第5話菩薩様、パンツを握る!?

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ミロクちゃんが両手をかざし、まるで神通力でも発動するかのように目を閉じて力を込めた仕草を見せる。部屋の空気がピリッと張り詰めた感じになるけど、見た目には何も起こらへん。すずも、ご主人様も、うちも「ん?」と首をかしげて静止状態。


ほんまに、何も起こらんやん…。そう思ったその瞬間──。


樹奈の顔が急に真っ赤になり、涙がポロポロとこぼれ始めたんや!


「な、なんで…こんな…」と、樹奈は混乱したまま泣き出してる。みんな状況が飲み込めず沈黙してたけど、すずだけが目を輝かせて「おぉっ!?ミロク様、すごいやん!ほんまにやっつけたん?」と大興奮。


一方、ミロクちゃんも自分の力が効いたと思ったんか、困惑しつつも誇らしげに「これも…菩薩の力かもしれないな…」と呟いとる。ほんまにこの子、マジやと思っとるんやな…。


そのとき、ご主人様がミロクちゃんの手元に気づいてニヤリと笑いながら「さすが、百式観音様だね」と言うたんや。思わず目をやると──なんとミロクちゃんの手には白い布が握られてる。よく見たら、それ、どう見ても樹奈のパンツやん!


どうやら、ミロクちゃんの「百式観音」とかいう謎の力(?)で、誤って樹奈のパンツが引っこ抜かれてもうたらしい。えらいこっちゃ…。


「え、ちょ、ミロクちゃん!?なんでパンツ握りしめとんねん!あんたそれ、菩薩としてほんまにええんか?」


ミロクちゃんは自分の手元を見てやっと気づいたらしく、顔を真っ赤にして固まっとる。でも困惑しながらも、「これも…また修行の一環かもしれない…」と訳の分からんことを言い出した。ほんま、この子、どこまで不思議さんなんや。


しれっとパンツを握りしめたまま、「そういえば、風が強い日には、心もまた揺らぐのだな…」と妙に意味深なことを言いつつ、パンツをそっと元の場所に戻しよる。すずと私は顔を見合わせ、もう笑いをこらえきれず吹き出してもうたわ。


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その後、樹奈は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にしたまま部屋へ駆け込んでしまった。すずは「意外と鬼畜なミロク様!」と少し引いた顔でミロクちゃんを見つめとる。


ミロクちゃんは、自分が何をしてしまったのかよく分からんのか、少し微妙な表情を浮かべながら真剣につぶやいた。


「また一つ…人の心を救えた…のだろうか」


その姿がなんともおかしくて、ついご主人様と顔を見合わせてクスッと笑ってしまう。なんや、我が家に馴染みすぎてる気がしてきたわ。


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そして翌日、案の定、ミロクちゃんとすずは樹奈にこっぴどく怒られていた。樹奈は真剣な顔で「すず、あんたはいつも甘えすぎや!ミロクさんにばっか頼って、自分でできることは自分でやりなさい!」としっかりお説教してる。すずはシュンとしとるけど、心の中では「またミロク様に頼ろう」と思ってる顔や。


「ほんま、すず、反省してる顔してもすぐミロクちゃん使う気満々やんか…」


その時、樹奈の部屋からガサゴソと何かを探す音が聞こえてきた。どうやら、昨日のパンツがなくなっているのを思い出したんやろな。ミロクちゃんは気まずそうに目をそらしながら、すずに小声でぼそりと「菩薩の務めも、時には心に痛みを伴うものだ…」とまたもや意味深なことを言いよる。


「いやいや、パンツ関係なく、修行とか言わんでええから!」と私はツッコむけど、ミロクちゃんはさらに遠い目をして、何か悟ったような表情をしてるんよ。ほんま、なんて不思議な子やろか。


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次の週末、案の定すずはまたミロクちゃんに頼みごとを始める。


「ミロク様、今日もあのお菓子、買ってきてくれん?」


すっかりミロクちゃんを「お供えマシーン」みたいに扱っとるすずを横目に、ミロクちゃんも「我が弟子のためならば、喜んで行おう」と得意気や。


その姿を見ていた樹奈は、ため息混じりに「すず、またミロクさんに頼っとるやん。反省しとらんのか」とチクリと注意するけど、すずはしれっと「えへへ、ミロク様は特別やもん!」と全然気にしてへん。


それを聞いたミロクちゃんは、「特別な存在であるというのは…そう、星の導きに似た何かだな」とまたもや謎めいたことをつぶやく。


私はもう堪えきれず、笑いながら「ミロクちゃん、ほんま、何言うてるんか分からんで」とツッコむけど、本人は真顔で「星の声を聞くこともまた、菩薩の心得なのだ」と、相変わらずのマイペースぶりや。


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こうして、我が家の日常にすっかり馴染んだミロクちゃん。すずもミロクちゃんに頼りっぱなしで、家の中は今日も賑やかや。ほんま、うちの家にこの子が来てから、退屈する暇もなく、どんな日々になるんか分からんわ。

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