第3話菩薩様、引きずって帰ります! 〜「菩薩の威厳が…」〜
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夕暮れの商店街。ちらっと時計を見ると、あれもうこんな時間やん…!ご主人様が待ってるし、さっさと帰らなあかんのに、目の前のミロクちゃんは動こうとせえへん。夕陽の中で悠然とした顔してるけど、そんな場合ちゃうやろ? しゃあない、こっちで引きずって帰るしかないわ。
「ほな、自分で歩きいや?このまま引きずるんも、うちの体力持たんわ…」
そう言うても、ミロクちゃんはなんか納得いかん顔でこっちを見返してくる。
「いや…その…歩くのはちょっと不本意だ。菩薩として、地面を歩くのはどうも…うん、相応しくない気がする。」
はぁ?ほんま、何言うてんの、この子は。
「菩薩が地面踏むのがイヤって、なんやその適当な言い訳!ほんまにミロクちゃんなん?」
すると、ミロクちゃんがなぜか得意気な顔して言い返してくる。
「菩薩という存在は、己の清らかな魂を守るべく、歩みを慎重にするのだ…うん…そういうことだ。」
「はいはい、どうでもええわ。なら引きずらせてもらうで?」
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結局、渋々納得したみたいやけど、引きずられるたびに「痛いのだが?」とか「尊厳が…」なんてブツブツ文句言うてくる。ほな歩いたらええやん!って言うても、最後まで自分で歩こうとはせえへんかったわ。ほんまに手のかかる子やなぁ。
ようやく家にたどり着いて、ほっとしたのも束の間。玄関前でミロクちゃんがうとうとし始めとるやんか。まじでこの子、どんだけマイペースなん?
「おい、ミロクちゃん!家の前で寝るなや!どんだけマイペースなん?」
眠そうに目を細め、あくびをひとつしてミロクちゃんがつぶやく。
「ああ…眠気というものも、また修行の一環なのかもしれない…」
「なんやそれ。ほら、もう家入るで!」
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玄関を開けてリビングに入ると、ソファでくつろいどったご主人様が顔を上げてこっちを見た。
「おかえり、亜依。遅かったな。って、その子、誰だ?」
「ご主人様、ただいまー。ちょっと道で捨て仏拾ってもうてな。」
ご主人様が興味深そうにミロクちゃんをじっと見つめると、ミロクちゃんも真剣な顔でじーっと見返しとる。そして次の瞬間、放たれた一言がまさかすぎて、私もビクッとしてもうたわ。
「あなた…なんともお粗末な佇まいをしているな。これがこの家の主か?」
「ちょ、ミロクちゃん!それ、めっちゃ失礼やで!」
ご主人様は苦笑いしながら、「はは、いや、別に気にしないよ。君もなかなか変わった子だね。」なんて余裕の返事。むしろ面白そうにミロクちゃんを観察し始めて、ほんま、どっちもどっちやわ…。
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ようやく自分の部屋に戻ってほっとして着替えを始めたんやけど、ふと見ると、ミロクちゃんが顔を赤くしながらこっちを見つめとるやんか。可愛い小さな子供が困ってるみたいな顔してるのが、なんとも微笑ましいっちゅうか。
「そ、その…いきなり何をしているんだ?見せるつもりか?」
「何や照れてんねん。まさか礼子ちゃんかと思てたけど、ほんまにちゃうんやな?礼子やったらすぐに脱ぎ始めて、あられもない姿になるねん。」
「礼子?その者はどのような…え、脱ぐのか?」
「せや、酔うたらすぐ脱ぎ魔になるんよ。そして、そのまま…ね。」
ミロクちゃんは顔を真っ赤にして、視線をそらしながら小さくつぶやいた。
「そんな…私は、記憶にないが、清らかなる身のはずだ…」
この様子見てると、ほんまに礼子ちゃんやないんやなと、なんか妙に納得できたわ。まさかこんなふうに照れるなんて、ほんまに可愛い子やわ。
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「ほな、礼子ちゃんちゃうんやな。あんたも変わった子やけど、まぁ、それで安心や。」
その時、ご主人様が廊下から私に声をかけてきた。
「亜依、そのまま料理作ってくれるか?」
「あ、わかった、ご主人様!」
そのやりとりを見ていたミロクちゃんが、また困惑した顔でこっちを見とる。何が不思議なんか知らんけど、さっきから首かしげてばっかやん。
「…料理を、そのように頼まれて、なぜ亜依は喜んで受け入れるのだ?」
「それがうちの役割やし、ここに住まわせてもらってるからには当然やねん。」
ミロクちゃんはまるで異文化の儀式でも見とるみたいな顔して、じーっと私らのやり取りを見守ってる。そのまっすぐな眼差しに、思わずクスッと笑いそうになってもうたわ。
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猫耳メイドさん、仏様を拾う。 櫻絢音 @AyaneSakura
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