、あなたが店を守るならプレゼントするわ」
「……やります」
完全に釣られる形で、樹奈は店長就任を承諾した。
隣のクラスの男の子
新店長として初日を迎えた樹奈のもとに、隣のクラスの男の子が訪れた。
「あの、黒猫さんですよね。文化祭のポスター、すごくかっこよかったです!」
文化祭の出来事を思い出し、頬を赤らめる樹奈。しかし、男の子の次の言葉に驚かされる。
「銀髪のお姉さん……ミロクさんを紹介してもらえませんか?」
事情を聞くと、男の子の両親がミロクの説法配信を見て以来、夫婦仲が改善されたという。
「ミロク様、そんなことしてたんだ……」
改めて彼女の影響力を感じた樹奈は、男の子と連絡先を交換し、家に帰った。
ミロクの旅立ち
家に戻ると、ミロクの部屋がもぬけの殻になっていた。机の上には一枚の書き置きが置かれている。
「探さないでください。旅に出ます」
PCを開くと、ミロクのSNSアカウントは削除され、説法配信の記録だけが残っていた。
「嘘でしょ……ミロク様、どこに行っちゃったの……」
書き置きを握りしめ、樹奈は静かに涙を流した。
新たな決意
翌朝、樹奈はミロクの説法記録を見返し、多くの人が救われている様子を目の当たりにする。
「ミロク様がいないなら……私がその役目をやらなきゃ!」
涙を拭き、拳を握りしめる樹奈。彼女は決意を新たにし、ミロクが戻る日まで全力で頑張ることを誓った。
次回予告
「ミロクの旅の真相が明らかに?樹奈の新たな挑戦の行方は――」
物語はさらに続く。
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