第7話 ミロクのSNS救済(中編)
フォロワーも順調に増え、「迷える子羊」たちに私の言葉が届いているという実感が少しずつ湧いてきた。今日も朝からSNSに新しいコメントが並び、私はそれを一つひとつ確認していた。そんなとき、すずが後ろから覗き込み、ため息をつきながらぼそりと言った。
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「ミロク様、フォロワーが増えたのはいいけど、なんか、どうも怪しかばい…」
「ふむ、怪しいとな?彼らは心の救済を求めておるのだぞ、すず。ここで迷える子羊たちを見捨てるわけにはいかぬのだ」
「いやいや、見てみぃ?この人、プロフィールが『黒魔術師』とか書いとるし…この人は…あれ?なんやら卑猥な画像ばっかり投稿しとるやん!」
「それもまた、迷える心の現れではないか?」
すずはジト目で私を見つめ、心配そうに首を振った。「ほんとにそれでええっちゃろうか…。ミロク様、あんたちょっとピュアすぎやしない?」
「菩薩たる者、清き心で世界を見つめるべきなのだ。彼らの迷いが闇に染まっているならば、私の光でその闇を照らさねばならん!」
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すずは半分あきれ顔で、「まぁ…ミロク様がそう言うなら、うちももう何も言わんけど…」と肩をすくめた。しかしその後、心配そうな顔で私をちらちらと見続けていた。
その日の午後、さらに不思議なメッセージが届いた。「ミロクちゃん、私の心の奥底を見てほしい」というものだ。私は「おお、これぞまさに救済の時!」と胸を張り、すずに報告することにした。
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「すずよ、ついに心の奥底を見てほしいと願う者が現れたぞ!これは菩薩としての務め、断る理由はない」
「ちょ、ちょっと待った!なんかそれ、すごい怪しか気がするけん!ミロク様、そんなに簡単に引き受けて大丈夫?」
「大丈夫だ。私は菩薩の力で、彼女の心をしっかりと見極めてみせよう」
すずは「ほんまにあんた、世間知らずすぎやろ…」と嘆きながらも、私が意気揚々とそのメッセージに返信するのを止められなかった。
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数日後、私はさらに多くのフォロワーを集めるため、「もっと多くの迷える子を救うにはどうしたらよいのだろうか」と思案するようになった。そんなとき、ふと「アカウントをリニューアルしよう」というアイデアが浮かび、早速行動に移した。
「すずよ、アカウントを新たに作り直すことで、さらに多くの迷える子たちに救いを届けられるのではないかと思うのだ」
「…新しいアカウント?いや、待って。それってリセットしてまた1からフォロワー集めんといかんのやない?」
「そうとも、しかし、より良き救済を目指すためには、必要な試練であろう!」
すずは呆れた顔で、「まぁ…ミロク様がやりたいなら、うちはもう何も言わんけどさ…気ぃつけてよ?また怪しいフォロワーばっかり集まるけんね…」と心配げに私を見つめた。
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新しいアカウントを作成した私は、より魅力的な自己紹介と「迷える心を救済します」とのスローガンを掲げた。さらには可愛らしい写真もいくつか投稿し、アカウントの再スタートを切った。
再びフォロワーが増え始めたものの、相変わらず怪しいコメントやリクエストが寄せられることに、私は少しだけ困惑し始めていた。
ある日、「ミロクちゃん、この写真…ちょっとセクシーに撮れない?」というコメントが来た。私は思わず首をかしげた。
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「すずよ、セクシーとは、救済にどう繋がるのだろうか?」
「…ミロク様、それは違う意味の救済やと思うけん、やめんね!」
「そうか、我が弟子の忠告には従うべきだな。すず、ありがたく思うぞ」
「ほんま、ミロク様のそのピュアさ、ある意味尊敬するばい…」と、すずは呆れながらもホッとした表情を浮かべていた。
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そんな中、あるアカウントから「パパ探してます」というメッセージが届いた。私はその言葉を見て心が熱くなった。「家族を探している…!これこそ、私が力を発揮すべき時である!」
「すずよ、ついに家族を求める迷える子羊が現れたぞ!これは放っておけぬ、今すぐ彼女を救済せねば」
「え、え?ちょ、ちょっと待って。パパ探してるって、それ本気で信じてるん?」
「もちろんだ。家族を求めることは、最も尊い願いの一つだ。すず、今こそ私は彼女の救いとなる!」
「いや…そういう話じゃなかろうもん…。ねぇミロク様、ほんとに大丈夫?変なことになったらいかんけん…」
「すず、心配せずともよい。この菩薩たるミロク、決して誤らぬ!」と宣言し、私はそのアカウントとやり取りを始めた。
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メッセージのやり取りを通じて、相手の「家族を探す」という願いを強く感じ取り、ついに相手から「直接会って話したい」との誘いが来た。
中編の締め
私が「対面での対話こそ心の救済」と確信し、会うことを決意したとき、すずは大きなため息をついて、力なく呟いた。
「もう…どこまでいっても止められんみたいやね。亜依姉ちゃんにバトンタッチしたいばい…」
そのとき、私の胸の奥に宿る「菩薩としての熱い思い」がさらに燃え上がり、心の中でこう決意した。「さあ、迷える子羊よ、会うときが来たぞ。すべての心を救ってみせよう!」
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