【#15】vsガーゴイル

「さて、どこから探しましょうか?」


 今、俺達はフワンちゃんに二人乗りしていて、周囲に広がる空を眺めながら散策していた。


 後ろに乗ったティーシャは、スマホに地図を表示しながら言う。


「とりあえず、黄金麦芽から獲りに行こっか? ここから上の方にある"空中庭園"って呼ばれてる場所にあるみたい!」


 :おぉ、空中庭園!

 :天空に浮かぶ城には、金色に輝く麦がたくさん生えてるそうな

 :まるで"ラビュタ"だな……


「了解です! とりあえず上を目指せばいいんですねー。──フワンちゃん、GO!!」


「ピィー!!」


 ドドド……と雲海に浮かぶ大地を駆けていくフワンちゃん。


「うわーー!! 気持ちいいーー!!」


 後ろで声を上げるティーシャ。


 それを微笑ましい気持ちで聞いていると、彼女は急にこんな事を言い出してきた。


「しかし、アレだね? こうやって二人で走ってると……"ドライブデート"してるみたいじゃない?」


「デッ……!?」


 おいおいおい!? 何言い出すんだ!?


 :まさかティーシャ……?

 :"匂わせ"ってヤツか!?

 :で、でも、酒クズちゃんとは会って日が浅いんじゃ……!?

 :↑しかし、急に燃え上がる恋もあるからな。それに、酒クズちゃんは元男だし


「ま、待ってくださいよ!? 全然そんなんじゃないですよ!? わたしはただ、ティーシャのファンってだけで……!! ──ティーシャも冗談って言ってくださいよ!?」


「えぇ〜? どうしよっかなぁ〜?」


 そんな風にくだらないやり取りをしていた、道中。


「「「ギャヒヒー!!」」」


「!? アヤカちゃん!! ガーゴイルだよ!!」


 俺達の前にモンスターの群れが現れた!! 


 紫色の岩肌の身体に、大きな翼を生やした悪魔だ。


「ピィーーー!?」

 

 慌てるフワンちゃんから降りて、俺達は応戦する事にした。


「「「「「ギャヒッ!! ギャヒッ!!」」」」」


 敵は五匹か。なかなか多いな。これはティーシャと協力しつつ倒す必要がありそうだ。


「まずはあたしからいくよ!! 詠唱キャスト──【ツイン・フレイム】!!」


 ティーシャの指先から放たれる二つの火球。威力の高い炎魔法だ。


「ギャヒッ!?」


 狙いは十分。ガーゴイルへと直撃した。だが──。


「ギャヒヒ……」


「!? 効いてない!?」


 :ティーシャの魔法でも!?

 :どうやら炎耐性があるっぽいな

 :結構強めのガーゴイルってことですか


 なるほど。モンスターも日々変化してるらしいからな。耐性を獲得していてもおかしくない。


「「「ギャヒヒーーー!!」」」


 その後、ガーゴイル達は素早く飛行して俺達の元へ突進してくる。


 :あっ!?

 :酒クズちゃんの方に来てる!?

 :ガーゴイルに斬撃は効かないって話だぞ!? どうするんだ!?


「どうするもこうするも……やってみるしかないですよ!!」


 そう言って、俺は日本酒をがぶ飲みした。迷ってるヒマはなかった。


 どちらにせよ……俺にはこの【酔剣】しかないのだから。


「どりゃっ!!」


「ギャへーーー!?!?」


 頭に一撃。横薙よこなぎにぶちかましてやった。


 そのままガーゴイルはパラパラと岩肌を砕きながら、黒い魔力となって消滅していった。


「ガギャ!?」「ギャギャッ!?」


 明らかに困惑したガーゴイル達。コメント欄にも動揺がはしる。


 :あ、あれ!?

 :なんか倒してるんですけど!?

 :どんな馬鹿力だよ!?


 ティーシャも唖然として聞いてくる。


「あ、アヤカちゃん!? ホントにすごいねーー!? 本来苦手な相手のはずなのに……!!」


 俺も正直予想外なんだが。まさかあの硬いガーゴイルを一撃でいけるとは。


 まだ自分でも【酔剣】のパワーアップ加減が分からなくてビックリするなぁ……。


「と、とにかく!! このままぶちのめしてやりましょう!! ティーシャ、私が引き付けている間に、高位魔法の準備を!!」


「う、うん!!」


 そのまま魔法の詠唱に入るティーシャ。彼女が強力な高位魔法を使うのには少し時間がかかる。


 俺はおかわりの一杯を飲んでから、意気揚々と叫んだ。


「さて、どこからでもかかってこぉーい!! モンスター共ー!!」


「「「「ギャヒヒーーー!!」」」」


 残る四匹のガーゴイルが襲ってくる。


 さすがに動きが素早く、すぐに全滅とはいかない。


「そりゃ!!」


「ギャーーー!?」


 しかし、そのうち1匹は隙を見て叩き落とした。残るは三匹。そして──。


「アヤカちゃん!! 魔法の準備完了したよ!!」


「!! 了解です!!」


 それを合図に、一気に距離を取る俺。そして──。


「我が手に宿らし重力よ。敵を撃ち落とせ──【エイル・グラマトン】!!」


「「「「グガガガッ!?」」」」


 ティーシャの両手から放たれる凄まじい重力場。それにより、素早く空を飛んでいたガーゴイル達が地面に伏していく。


 これなら──!!


「どりゃーーーーー!!!」


「「「「ガ……ギャ……!?」」」」


 倒れたガーゴイルを次々と撃破していく。さっきのでコイツらを倒せるのは実証済み。……無事に全滅させる事に成功した!


 やがて、ティーシャがこっちにハイタッチしてきた。


「アヤカちゃん!! やるぅ〜♪」


「ティーシャこそ!! 流石はSランク魔法使いです!!」


 :すげー……

 :どっちも強キャラすぎる!!

 :レベルが高いな……最近の冒険者は


 そうして無事モンスターを撃破し、俺達は再び空中庭園へ向けて進み出した。

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