【#14】空のダンジョン・五反田へ

 そして、きたるティーシャとの二度目のコラボ当日。


「みんな、おはティシャ~♪」


 :おはティシャ~ 

 :キタキター!!

 :しゃぁーー! 待ってたぜ!! この時を!!


 ティーシャが挨拶すると、一気にコメント欄が沸き上がる。一方、俺の方も……。


「お、おはクズ~……」


 :おはクズ~

 :よう、酒クズ

 :今日も朝から飲んでる?


 なんとも雑な対応!? 絶対舐められとる……!!


「ねぇー!? や、やっぱ恥ずかしいんですけど、この”おはクズ”って挨拶!?」


 :しかし、公正な視聴者アンケートで決まったものだからねぇ

 :そうそう。語感も良くて気に入ってるぞ、俺は


「むぅ~、それはそうなんですがぁ……」


 まぁ、そのうち慣れて行けばいいか……。それよりも──。


「しかし、ウワサに聞く絶景ですねぇ~♪ この”五反田ダンジョン”は」


 今、俺達がいる五反田ダンジョンは──別名『空の遺跡』とも言われるダンジョンだ。


 その名の通り、まるで空の上のように白い雲に囲まれた場所。


 雲の上に飛び石のように連なる大地。普通のダンジョンと違って、今回はこの浮遊した地面の上を移動することになる。


 昔からこういう高いところは苦手なんだが……お酒で気分をアゲて乗り切っていこうと思う!!


 さて、今回この五反田ダンジョンに来た目的といえば──。


「ところで、ティーシャ~? ここに酒の材料になるモノがあるんですか~?」


「うん♪ リサーチ済みだよ~」


 ティーシャはメイド服の中からメモを取り出し、そこに書いてあるモノを読み上げていく。

 

「まずは空中庭園に生えている金色麦芽こんじきばくが。それと、キラキラバチのハチミツ。そして、ワイバーンの尻尾を獲ろうと思いま~す」


「な、なんだかどれもレア度高そうですね……」


「まー、せっかくなら最高の素材で作りたいでしょ? これから振舞うリスナー達に満足してもらうためにも、あたし達が身体を張っていかなきゃだよ!!」


 :流石はティーシャやでぇ

 :お酒作りにも妥協しないな

 :がんばえ~


 ティーシャの言う通り、今回はリスナー達にも限定販売する流れになっている。これは俺も頑張らないと、だな!!


「そうですね。じゃあ、気合いをいれるためにも……最初にお酒飲ませてもらっていいですかね!?」


「どうぞ~♪」


 ティーシャの許しを得て、俺はウイスキーのフタを開けた。そして──。


「ぷはぁーーーーーーーーー!! 今日も酒が美味い~~~~~~~!!」


 :ナイス酒クズ!

 :相変わらず惚れ惚れする飲みっぷりだなぁ

 :朝から酒飲める羨ましさよ……


 こうして、五反田ダンジョンを攻略する事となった。

 

◇◆◇◆◇


 さて、今回はこの広大な空の上を移動するのに、ひとつ助けを借りようと思った。それが──。


「フワンちゃん!! かもーん!!」


「ピィ~~♪」


 ギガント・シマエナガこと、フワンちゃんである。


 仲間にした時も上に乗せてもらったが、今回は特に広い場所なので活躍が予想される。そういえば……。


「フワンちゃんって飛べるんだっけ?」


「ピィ!!」


 乗ってみろ、という感じで背中を示すフワンちゃん。なんだか自信ありげだな……。

 そこまで言うなら。その案内通り、俺はフワンちゃんの上に騎乗して言った。


「じゃあ、フワンちゃん!! 天空へ舞い上がれーーーー!!」


「ピィーーーーーーーーー!!」


 「ドドドドド……!!」と助走をつけて、地面を蹴っていくフワンちゃん。


 次の瞬間。バサッと巨大な扇型の翼を広げた!! そして──。


「おあぁーーーーーー!? 飛んでるぅーーーーーーーーーー!?」


 :すげーーーーーーー!?

 :これがギガント・シマエナガの飛行……!?

 :羽根もめっちゃ綺麗~~~~!!


 巨大なモフモフに掴まりながら空を舞う。


 アルコールで熱くなった身体に、サラサラと撫でてくる風が心地いい。なんだか摩訶不思議な冒険が始まりそうな景色だと思った。


 ティーシャはもうだいぶ小っちゃく見えていて、こちらを見上げながら可愛らしく手を振ってくる。


「すごいすごい~~!! アヤカちゃん!! もうあんな遠くにいる~~!!」


「ティーシャ~~!! 気持ちいいですよ~~、これ~~!!」


 俺もそっちへ軽く手を振り返した。楽しさのあまり、フワンちゃんにも話しかけていく。


「すごいよ!? フワンちゃん!!」 


「ぴ、ピィ~~~~」


「ん? なんだか元気ないな……って、うわぁ~~~~~~~~~!?」


 急に高度が落ちていくぞ!? おいおいおいおい!? やばいんじゃないか!? 


 ──って思っている間に、グングンと地面が迫ってきた。そして──。


「ぐへっ!?」「ピィ!!」


 ついに墜落してしまった!? いてて……フワンちゃんの中に埋もれちゃった……。


 やがて、駆けてきたティーシャが心配そうに言ってくる。


「大丈夫!? アヤカちゃん!?」


「へ、へーきです。しかし……」


 俺はフワンちゃんの方へ苦笑いしながら言った。


「フワンちゃん、スタミナはそんなにないみたいですね……」


「ぴ、ピィ~~……」


 どうやらずっと飛び続ける……というのは無理っぽいな。

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